2022年11月2日(水)、トリニティ・テクノロジー株式会社が
「家族信託・相続みらいサミット2022」を開催。
超高齢社会の課題を解決するために、士業とテクノロジーが果たす役割について、
全11セッションが行われました。
〔イベント概要〕
家族信託・相続みらいサミット2022
—超高齢社会の課題を人×テクノロジーの力で解決し「ずっと安心」の世界をつくる—
日時 11月2日(水)10:00~17:00
会場 JPタワー&カンファレンス(丸の内KITTE4階)
主催 トリニティ・テクノロジー株式会社
テクノロジーと人の融合で生み出される新時代のサービス
超高齢社会の課題を解決するために、
最新のテクノロジーを活用した新しいサービスを提供する企業が増えています。
その一方で、高齢者の悩みを解決するためには、IT・デジタルでできることには限界があり、
リアルな対話や専門的スキル、家族や地域社会の力も欠かせません。
「超高齢社会の課題を人×テクノロジーの力で解決し“ずっと安心”の世界をつくる」をテーマに、
『スマート家族信託』『スマホde相続』などのサービスを展開するトリニティ・テクノロジー株式会社は、
11月2日、「IT・デジタル」と「リアル・対面」の両軸からの最新情報を届ける場として、
「家族信託・相続みらいサミット2022」を開催しました。
高齢者の財産管理や財産承継に関わる専門家が、最新の知識や課題解決手法をセミナー、
パネルディスカッション形式で紹介したほか、
相続・事業継承分野の最前線で活躍する専門家が講演を行いました。
------------------
オープニングセミナーでは、トリニティ・テクノロジー株式会社 代表取締役の磨 和寛氏が、
「テクノロジーで変わる家族信託・相続の未来」をテーマに講演。
これからの超高齢社会に向けた士業のあり方などについて語りました。
私たちトリニティ・テクノロジーは、
「士業と一緒に世の中を変えていこう」ということをコンセプトとしています。
その一方で、今、世の中では「士業はそもそもと必要なのか?」
「これだけテクノジーが発展していたら、不要なのではないか?」という論調が出始めています。
その象徴的な出来事として、「グレーゾーン解消制度」を利用して、
士業的なサービスを提供する株式会社が増えているということが挙げられます。
2018年には、ある企業が、「司法書士の登記手続き、本店移転の登記手続きを、
株式会社でサービス提供できるか」という照会をかけました。
お客様が会社の情報をAIに入力すると、登記申請書が印刷できるというサービスです。
このサービスについて、法務省は「実施可能である」と回答しています。
今、こういったサービスが展開されているのです。
では、このような世の中に対して、私たち士業の役割は何なのでしょうか。
お客様が望んでいるのは、便利で、1番安心できて、1番安いサービスです。
士業かどうかは関係ありません。
私たちは、今までつくってきたある種の既得権に座り続けるのではなく、
「世の中はその先に進んでいるのかもしれない」という視点を持つことが必要なのです。
士業の業務は、大きく分けると、バックオフィスとコミュニケーションの2つです。
バックオフィス業務は、やればやるほどお客様とのコミュニケーションの機会が減るので、
効率化が必要です。テクノロジーでできることはテクノロジーに任せて、
人にしかできないことを人が担わなければいけません。
当たり前だと思われるかもしれませんが、「それを本気でやりましょう」ということなのです。
本気でシステム開発をして、本気で効率化して、本気で仕組み化していきませんかということです。
例えば、私たちのサービスに、家族信託の契約書をつくるシステムがあります。
このシステムでは、登記情報を読み込むのに、10秒もかかりません。
不動産の登記情報を取って、そこから物件情報を起こして、チェックにかけて…と、
通常1時間くらいかかる業務が、このシステムを使えば、5分ほどで終わります。
つまり、残りの55分をクリエイティブなことに使えるのです。
こういったシステムを活用すれば、
一つの手続きでいくら、一つの書類でいくらという業務ではなく、
財産額などの何パーセントでフィーをいただきながら、
お客様の課題を一緒に解決していくという仕事のあり方が可能になります。
私たちが、仕事の中身を変えなければいけないのです。
財産承継の領域で、大きなトレンドとなるのは、家族信託です。
上記のグラフは、土地の信託の登記件数ですが、前年対比で57%増。
このままいけば2022年は2万件を超えると考えられます。
これは、ようやく世の中に家族信託が浸透してきたことの表れだと思います。
