SDGsやESG投資が浸透するにつれて、近年では新たな問題が顕在化してきた。グリーンウォッシュはその代表例であり、さまざまな弊害が多方面から指摘されている。ここではグリーンウォッシュの概要のほか、問題点や企業が知っておきたい対策を解説する。
目次
グリーンウォッシュとは?
グリーンウォッシュとは、広告等を通して環境に配慮しているように見せかける行為である。環境をイメージさせる「Green」と、ごまかしや上辺を意味する「Whitewashing」を合わせた造語であり、分かりやすい例としては以下が挙げられる。
○グリーンウォッシュの例
・環境負荷が大きい商品に、環境をイメージさせる緑のラベルを貼る
・「100%リサイクル可能」と謳いながら、リサイクルできない部品がある
・実績のない企業が「業界トップ」「業界No.1」を謳う
・根拠のないデータで環境配慮をアピールする
グリーンウォッシュはネット上に多く存在しており、2020年に欧州委員会が世界中の企業サイトを調査したところ、42%の企業が誇張・虚偽・欺瞞的な表現をしていると公表された。環境意識の高いユーザーを狙った手口であるため、環境配慮型商品の消費者が増えるほどグリーンウォッシュも増加する傾向にある。
グリーンウォッシュの問題点
2015年の国連サミットでSDGs(※)が採択されて以来、世界では環境問題・社会問題が広く注目されている。
(※)環境問題・社会問題に関する国際的な目標のこと。
特に近年は「環境・社会・ガバナンス」を重視するESG投資が拡大しており、環境配慮型の企業が高く評価されるようになった。しかし、グリーンウォッシュを行う企業が増えると、本来評価されるはずの企業に資金が流れないリスクがある。
また、自覚のない消費者が環境破壊に加担してしまう点や、SDGs達成の足かせになる点も深刻な問題点だろう。
○グリーンウォッシュの問題点
・正当に評価を受けられない企業が増える
・消費者が環境破壊に加担してしまう
・騙された消費者が環境問題への関心を失う
・SDGs達成の足かせになる
・不当な資金集めにつながる など
上記のように、グリーンウォッシュの存在は社会に多大な影響を及ぼしている。
グリーンウォッシュの現状
ここからは過去の事例や規制状況など、グリーンウォッシュの現状を見ていこう。
過去の事例
グリーンウォッシュの概要を見ると、「悪徳業者が故意に行う手法」と感じるかもしれない。しかし、実際には有名企業による事例や、企業が意図しないグリーンウォッシュの事例も見られる。
グリーンウォッシュはあらゆる業界に存在しており、社会的評価の高い企業が指摘されるケースもある。また、企業が意図しているかどうかは関係ないため、情報発信をする際には十分に注意したい。
グリーンウォッシュの規制状況
環境問題への意識が強い欧米では、さまざまな地域でグリーンウォッシュが規制されている。例えば、フランスは2021年4月から規制法を導入しており、グリーンウォッシュに該当する行為には宣伝費用の最大80%にあたる罰金などが科される。
一方で、日本の省庁もガイドラインなどで情報発信を行っているが、欧米ほど厳しい規制は導入されていない。ただし、規制がなくてもステークホルダーからの信用は失うため、グリーンウォッシュは徹底して避けることが重要だ。
グリーンウォッシュの見分け方
グリーンウォッシュの見分け方については、イギリスFuterra社のガイドライン「Understanding and Preventing Greenwash:A Business Guide」で以下のようにまとめられている。
上記のサインに自社がひとつでも当てはまる場合は、発信した情報をすぐに修正することが重要だ。
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企業が知っておきたいグリーンウォッシュ対策
グリーンウォッシュはあくまで外部が判断する行為であるため、情報発信をする企業は対策を考えておく必要がある。ここからは、中小経営者が知っておきたい2つの対策を紹介する。
