11月15日、経済産業省のスタートアップ創出支援制度「大企業人材等新規事業創造支援事業費補助金」の執行団体である(一社)社会実装推進センター(JISSUI)が令和4年度2次公募の審査結果を発表した、、、と書き出したものの、そもそもこの制度をご存知ない方も多いと思う。一言でいうと、会社に席を置いたまま社員が起業に挑戦することをサポートする制度である。
狙いは大企業の活性化と新規事業の創出。社員は退職することなく自己資金や金融機関からの投融資で起業、自らが起業したスタートアップに “出向” という形をとることで新会社の経営に専念する。その際、出向元企業の新会社に対する持分比率は20%未満に抑えられる。つまり、起業社員は既存業務から完全に切り離され、また、新会社は重要な意思決定に際して出向元企業からの制約を受けない。
起業社員にとってのメリットは言うまでもない。出向であるがゆえに給与は支払われるし、例え失敗しても出向元に戻ることが出来る。企業にとっては、実践力と経営視点をもった人材の育成、社内の活性化、加えて、優先買収交渉権を持つことで成功したスタートアップの本体への取り込み(スピンイン)も期待できる。既存の大組織がもっとも不得手とする新規事業の立ち上げプロセスを外部資金と経験豊富なアクセラレーターに任せることが出来る利点も大きいだろう。
今回採択されたスタートアップはミズノ社員による左右別サイズのスポーツシューズの購買サービス、サントリーホールディングス社員が立ち上げた飲食店専門のM&A仲介プラットフォーム、日揮グローバル社員による海外駐在員のための自己採血キットによる郵送検査サービス事業等5件※1、いずれも本業との関連またはその周辺に見つけた新たな需要と言えるが、事業スケールやビジネスモデルにおいて本体とのシナジーが小さく、また、ノウハウという面においても本体での事業化はハードルが高いと言える。
本制度のスタートは令和元年、これまで33件が採択された。大企業が抱え込んだ優秀な人材や活かしきれていない経営資源に新たな事業創出機会を提供する意義は大きい。何よりも、現状に甘んじがちな組織にとって大きな刺激になるだろう。新規事業創出のエコシステムの新たなカタチとして定着することを期待する。
当社も、当社の人脈、情報、知見を活かした次世代事業をスタートさせた。事業名は「ビジネス原石を輝かせるプラットフォーム※2」、文字通り、埋もれたままの地方や中小企業の技術や製品、大きな組織の中で封印されたビジネスプラン、時代が追いついてこないビジネスアイデアたちを見出し、磨き上げ、未来につなげるビジネスだ。埃をかぶったままの原石たちにチャンスを与えるべく当社も微力を尽くしたい。
※1. 採択された他の2案件は、ソフトバンク社員が起業した屋外広告取引プラットフォームと㈱メブキの不動産管理会社向け業務DXツール、後者は「MBO型企業枠」での採択
※2. ビジネス原石を輝かせるプラットフォーム スタートアップ&事業創造支援サービス(矢野経済研究所)
今週の“ひらめき”視点 11.13 – 11.17
代表取締役社長 水越 孝