スマート農業の本格的な普及へ
~農業データ連携基盤(WAGRI)の本格運用や、ドローンを利用した農薬散布サービスが普及拡大~
株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内におけるスマート農業市場を調査し、市場規模、参入企業の動向、および将来展望を明らかにした。
スマート農業国内市場規模推移と予測
1.市場概況
2018年度のスマート農業の国内市場規模は141億2,100万円で、2019年度は158億7,400万円を見込む。2017~2018年度は農業クラウド・複合環境制御装置・畜産向け生産支援ソリューションなどの栽培支援ソリューションが牽引し、2019年度以降は、ドローンを利用した農薬散布ソリューションが拡大するとみる。
スマート農業は、従来からの農業技術と情報通信技術を連携させることで、更なる生産の効率化や農作物の高付加価値化を目指すものである。農林水産省の農林水産業・地域の活力創造プランでは、「異業種連携による他業種に蓄積された技術・知見の活用、ロボット技術やICTを活用したスマート農業の推進、新たな品種や技術の開発・普及、知的財産の総合的な活用、生産・流通システムの高度化等により、農業にイノベーションを起こす」としている。
2.注目トピック
農業用ドローンを利用したソリューションが拡大
農業用ドローンの規制緩和については、農林水産省も後押した結果、急速に利用は拡大している。農林水産省ではドローンによる農薬散布面積を、2022年までには100万haに拡大する目標を掲げている。また農薬散布以外にも肥料散布や播種などをドローンで行うことも目標にしている。
今後、ドローンによる農薬散布を2019年以降本格普及し、肥料散布・播種等を2020年以降の普及すると見られる。また、ドローンによるセンシングは2019年から実証試験を展開され、本格的な普及は2020年以降になると見られる。
3.将来展望
スマート農業の国内市場規模は2025年度には442億円まで拡大すると予測する。
今後は、農業データ連携基盤(WAGRI)の本格運用や、4機体制となる準天頂衛星システムが契機となり、精密農業や農業用ドローンソリューション(ドローンを利用した農薬散布サービス、圃場センシング等)が拡大するほか、販売支援ソリューションや経営支援ソリューション、農機の無人運転を実現するシステムが登場すると見られることから、市場全体を牽引すると考える。