信託はご承知の通り、信託の組成をして、専門家がサポートをして、
信託期間中の財産管理をしていく。その後、相続につながります。
そこで課題になるのが、信託側の財産管理をどうするかということです。
今、相続のトラブルが各地でくすぶっています。
相続が発生したときに、家族がお金を使ってしまっていて、
使い道がわからなくなっているケースが多いのです。
そこで、私たちは、『スマート家族信託』というシステムをつくりました。
スマートフォンで信託財産の収支入力を行うと、帳簿が自動で生成でき、
年に1回の報告書も自動で作れます。
さらに、家族みんなで見られるようになっています。
信託法上、すべての管理関係書類は10年間保管しなければいけないのですが、
それらのデータもすべてこのシステムに保管できます。
そのほか、信託期間中に作成しなければいけない書類のひな型も入っています。
全部簡単にスマホでできるのです。
また、APIで銀行口座、電子マネーなどオンラインの決済が取り込めますし、
介護施設に連れていくのにタクシーに乗って現金で支払った場合などは、
レシートの情報を読み込むこともできます。
仕組みの効率化、財産の安全を守る領域は無尽蔵にあります。
この領域で、士業のなかから、 システムをつくって効率化をしていくベンチャー企業が
どんどん出てくるべきだと私は思っています。
私たちは、「人×テクノロジーの力で、ずっと安心の世界をつくる」というミッションを掲げています。
人にしかできないこととテクノロジーに任せることを組み合わせ、
昨日より今日、今日よりも明日と、いい世界をみんなでつくっていければと思っています。
地域と協力し、認知症にならない社会を実現する
クロージングセッションでは、社会課題でもある認知症対策に取り組んでいる
アグリマス株式会社代表取締役の小瀧歩氏と
京セラみらいエンビジョン株式会社 代表取締役社長の金 炯培(キム ヒュンベ)氏が登壇。
「高齢者が認知症にならない社会」を実現するための取り組みを紹介しました。
小瀧氏は、医食同源の考えを基に「食」をとことん追究し、
「介護施設×産直野菜の販売」という新しい業態のデイサービス施設を東京都大田区に開設したほか、
薬に頼らない健康をサポートするため、
介護予防のプログラムを中心とした動画配信サービス『健幸TV』を全国へオンライン配信するなど、
独自の取り組みを行っています。
また、地域、介護事業所、医師会が連携し、認知症の早期発見や重症化予防に取り組んでいます。
金氏は、地方自治体向けに、「住まい・医療・介護・生活支援」など
地域の情報を配信するサービス『しらせあい』を提供するほか、
認知症に関わる4つの機能の測定会を行い、
その情報を家族らと共有することで認知症の早期発見を目指すプラットフォームを提供しています。
両氏に共通するのは、地域自治体と連携して、認知症の予防や早期発見を目指していること。
小瀧氏は、「自治体は医療費、介護費の削減を目指しているため、認知症の予防に取り組みたいのです。
最近では、脳トレ、脳波、匂いなどで
認知症を発見するサービスを開発しているベンチャー企業も数多く出てきていますが、
単発のものだけでは評価できないため、
さまざまなサービスを組み合わせることが必要です」と話します。
また、金氏は、「自治体が認知症の検診を推進しても、地域の人はなかなか参加しませんが、
アプリなどでデータを持つことができれば、
予防のネットワークをつくることが可能になります」と語ります。
さらに、両社では今後、金融機関と提携して、
中小企業の従業員向けの健康経営(メンタルケア、認知症予防)や、
オーナーの事業承継・相続対策にも対応していくことを考えています。
社員数の少ない中小企業においては、
認知症と社員の高齢化の問題は、ダイレクトに業績にも影響を及ぼします。
認知症の早期発見によりスムーズな事業承継ができれば、
企業の永続性が担保されるため、重要な日本の課題になり得ます。
小瀧氏、金氏の講演を受け、「これからは、頼れる家族がいない単身の方も増えていきます。
そういったときに、士業が家族同様の立場となって関与して、
財産管理だけではなく、ヘルスケアの部分も見てあげる。
そうやって家族同様に寄り添ってサポートしていく未来が見えてくると思います」と磨氏。
「私たち士業に求められるのは、“自分たちの領域だけで勝負しない”ということだと思います。
お二人が開発しているサービスを、士業としてお客様に提供する仕組みを考えることも必要です。
“お客様の立場に立ったときに何が安心なのか”を、
これからも追求していきたいと思います」と話していました。