矢野経済研究所
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2035年の電動パワーステアリング世界市場規模は搭載数量ベースで9,865万台と予測

~AD/ADAS対応、ブレーキなどとの協調制御による安全性向上を目的にステアバイワイヤの本格的な普及が2025年から始まる~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、電動パワーステアリング世界市場の調査を実施し、主要市場の概況、主要参入メーカーの動向を明らかにした。

電動パワーステアリングの世界市場規模予測(乗用車及び車両総重量7t以下の小型商用車)

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1.市場概況

2021年の電動パワーステアリング世界市場規模は自動車生産台数における搭載数量ベースで約6,472万台、2035年には約9,865万台まで拡大すると予測する。このうち、ステアバイワイヤ(SBW)は安全性向上の目的から搭載が進み、2035年に約2,036万台まで拡大すると予測する。

燃費規制の厳格化やADAS(Advanced Driving Assistant System)搭載車への普及を要因として世界市場で電動パワーステアリング(EPS)の搭載が進み、特にEPSの搭載が遅れていた北米や中国が2021年にかけて急激に採用が進んだことによりステアリングの電動化率は世界全体で85.5%まで上昇した。
今後は、油圧パワーステアリング(HPS)が採用されているケースが多い小型商用車やインド、ASEAN諸国など新興国でEPSへの切り替えが進むことで、今後は市場がさらに成長するとみられる。日本、欧州、北米、中国などの市場では、2025年以降から自動運転レベル3以上、ブレーキやサスペンションなどとの協調制御による安全性向上を目的に、ステアバイワイヤの装着が進むとみられる。

2.注目トピック

協調制御がステアバイワイヤ(SBW)普及のカギに

電動パワーステアリング(EPS)の開発では、自動車用機能安全規格「ISO26262」のASIL(Automotive Safety Integrity Level)Dに対応するための冗長設計など、部品故障時に操舵を継続するフェールセーフオペレーション対応が標準化している。
2025年から本格的な普及が見込まれるステアバイワイヤは冗長性確保のために電源の2系統化、システムコスト低減などの対応が必要であり、電源の2系統化にはキャパシタ追加、コスト低減は既存部品の流用、小型車向けの廉価版をラインアップに加えるなどして、各社ともに開発を進める。

欧州サプライヤーでは車両協調制御モジュールの開発を進めており、日系サプライヤーでも同様の動きがみられる。ブレーキやサスペンションなどとの協調制御により、操舵感の改善、制動距離の短縮などのメリットがある。各国が実施するNCAP(New Car Assessment Program)※は新たな要件が年々課されるため、要件を達成するためにも安全性向上に寄与する協調制御は、ステアバイワイヤ普及の最大の要因になると考える。

※NCAP(New Car Assessment Program)とは新車の安全性をテストし、交通事故の負傷者や死亡者を低減する目的に設立された評価基準である。

3.将来展望

2021年のステアリング電動化率は85.5%となっており、北米で人気が高いピックアップトラックなどの大型車への搭載、中国ローカル自動車メーカーがEPSの採用を進めた結果、電動化率は増加の一途をたどっている。2035年までの市場は油圧パワーステアリング(HPS)がまだ採用されているケースの多いインド、ASEAN、アフリカなどの地域におけるステアリング電動化が市場の伸び代になるとみられる。

電動パワーステアリング(EPS)のタイプ別で、2021年時点で最も多くの車両に搭載されているとみられるコラムタイプは、コストが安価であることから新興国での普及を今後も見込むが、AD(Autonomous Driving)/ADAS(Advanced Driving Assistant System)機能はラックタイプなど下流をアシストするタイプが望ましいことから、2035年にかけて採用が減少するとみられる。

2025年から本格的に普及が見込まれるステアバイワイヤ(SBW)は自動運転レベル3以上の対応、ブレーキやサスペンションなどシャシ領域の協調制御による安全性向上を目的に搭載が進むとみられ、2035年時点で電動パワーステアリング世界市場全体に占める構成比は約20%になると予測する。

調査要綱

1.調査期間: 2022年4月~9月
2.調査対象: EPSシステムメーカー、EPS部品メーカー、商用車メーカー等
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話によるヒアリング、ならびに文献調査併用
<電動パワーステアリング市場とは>
ステアリングのアシストに、電気モータを利用する技術を電動パワーステアリング(EPS:Electric Power Steering)という。ドライバーの操舵力をトルクセンサで検出し、ECU(電子制御ユニット)でモータを制御することで操舵をアシストする。基本的な構成に違いは無いが、アシストする箇所(モータの取り付け位置)によって、コラムアシスト、シングルピニオンアシスト、デュアルピニオンアシスト、ラックアシストの4つの方式が存在している。旧来の油圧式システムと比較し、燃費と制御面で優れるため、急速に普及してきた。

本調査における電動パワーステアリング市場とは、電動モータで油圧を発生させ操舵アシストに利用する電動油圧パワーステアリング(EHPS:Electronic Hydraulic Power Steering)、操舵コラムと転舵ラックに物理的なつながりがないステアバイワイヤ(SBW:Steer By Wire)、油圧パワーステアリングのコラム部またはステアリングギア部に追加したアクチュエータで操舵をアシストする中大型車向け製品である操舵アクチュエータを対象とし、世界市場規模は乗用車及び車両総重量7t以下の小型商用車の生産台数における搭載数量ベースで算出している。
<市場に含まれる商品・サービス>
電動パワーステアリング(コラムアシスト、シングルピニオンアシスト、デュアルピニオンアシスト、ラックアシスト)、電動油圧パワーステアリング、ステアバイワイヤ、操舵アクチュエータ、モータ、ECU、トルクセンサ、モータポジションセンサ、ステアリングアングルセンサ、コンビネーションスイッチ

出典資料について

資料名2022 電動パワーステアリングシステム市場の最新動向と将来展望
発刊日2022年09月29日
体裁A4 289ページ
価格(税込)176,000円 (本体価格 160,000円)

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