2015年10月以降にマイナンバーが全国民へ通知されたことで、マイナンバーを使用する機会も増えているだろう。マイナンバーは、個人情報であるため、それを取り扱う企業は徹底した管理・遵守が必要だ。そこで本記事では、マイナンバーがどういうものかを改めて解説しつつ利用範囲や企業管理の対応など事業主(企業の担当者)が知っておくべき知識についてわかりやすく紹介する。
目次
マイナンバーとは
マイナンバーとは、日本国内に住民票を持つすべての人に与えられている12桁の番号である。直訳すると「私の番号」という通り一人ひとり番号が異なっているのが特徴だ。2015年10月以降に国民すべてに通知されたが、それ以降は出生や国外からの転入などで新たに住民登録した際に番号が作成される。なおいったん与えられた番号は、漏えいや不正利用などの場合を除き生涯変更されることはない。
つまり一生同じ番号を使い続けることになる。なおマイナンバーの通知と時期を同じく2015年10月から法人にも13桁の法人番号が与えられたが、これは個人のマイナンバーとは異なり誰でも自由に利用できる番号だ。
マイナンバーの目的
次にマイナンバー制度が導入された3つの目的を改めて確認しておこう。
国民の利便性向上
年金・福祉関係などの社会保障、税関係の手続きでは、申請書(申告書)に住民票や課税証明書などの添付が必要なものがある。マイナンバーの提供で添付書類を削減しようということだ。住民票などの提出が不要になれば、これらの書類を取得する手間や手数料がなくなり負担が軽減される。
行政の効率化
これまで必要だった書類が不要となるのは、行政機関同士が専用のネットワークシステム上でマイナンバーに紐づく情報をやりとりしてさまざまな情報の照合や確認ができるようになったからだ。照合や転記、入力などに要する時間や労力が大幅に削減されることで効率化につながる。特に災害時においては被災者の確認、被災者台帳の作成などでは効率の良さは重要だ。
公平かつ公正な社会の実現
マイナンバーによって行政機関は給与や事業などの所得ほか年金や社会福祉などの行政サービスからの受給状況を把握しやすくなる。それにより不正受給の発生を防ぎ真に必要とする人に対してのきめ細かな支援に役立てることができる。
企業実務でもマイナンバーの取扱いが必要
「社会保障」「税」「災害対策」の3つの分野で利用されるマイナンバーだが行政機関に限らず民間の事業者も他者のマイナンバーを取り扱うことになる。なぜなら事業者は、従業員の健康保険や年金(社会保障)、源泉徴収(税)などの手続きをする義務を負っているからだ。ここでは、主な利用場面を具体的に紹介しよう。
従業員を雇用するとき
従業員を雇用すると健康保険や厚生年金保険、雇用保険への加入手続きが必要だ。その際の手続きでそれぞれに以下の書類にマイナンバーを記載し各行政機関へ提出する。
- 健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届
- 雇用保険被保険者資格取得届
ちなみに60歳以上65歳未満の従業員を雇用し「高年齢雇用継続基本給付金」の受給対象となる場合は、その手続きでもマイナンバーの記載が必要だ。
育児休業を取得する従業員がいるとき
育児休業を取得すると雇用保険から当該従業員に育児休業給付金が支給される。この手続きは、事業主を通して行うことが必要だ。その際の手続きで必要となる「育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付金支給申請書」には、マイナンバーが求められる。なお介護休業を取得する従業員がいる場合も同様だ。
給与、支払い関係事務を行うとき
給与関係では、源泉徴収票の作成時に従業員のマイナンバーを記載し所轄税務署へ提出する。ちなみにマイナンバーを記載するのは、税務署提出用のものだけで従業員へ渡す分には記載しない。また社内セミナーなどで外部講師を招くなど報酬の支払いをする企業もあるだろう。このような場合は「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」に講師のマイナンバーを記載し所轄税務署に提出するようになる。
従業員が退職するとき
従業員が退職する際の雇用保険の資格喪失手続きにおいて「雇用保険被保険者資格喪失届」へのマイナンバー記載が必要となる。なおこれらの手続きでマイナンバーを提出するのは、不正取得や不正受給の防止が目的だ。そのためきちんと提出しないと本来取得できるものができない可能性もあるため、注意したい。
例えば健康保険の加入手続きでは、マイナンバーの記載がなければ健康保険証の交付がされなくなってしまう。事業主としては、従業員に対してしっかりと交付についての説明をすることも求められるだろう。
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事業主に課されるマイナンバーの取扱いルール
従業員や外部者のマイナンバーを扱う事業主は、漏えい防止のために徹底した管理が必要だ。収集時、保管時、破棄時の各ルールを知っておこう。
収集に関して
そもそもマイナンバーは、利用が限定されており、それらの事務を行う必要がある場合に限り収集が可能だ。ここでいう収集とは「集める意思を持って自己の占有に置くこと」を意味する。
