食品産業新聞社
(画像=食品産業新聞社)

9月の鶏肉需給は、月前半こそ気温が下がらずモモの動きは弱かったものの、後半にかけて徐々に秋めいた気候となったことや、量販店での鍋物提案が目立つようになったことで、週を追うごとにモモの需要が強まった。相場も需要の高まりとともに右肩上がりで上昇し、中旬には日経加重平均で670円台に突入、最終日となる30日には683円を付けた。一方で、ムネは月間通して需要が鈍ることはなく堅調だったことから、相場も360円台で推移し高値安定となった。凍結品は、輸入品のコスト高によって引き続きムネなどに代替需要がみられ、モモも各社在庫は少なく、需要期の年末に向けて確保を進めたいところだ。

9月の月間平均相場は、日経加重平均でモモが668円(前月649円)、ムネが364円(354円)となり、正肉合計で1,032円(1,003円)と引き続き千円を上回る高値で推移している。前年同月比ではモモが86円高、ムネが47円高といずれも大幅に上昇し、正肉合計では133円高となった。

〈供給見通し〉
日本食鳥協会がまとめているブロイラー生産・処理動向調査によると、10月の生体処理羽数は前年同月比0.3%減、処理重量が同0.6%減といずれも前年をわずかに下回ると予想している。北海道・東北地区は羽数0.9%減、重量1.0%減とともに減少見込みで、南九州地区も羽数0.5%減、重量1.6%減と予想している。猛暑続きによって体重が乗りにくかったことに加え、9月下旬に発生した台風14、15号では鹿児島県でブロイラーへの被害もみられた。

農畜産業振興機構の鶏肉需給予測によると、10月の国内生産量は14.6万t(前年並み)と予測し、14万tを超えてくる見通し。ただ、8~10月の3カ月平均では、13.6万tと前年同期比で1.0%減少するとしている。一方で、10月の輸入量は2.2%減の5万100tと予測。

例年10月は需要期に向けて輸入量が増加傾向となることから5万t超えを見込むが、今年は米国内での鳥インフルエンザ(HPAI)の不透明感が強いことや、前年同月にブラジル産の輸入量が多かった反動もあり、前年を下回るボリュームになる見通しだ。また、8月末時点の輸入期末在庫は前年同月比8.8%増の12.1tと2カ月連続で12万tを超えて推移しており、輸入量は絞られている一方、出回り量が芳しくないことから、今後も在庫は高水準で推移することが予想される。

〈需要見通し〉
今週に入ってから急激に気温が下がり、量販店での棚替えも進んでいる。今後は、冬にかけて鍋需要も本格化することが予想され、モモや手羽元の需要増加が期待される。ムネも加工筋向けを含め、堅調な荷動きが続くものとみられる。輸入品では「全国旅行支援」が始まることで外食需要のさらなる盛り上がりが期待される半面、節約志向の高まりによる消費マインドの低下で外食控えの動きはしばらく続くのではとの向きもある。このため、タイ産やブラジル産ともに現地価格は下げ基調にあるものの、円安進行に加え、「国内在庫も多く、いまの需要環境を考えると調達は絞らざるを得ない」(関東の卸筋)ようだ。

〈価格見通し〉
国産生鮮モモは、鍋需要の高まりに合わせて相場が上昇することが予想されることから、ここからもう一段上げてくる可能性が強い。4日には日経加重平均で691円を付けており、このままジリ高の展開となれば700円超えも想定される。10月は処理羽数・重量とも前年割れを見込むため、これも相場を下支えする要因となり、これらを勘案すると、10月は日経加重平均でモモが690円前後、ムネ375円前後、農水省市況ではモモが700円前後、ムネ380円前後と見込まれる。

〈畜産日報2022年10月7日付〉