透明性のある広告・表示を意識する
グリーンウォッシュを防ぐ上で、「透明性」は重要なキーワードである。例えば、ふりかけなどを扱う三島食品は、原材料の変更に伴って商品パッケージの色も新調した。
売上に影響しづらい小さな要素であったとしても、消費者の誤解を招くような広告・表示は望ましくない。誰が見ても情報が正しく伝わるように、透明性のある言葉やイメージを使うことが重要だ。
エビデンスの記載を徹底する
情報がありふれた現代において、エビデンス(根拠)の記載は必須とも言える。特にデータを表示する際には、「正しいかもしれない」ではなく誰もが信頼できる情報源を記載するべきだ。
データはビジュアル的に見やすいため、多くの企業が自社サイトや広告で活用している。SNSや動画マーケティングでもよく見られるが、参照元の信用性が低いグラフや、十分な検証材料がないデータは表示すべきではない。
調査機関から指摘されるだけではなく、虚偽のデータを見つけた消費者が拡散してしまうリスクもあるため、エビデンスの記載は徹底することを心がけよう。
グリーンウォッシュに関するQ&A
ここまでの内容を含めて、以下ではグリーンウォッシュに関するQ&Aをまとめた。グリーンウォッシュはさまざまな業界に影響を及ぼすため、基本的な知識からしっかりと押さえていこう。
Q1.グリーンウォッシュの由来や歴史は?
グリーンウォッシュは、「Green(環境にやさしい)」と「Whitewashing(うわべ、ごまかし)」を組み合わせた造語である。1980年代に欧米の活動家によって誕生した用語であり、「グリーンウォッシュ企業」や「グリーンウォッシュ商品」のように使われることもある。
SDGsやESG経営が注目されている影響で、近年ではグリーンウォッシュへの警戒感が強まりつつある。
Q2.グリーンウォッシュは何が問題?
グリーンウォッシュは消費者を欺く行為であり、虚偽広告などに騙された消費者は不利益を被るケースが多い。また、関連企業のイメージやブランドの低下、環境破壊なども軽視できない問題点である。
なお、広告発信をする企業にその意思がなくても、広告内容が事実に反している場合はグリーンウォッシュとみなされる場合がある。
Q3.グリーンウォッシュの見分け方は?
グリーンウォッシュを見分けるには、以下の観点から広告・宣伝などを確認する必要がある。
・キャッチフレーズや主張の誇大表現
・根拠のない主張
・実態を表さないイメージ図
・専門用語などを使った独自の表現
・矛盾表現
・データなどの捏造や偽造
いずれも消費者・投資家を欺く行為であるため、広告発信をする企業は十分に注意したい。
Q4.グリーンウォッシュの罰則や規制は?
アメリカではグリーンウォッシュを取り締まった例として、SEC(米国証券取引委員会)による罰金がある。実態を伴わない投資商品を取り扱った運用会社に対して、150万ドルの罰金が科された。
ほかの欧米諸国でも罰則化が進んでいるものの、日本においては明確なペナルティが存在しない(※2022年10月時点)。SDGsやESG投資を浸透させるには、規制などの整備が必要になるだろう。
Q5.グリーンウォッシュの有名な事例を知りたい
グリーンウォッシュの事例としては、実態を伴わない「100%リサイクル」や「カーボンニュートラルの実現」が挙げられる。例えば、脱炭素社会の実現を掲げていた国内銀行は、石炭火力発電所への融資を継続していたことで一部から批判を浴びた。
また、アパレル業界や飲食業界の大企業にも、グリーンウォッシュとみなされた例が存在する。
グリーンウォッシュに対する警戒は今後も強まる
ステークホルダーを欺くグリーンウォッシュは、SDGsやESG投資の根幹を揺るがす存在だ。消費者や投資家はもちろん、仕入先・取引先となる関連企業もダメージを受けるリスクがある。
また、グリーンウォッシュに対する警戒は今後も強まると予想されるため、自社が該当しないように広告・宣伝には細心の注意を払っておこう。