正しい相続手続き,養子縁組,相続関係
(写真=ベンチャーサポート法律事務所編集部)

相続手続きを行う上で問題となることの一つとして、養子縁組があります。

養子縁組をした場合には、相続手続きに対して何か影響があると聞いたことがあるのですが、具体的にどのような効果があるのでしょうか?

養子縁組をする前に子供がいた場合、そして養子縁組をした後に子供ができた場合の手続きについても一緒に見ていきましょう。

養子縁組をすると?

養子縁組を結んだ養親と養子は法律上の親子関係を形成することになります。

ということは、相続関係にも影響が出てきそうですね。

相続においては、相続人が誰であるかが問題となります。

相続人の順位の中で「子」は第一順位ですから、養子縁組を結んで、養子となった者は、被相続人にとって第一順位の相続順位を得ることができるという訳です。

養子縁組というのは、養親との間で新たに法律上の親子関係を形成するものですが、実際のご両親との関係を否定するものではありません。

つまり、養親となるものは、養親との間で親子関係を、そして、それとは別に実際の両親との間で親子関係を持つことになるという訳です。

そうすると、養親が亡くなった際には、養親の相続を受けることができますし、実際の両親が亡くなった際には両親の相続を受けることができるということになります。

養子縁組をしても必ずしも実子と同じような待遇を受けられる訳ではない

養子縁組は養親との親子関係を形成するとはいえ、それはあくまでも法律的な親子関係となりますので、必ずしも実子と同様の効果を受けられる訳ではありません。

実子の相続の場合には、代襲相続が問題となることがあります。

代襲相続とは、被相続人が亡くなった際に、被相続人の子供が相続人となるべきところ、その子供はすでに死亡しているが、その代わりにその子供に子供が存在していた場合、すなわち、被相続人にとっては孫が存在していた場合には、孫が子供に代わって被相続人を相続することを言います。

ところが、この代襲相続は、その性質上直系であることを重視しています。

つまり代襲者となるものが被相続人にとって「直系卑属」という法律上のつながりがあり、卑属関係があって初めて認められるということです。

養子縁組を締結して子供が生まれた場合には、その養子は法律上の親子関係を形成していますから、その養子から生まれた子も法律上の孫にあたることになります。

ところが、順番が逆で、既に子供がいる人が養子を結んだ場合には問題となります。

なぜならば、この養子の子供は自分の孫ではないからです。

直系卑属という概念は、自分の子供が新たに子供を生んだ時に、その子供等に対して使われます。

ところが、最初から子供がいる人で、その子供を除外して、親だけと養子縁組を結んだ場合には、その人とは養子関係が形成されることにはなりますが、その養子の子供には何のつながりもないということになります。

養子縁組前に存在していた「孫」に対する相続

正しい相続手続き,養子縁組,相続関係
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さて、前述の通り、養子縁組前に存在していた子供のいる親と養子縁組を結んだ場合において、養親が死亡した際に、養子がすでに亡くなっていたとしても、代襲相続は成立しないと説明しました。

しかしながら、養親の感情としてはどうでしょう。

確かに、法律上は関係性がないかもしれませんが、小さくて可愛い孫のような存在である養親の子供に対しても、少しばかり相続分を分け与えてもよいのではないかと考えるのが人間性ではないでしょうか。

このような場合に有効となるのが、遺言書です。

遺言書において、養親の子供にも相続権を与えておけば、仮に代襲相続をすることができないとしても、公平的に相続手続きが行われることになります。

遺言書のメリットとしては、相続人以外の者に対しても柔軟に相続分を分配することができることがあります。

さて、代襲相続が起こった場合の養子の子供の相続手続きについて解説をさせていただきましたが、これが順番通りに、養親→養子の順番で亡くなった場合には、代襲相続が問題となることはありませんから、養子の子供も問題なく相続分を譲り受けることができます。

養親と孫との関係では問題になりましたが、養子とその子供は血縁上間違いなく「子供」でありますので、これについて現状疑問の余地はありません。

養子縁組における相続の誤解

養子縁組を行うことには、上記の通り一定のメリットがあります。

そこで「養子が子供として相続権を得ることができるのは、人数制限があるのではないか?」とお考えの人もいるでしょう。

これは、大きな誤解です。

実際には、養子になることによって「子」としての相続分を受けることについての人数制限は、法律上、設けられておりません。

一方で、その考えは近からず遠からずとも言えます。

つまり、人数制限があるのは相続税上の取り扱いにおいて問題となるのです。

すなわち、養子の人数は相続税を計算する上で基礎控除の算定の時に、制限がかけられることになっています。

しかしながら、それならばできる限り養子縁組を行って、養子を増やしてしまおうという姿勢が必ずしも良いものでもありません。

なぜならば、遺言書を作るときに問題となる一人当たりの遺留分が少なくなってしまいますし、また、養親の実子にとっては、養子が多くなることによって自分の取り分が減ってしまうからです。

まとめ

今回は、養子縁組が行われた際の相続手続きの取り扱い方法について、解説をさせていただきました。

養子縁組をした場合と通常の相続との違いの一つとして、代襲相続があります。

養子縁組を結ぶ前に子供がいた場合と養子縁組を結んだ後によって子供が生まれた場合に、対応が異なりますので、ぜひ整理をしておいてください。

養子を結ぶことによってはメリットもありますが、その反対に、一人当たりの相続人が享受することができる相続分が減少してしまうことも念頭においたうえで、検討をしましょう。(提供:ベンチャーサポート法律事務所