国内キャッシュレス決済市場は2023年度には約126兆円までの拡大を予測
~モバイル決済の進展とコンタクトレス決済の拡大~
株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内キャッシュレス決済市場の調査を実施し、市場概況やサービス提供事業者の事業戦略、2023年度までの将来予測を明らかにした。
国内キャッシュレス決済市場規模推移と予測
1.市場概況
2018年度の国内キャッシュレス決済市場規模(現金以外の支払い手段での決済総額)は約82兆円に達し、2019年度は約89兆円を超える水準まで拡大すると予測する。
2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催に向けて、訪日外国人客が日本においてもキャッシュレスで商品やサービスの支払いが出来るように、決済インフラの整備が進められている。その前段階として、2019年のラグビーワールドカップに向けては、特に割賦販売法の改正に伴い、加盟店におけるクレジットカード端末のIC化による不正使用対策や、海外で普及してきているコンタクトレスEMV(クレジットカードの認証手段である非接触IC規格(NFC)の国際規格統一によるコンタクトレス決済)への対応が急速に進んでいる。
2.注目トピック
QRコード決済の普及拡大
新たな決済サービスとして、QRコード決済の導入事業者、及び利用者が急速に拡大している。国内QRコード決済市場規模は、今後は2兆円を突破する水準まで拡大するとみる。
QRコード決済は、中国で普及しているAlipayやWeChatPayの利用者を取り込むことを目的として、日本の加盟店での導入が進んできた。2018年に入り、日本国内でQRコード決済サービスを提供する事業者が急速に増加し、導入コストの低さや手数料率の低さを訴求し、導入企業の拡大に取組んでいる。また、QRコードはマーケティング施策との連携のしやすさにも特徴があり、スマートフォンアプリに組み込む形で導入されるケースも増えている。
こうしたなか、従来の決済サービス提供事業者ではなく、異業種からの参入が相次いでおり、従来では提供できないような大型キャンペーンを実施するなど、キャッシュレス決済市場に大きなインパクトを与えている。QRコード決済は、今後のキャッシュレス社会の進展に寄与することが期待されている。
3.将来展望
2023年度の国内キャッシュレス決済市場規模は、約126兆円まで拡大すると予測する。クレジットカード決済を中心にプリペイド決済やデビット決済の拡大が進むとみる。
市場が拡大する要因としては、政府主導によるキャッシュレス化の推進により決済環境の整備が進み、コンタクトレス決済全体が拡大することが挙げられる。またQRコード決済をはじめとするスマートフォン決済(モバイルコンタクトレス決済)の拡大により、利用者の利便性や利得性が向上することで利用そのものが促進されることもある。
また、今後はAPI(Application Programming Interface)の公開により、新たな決済事業者の参入を促し、利用者向けに高付加価値決済サービスが創出される可能性のあることや、IoTの進展による新たな決済サービスの機会創出が期待されるほか、無人コンビニエンスストアの普及なども想定される。
一方で、キャッシュレス決済関連の事業者においては新たな収益源として、データマーケティングの高度化への取組みが必須であると考える。今後はポイントプログラムやクーポン、さらにはMA(Marketing Automation)※やBI(Business Intelligence)などの周辺サービスと連携しながら、データを効果的に収集し、顧客データや決済履歴の利活用によるマーケティング施策やソリューションの提供など、新たなサービスによる収益源の確保が期待される。
※MA(Marketing Automation)とは、大量の見込み顧客や既存顧客を一元化し、自動的に評価し、設計したシナリオに基づいて、シナリオを自動実行させ、顧客を個別に育成することで確度の高い商談を創出するシステムやサービスをさす。