10月~12月の国産鶏卸売相場(2018年-2022年もも正肉)
(画像=10月~12月の国産鶏卸売相場(2018年-2022年もも正肉))

2022年の国産鶏モモ正肉の荷受相場は6月下旬を境に前年実績を上回り、その後、夏場から秋口にかけては右肩上がりで上昇し、2021年どころか過去5年の相場との価格差が徐々に広がっていった。

10月17日週に入ってから、もも正肉相場はキロ当たり700円(税抜き、日経加重)の大台に達し、この時期としては異例の高値相場となっている。これから年末の需要期に向かってもも正肉相場がどこまで上昇するのか――。円安や国産凍結品の在庫状況など、少なくとも大きな下げ要因は見当たらず、最需要期に向けて750円前後までジリ上げの展開になる可能性が高まっている。

日経加重相場によると、もも正肉相場は6月下旬以降、緩やかな右肩上がりで推移している。この結果、月間平均では7月が637円で前年同期比37円高だったものが、8月が649円(前年同期比68円高)、9月は668円(86円高)と続伸の展開となり、前年実績との価格差が広がっていった。

10月は1日の680円(89円高)でスタートし、10月17日には701円(2021年10月18日は609円、92円高)に達し、業界の月間相場予想(690円前後)よりも10円も上回る状況となっている。むね正肉も同様で、7月340円(前年同期比39円高)、8月354円(46円高)、9月364円(47円高)とジリ高となり、10月1日は370円(48円高)で始まり、17日に378円(48円高)に達している。

10月~12月の国産鶏卸売相場(2018年-2022年むね正肉)
(画像=10月~12月の国産鶏卸売相場(2018年-2022年むね正肉))

供給面では、一部産地ではまだ体重が3kg台に満たないケースもみられるが、先月までみられた猛暑の影響はほぼ改善しているもようだ。そのため、足元の高値相場の要因としては、気温低下に伴う鍋物需要の強まりと、円安に伴う輸入ブロイラーのコスト高から、量販店などで国産生鮮物へシフトしていることが大きいといえる。

今後も、行楽需要に加えて気温の低下とともに鍋物需要がさらに強まるため、もも正肉をはじめ、手羽元など需要は堅調に推移するとみられる。輸入品も円安で厳しいコスト環境にあるが、先物外貨の値下がりもあって現物相場は一時期よりはやや下げており、また引合いも増えている状況にある。

通常であれば、国産相場が上がり過ぎた場合、輸入品に需要がシフトするケースも考えられるが、ことしは国産・輸入ともに食肉全体がコスト高で推移しているため、そのような流れは少なそうだ。国産凍結物の在庫が少ないなか、年末に向けて玉不足が強まる可能性もある。このため、荷受筋も鳥インフルエンザなど供給面で大きな変動要因がない限り、最終的に740~750円程度までジリ上げで推移するとみているようだ。

荷受け筋・流通サイドからは、「量販店にとって国産鶏肉は3畜種のなかでは最も安価で利益が確保できるカテゴリー。高値相場でも一定量は使わざるを得ない」(関東の荷受筋)、「輸入品が高いため国産品で品揃えしていくしかない。問題は売価をどう設定するかだが、ある程度値入れ高を落としていくことも想定している」(関西のバイヤー)といった声が聞かれている。年末に向かって、さすがに800円付近まで上昇することは考え難いものの、モモは正肉で750円、またムネ正肉は380~385円がことしの天井になりそうだ。

〈畜産日報2022年10月19日付〉