矢野経済研究所
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物流の「デジタル化」が進み、倉庫内物流テック市場の伸長を予測

~倉庫現場の効率化・省人化が加速~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内の倉庫内物流テック市場を調査し、分野別の市場動向、参入企業の動向、将来展望を明らかにした。

バース予約/受付システムの市場規模の推移

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物流のデジタル化におけるフェーズ

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1.市場概況

社会インフラを支える物流業界は、労働集約的産業であるが故に人手不足が他業界より深刻であり、「省人化」をキーワードとした物流テックの導入に注目が集まっている。物流テックの導入には、作業効率を高め、省人化に寄与するといったメリットだけではなく、今まで紙などアナログ作業で管理していたものをデジタル化することにより、物流をデータ化できるといった側面もある。その一方で、「開発・導入コストが高い」、「システムを導入しても、社内に管理できるIT人材がいない」といった課題から、物流テックを導入する事業者は、投資力があり自社やグループ企業に専門のIT部門・人材を抱えている大手事業者に限られていた。しかしながら近年は状況が変わり、標準的なパッケージを手頃な価格で導入できるSaaS型システムの普及から中堅事業者にも導入が進みつつある。

今回は、物流テック市場において、「2024年問題(自動車運転業務の働き方改革関連法案として、2024年4月から時間外労働の規制や時間外割増賃金の引き上げが起こることにより発生する諸問題)」を見据え導入が進んでいる、トラックの入出庫を管理するバース予約/受付システム市場について取り上げる。

2021年度のバース予約/受付システムの導入拠点数ベースの市場規模は、前年度比169%の1,100拠点と推計した。2020年度はコロナ禍の影響で一時的に停滞したが、2021年度以降は物流事業に対する投資意欲の回復、「2024年問題」を意識したトラックドライバーへの負担軽減の目的から導入が大きく増えた。2021年度及び2022年度上半期は、複数拠点を展開する事業者が一拠点にバース予約システムを導入し、トラックの待機時間・待機渋滞の緩和など、運用が上手くいったことから他の拠点へ横展開を広げ、大幅に導入拠点が増える傾向があった。同市場規模は2024年度にかけて今後も伸びていくと予測するが、2024年度以降は比較的になだらかになっていくと考えらえる。

2.注目トピック

倉庫の自動化が進む中、注目を集めるWES(倉庫実行システム)

WES(Warehouse Execution System)とは、倉庫管理と倉庫制御の機能を兼ね備えた倉庫実行システムであり、在庫管理を行うWMS(Warehouse Management System)と倉庫のマテハンやロボット制御を行うWCS(Warehouse Control System)の間に位置するシステムである。WESが注目されるようになった背景には、次の2つの要因が挙げられる。

①生産性の向上を目的とした倉庫内の自動化が進んでいく中、マテハンやロボット、音声認識システムなど様々な選択肢が増えたことで、倉庫内システムにも柔軟性が求められるようになってきた。

②WMSとWCSを用いて一つ一つのマテハンやロボットの制御・管理を行っている場合、倉庫内全体の生産性管理が行えない課題がある。

これらの課題を解決するため、WESの展開が始まった。日本では独立したシステムとしてWESが確立されてから日は浅いが、外部環境の変化や技術の進歩に合わせて柔軟に物流現場を変えていくことは今後も必須である。新設拠点や大規模拠点を中心に、WESの導入は広がっていくと予測する。

3.将来展望

物流テックの導入状況から、物流のDX化に対する状況を考察すると、現在はまだ「デジタル化」を進めている段階である。具体的には、「アナログからデジタル管理への移行」、「デジタル管理による現状の可視化」が進み、「現場の効率化」に向け動き出している状況である。データから新たな付加価値を創出し、変革を起こす「物流DX」を進めていくためには、倉庫内の標準化や、中小事業者の「デジタル化」が必要である。物流のデジタル化が進んでいるのは大手・中堅事業者であり、中小事業者にはほとんど導入が進んでいない、つまり「データが取れない」状況である。大手や中堅事業者と中小事業者では、デジタル化に対するニーズも異なってくるため、いかにこの層に必要なシステム・サービスを開拓していけるかが物流テック市場の拡大に繋がり、結果的に物流DXを業界全体として進めていけるかを左右するといえる。

調査要綱

1.調査期間: 2022年6月~8月
2.調査対象: 物流システム及びサービス提供事業者
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談取材(オンライン含む)、アンケート調査、ならびに文献調査併用
<物流テック市場とは>
物流テックとは、クラウドや音声認識、AI、RFID(radio frequency identifier)など最新技術を用いた物流に関するシステム・サービス分野を指す。本調査における物流テック市場とは、その内、倉庫内に関わるソフトウェア市場、クラウド型WMS(Warehouse Management System:倉庫管理システム)、WES(Warehouse Execution System:倉庫実行システム)、バース予約/受付システム等を対象とした。その中で、倉庫内作業の効率化をシステムにより間接支援するものを「倉庫内のスマート化支援システム」、人の作業を直接補助し、支援するシステムを「倉庫内作業支援システム」と分類した。
<市場に含まれる商品・サービス>
クラウド型WMS、WES、バース予約/受付システム、作業の可視化/業務日報のデジタル化ツール、音声認識システム、AI、RFID

出典資料について

資料名2022年版 物流テック市場の動向と将来展望:倉庫内編
発刊日2022年08月30日
体裁A4 201ページ
価格(税込)165,000円 (本体価格 150,000円)

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