例えば以下のような場合は、収集となるため注意したい。
- 人から個人番号を記載したメモを受け取る
- 人から聞き取った個人番号をメモする
- パソコンなどの画面上に表示させたマイナンバーを書き取ったりプリントアウトしたりする など
保管に関して
保管についても同様だ。例えば以下のように翌年度以降も継続的に利用する必要がある場合などに限り保管できる。
- 雇用契約が継続している間の給与の源泉徴収事務や健康保険、厚生年金保険届出事務など
そのためそれ以外の場合は、マイナンバーを迅速に破棄しなければならない。なおマイナンバーガイドライン安全管理措置により事業者は、特定個人情報等の具体的な取扱いを定める取扱規程等の策定が義務付けられている。これは、以下の5つの管理段階ごとに取扱方法や責任者・事務取扱担当者およびその任務について定めるものだ。
- 取得
- 利用
- 保存
- 提供
- 削除と廃棄
取扱規程を見直しする際にも安全管理措置に則ったうえで取扱わなければならないため、適宜ガイドラインを確認しよう。
破棄(削除)に関して
法定調書などマイナンバーが記載された書類のなかには、所管法令によって保存期間が存在する。しかしその期間が経過したあとは、速やかに破棄または削除する必要がある。破棄の方法は、焼却や溶解、シュレッダー、マイナンバー部分のマスキングなどさまざまな手段で行う。紙媒体、データのいずれでも復元不可能な状態にすることが必要だ。
漏えい等では企業への罰則も
ここまでの説明で特に事業者側は、厳正なマイナンバーの取扱いをしなければならないことが理解できたのではないだろうか。マイナンバー法では、マイナンバーの管理不備・漏えい等に対して厳しい罰則を設けている。違反行為をした人や企業に対しても適用されるため注意したい。
例えばマイナンバーを取り扱う事務の人が正当な理由なく特定個人情報に関するファイルを提供したとしよう。この場合、行為者には4年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金、またはその併科となる。(番号法第48条)また法人に対しては、1億円以下の罰金刑だ。(第57条第1項第1号)
悪意はなくてもうっかりミスで漏えいにつながるリスクは、どの企業でもあり得る。事業者自身がマイナンバー制度の目的や仕組みを認識しておくとともに事務従事者に対する研修をしっかりと行ってほしい。
マイナンバーに関するQ&A
Q1.マイナンバーの目的は?
A.マイナンバーの目的は「国民の利便性向上」「行政の効率化」「公平かつ公正な社会の実現」の3つだ。例えば年金や健康保険、税金関係の手続きでこれまで必要だった住民票や課税証明書といった書類の提出を省略できる。
国民にとっては、住民票などを取得する手間や手数料がなくなり利便性が高くなる。これは、行政機関にとっても同様だ。ネットワークシステム上でやりとりすることで照合や転記、入力などに要する時間や労力が大幅に削減され効率化につながる。行政機関は、給与や事業などの所得ほか年金、社会福祉などの受給状況を把握できるため、不正受給を防止し真に必要とする人への支援をしやすくなる。
Q2.マイナンバーとはなにか?
A.マイナンバーとは、日本国内に住民票を持つすべての国民に与えられている12桁の番号。日本人に限らず外国籍でも住民票があれば与えられる。また年齢も問わないため、出生や国外からの転入などで新たに住民登録した人は、その際に番号が作成される仕組みだ。マイナンバーは、国民一人ひとり異なる番号が与えられている。
なぜなら「社会保障」「税」「災害対策」の3つの分野で特定の手続きだけに利用され、その本人の所得の確認などに使われるからだ。大切な個人情報となるため、取扱いには注意が必要である。なおいったん与えられた番号は、漏えいや不正利用などの場合を除き一生涯変更されないため、紛失や置き忘れには気をつけよう。
Q3.マイナンバーはどこに書いてある?
A.マイナンバーは、2015年10月以降順次送付された通知カードに記載されている。なおすでにマイナンバーカードの交付を受けた場合は、通知カードは返納しているはずなのでマイナンバーカードの裏面で確認可能だ。マイナンバーカードを申請しておらず通知カードも紛失した場合は、マイナンバーが記載された住民票の写しを取得すれば確認できる。
通知カードは、2020年5月25日に廃止され以後は再発行されないため、注意したい。なお万が一通知カードを紛失した場合は、市区町村窓口に紛失した旨を届け出ることが必要だ。
Q4.マイナンバー流出の影響は?
A.マイナンバー流出の影響は、マイナンバー所持者本人とマイナンバーを取り扱う事業者などで異なる。本人にとっては、個人情報が流出されることで悪用されることが心配になるだろう。しかし国によるとマイナンバーが流出しただけでは自分の個人情報を調べられたり、いわゆる「なりすまし手続き」をされたりすることはなく、他人が悪用できない仕組みになっているとのことだ。
一方行政機関や金融機関、民間企業などマイナンバーを取り扱う事業者などにとっては、流出が法律の違反行為にあたってしまう。違反内容によって懲役や罰金などの罰則があるため、世間からの厳しい目を向けられ組織のイメージダウンにつながりかねない。