社員の離職を防ぐには

国内企業だけでも約380万社あるなかから、奇跡的に自社に入社してくれた社員。そんな社員の離職はどんな経営者にとってもつらい経験のはずです。なんとか社員の離職を防ぎたいと思うでしょうが、社員が離職する本当の理由をしっかり考えたことはありますか。離職を申し出る社員たちはなかなか本音を語ってくれません。本稿では、社員の離職理由の把握の仕方や、離職を防ぐマネジメントについて取り上げたいと思います。

目次

  1. 会社を選ぶ理由
  2. 問題がはっきりしているか
  3. 採用における不足の明確化
  4. 離職の大きな原因は迷い
  5. 記事のまとめ

会社を選ぶ理由

従業員が「この会社で働こう」と入社を決断した理由は、給料、福利厚生、やりがい、自己成長、環境などさまざまあるでしょうが、一言で表せば有益性です。識学では人と人の繋がりは有益性でできており、会社と人もまた有益性でつながっていると解説しています。

この有益性、目には見えません。目には見えないこそ、従業員が会社に求める有益性を見誤ってしまうと、簡単に会社と人のつながりは切れてしまうのです。

経営者によっては、給与や福利厚生を手厚くすれば人は集まるだろうと言います。もちろん間違ってはいません。

しかし、その有益性にのみ魅かれた求職者は、本当に自社に欲しい人材だったでしょうか。給与や福利厚生に魅かれてくるということは、例えばライフステージの変化によってそこに魅力を感じなくなったら簡単に退職を決意してしまうでしょう。

そこで、私はクライアントに対し、「社員へ成長機会を与えてください。そのために、必ず自社も成長し続けてください」とお伝えしています。この成長という有益性は、会社と社員がお互いに与え続けることができ、常にwin-winの関係を保つことができます。

ただ単に成長機会さえ与えていればよいという考え方ではブラック企業になってしまいます。あくまで、給与や福利厚生などは同業他社よりも少し高い水準に設定した上で、成長という有益性を武器にしてください。今後の事業戦略、それに必要な役割の明確化、入社してからのキャリアプラン、このようなものが最低限そろっていないと、社員の採用も定着も難しいでしょう。

問題がはっきりしているか

識学には「結果の完了」という、成長に必要な振り返りと改善のロジックがあります。人が成長を最速化させるためには、以下のフローを回さなくてはなりません。

1. 結果の明確化
2. 不足の明確化
3. 不足の理由と行動変化の明確化
4. 次の結果の明確化 このとき、特に重要になってくるポイントが②です。実は、これは離職問題においても活用することができるのです。 どういうことか。例えば、下記のような離職理由をそのまま放置することは、非常に危険だということです。

「仕事が大変だから」
「待遇に不満があるから」
「人間関係に疲れたから」

これらはよくある退職理由ですが、大きな落とし穴があります。というのは、これらの意味が非常に曖昧だということです。

仕事が大変、待遇に不満、人間関係に疲れたというのは、具体的にどういう意味なのでしょうか。なぜそうなっているのか、どうすれば改善が図れるのかはっきりしません。まずはこれらを明確化にしましょう。

採用における不足の明確化

ここで、省みなければならないことがあります。それは、離職した社員が本当に自社に必要な人材であったか、つまり採用活動に問題はなかったか、しっかりと人選ができているのかということです。

業界によっては本当に人材不足で、喉から手が出るほど人材が欲しいと話す経営者もいます。ただ、一度落ち着ていて考えてみて欲しいのです。あなたの会社では、下記のような採用をしていませんか。

「とにかく人が欲しいから、妥協しても採用をする」
 ↓
「妥協して獲得した人材なので仕事ができない。辞める」
 ↓
「組織の生産性が落ちる」
 ↓
「新たに採用活動をするが、良い人が集まらない」

本当は条件を満たしていないのに、その場しのぎで採用をしてしまうと、採用の失敗以上に手痛い目に遭うかもしれません。

離職の大きな原因は迷い

しっかりと欲しい人材を選んだとしても、もちろん入社後にも離職につながる不足は発生します。例えば、育成計画や業務マニュアルが整っていないということです。

離職の大きな原因は迷いです。

「何をすればよいか」
「困ったときは何を確認すればよいか」
「仕事はどのように進めればよいのか」

これらを明確にしておかなければ、社員に必ず迷いが発生します。離職が多い会社では、コミュニケーションという幻想でこの迷いを打ち消そうとしますが、それは間違いであり、大変に非効率な作業となってしまいます。

識学では新人が入社をすると、識学講師と認定されるまでただひたすらテレアポを実施します。設定される目標は、1日、1週間、1カ月のテレアポの獲得件数のみです。

私が研修部隊に所属していたときは、1日当たり2件のアポイントを獲得できていれば何をしていても咎められることはありませんでした。とはいえ、アポを獲得した後、識学講師見習いは皆同じことをします。識学を勉強するのです。

入社後は、識学講師認定試験の合格を目指し、全力でアポ取りと勉強をします。試験に合格すれば晴れて識学講師となることができます。これは入社前の採用面接のときから説明を受けていました。この説明を受けることで、私たちは目指すべきゴールを明確に理解することができ、迷いなく職務に集中できるのです。

目指すべき目標、到達する方法、日々の職務の果たし方、これらが明確になっているでしょうか。「採用したら後は現場にお任せ」では人材が定着することはありません。

記事のまとめ

本稿では離職防止について記述を致しました。簡素ですが下記にポイントをまとめました。

社員が求める有益性を理解しているか
→目に見える待遇だけに注視することは危険です。

不足の明確化ができているか
→離職の要因はさまざまです。特定しなければ策も誤ります。

採用基準が間違っていないか
→妥協した採用は逆効果になります。採用基準を明確化することが、離職防止にもつながります。

採用後の受け入れ体制の準備
→育成方法に問題があることも多々あります。コミュニケーションという言葉で誤魔化さず、独り立ちできるまでの育成計画を用意しましょう。

常に不足に対する明確化を忘れないでください。