疲れ果てる前に学びたい 中間管理職がすべきマネジメントとは

「初めて部下を持つことになったものの、部下をマネジメントするとは具体的に何をすればよいのだろうか」

このような悩みを抱え、インターネットで「部下 マネジメントとは」などと検索している中間管理職の人は多いのではないでしょうか。実は、私もかつてはそんな一人だったのです。今思えば、やりがちなマネジメントのミスを連発し、疲れ果てておりました。そこで、今回は私がかつて犯したミスを振り返りつつ、識学講師の視点から、中間管理職がすべき正しいマネジメントについて解説していきたいと思います。

目次

  1. 私が身に付けようとしていたマネジメント
  2. 時間とエネルギーを費やしたのに部下が全く育たない
  3. 失敗の理由
    1. 1on1ミーティングや同行営業
    2. 誕生日プレゼント
    3. 体を張って部下との距離を近づける
    4. 部下のタイプを見極めようとする
  4. 部下と距離感を保ち事実で管理をしよう

私が身に付けようとしていたマネジメント

私は30歳の頃に人生で初めて上司の役割を任されました。当時、生命保険会社に勤務しており、20名を超える営業職員を管理する営業課長のポジションに就いたのです。期待と不安が入り交じる思いで、中間管理職に求められる能力について独自に調べた記憶があります。

するとどうでしょう。以下の全ての能力を兼ね備えている必要があるらしいと分かりました。

・高いコミュニケーション能力
・課題解決に向けてのリーダーシップと決断力
・部下とチームの育成力
・柔軟性とバランス感覚
・危機察知能力と危機管理能力

その後に開催された管理職研修では、特に部下とのコミュニケーションが大切であると学びました。「傾聴」や「観察力」を駆使して部下の変化を見逃さず、その場に応じた声かけをすることや、「部下が目標達成に近づくように育成・管理もしっかり行いましょう」と教えられたのです。

正直なところ、「とんでもなくハイレベルな役割だな」と途方に暮れてしまった記憶があります。

時間とエネルギーを費やしたのに部下が全く育たない

結果的に、私の人生初マネジメントは迷いに迷ったものとなってしまいました。

部下の変化を見逃さないために、毎月20名以上の部下と1on1ミーティングをした上で各人に応じたアドバイスをしたり、営業に同行して契約を獲得する背中を見せたりしました。好かれようと全員の誕生日に自腹でプリザーブドフラワーと手紙をプレゼントしましたし、飲み会では体を張った芸で失笑を買ったこともありました。部下のタイプを見極めてマネジメントスタイルの甘辛を使い分け、いろいろなことにトライしたのです。

しかし、空回りするばかりでした。うっかり誕生日プレゼントを忘れたら非難轟々。「課長なんだから体を張って失笑を買われている場合ではない」と指摘する人もいれば、「そのキャラが武器だからいいと思う」と擁護する人も。部下を思って厳しいガイダンスをしたら泣かれてしまってオロオロしたこともありました。

何より、これだけ時間とエネルギーを費やしているのに部下が全く育たなかったのです。成績が悪ければ「課長がモチベーションを下げたせい」とか「同行で決めてくれなかったからだ」と言われ、自分の仕事を人任せにする部下ばかりになってしまうのでした。

失敗の理由

ずばり、私がトライした上記のマネジメントは、全て中間管理職がやりがちなミスでした。識学講師である今の私は、なぜ自分のマネジメントがうまくいかなかったかはっきりと分かります。

1on1ミーティングや同行営業

これらは、部下の経過に付き合ってしまうマネジメントスタイルで、本来部下が考え、行動しなくてはならない部分を上司が代わりにやってしまっていることにほかなりません。

そのせいで、部下が自分の仕事に対して、「責任は自分にある」と捉えなくなります。これでは、自らに足りない部分を自力で埋めていくことで果たせる成長が手に入りません。

誕生日プレゼント

これは、部下のモチベーションを外発的に与えようとするマネジメントです。しかし、人がモチベーションを感じるポイントは十人十色。私があげていたプレゼントを喜んでくれる人もいれば、「こんなことされても」と冷ややかに捉える人もいるのです。

そして、与えられることが当たり前になってくると、与えられないことがモチベーションダウンをもたらすという負のスパイラルまで発生させます。

体を張って部下との距離を近づける

上司と部下の距離感が近づき、友達のような関係になることは、一見すると雰囲気のよさが生まれると思うかもしれません。しかし、上司と部下が友達のような関係では、会社の目標に向けての指示出しや部下の成長のための管理がいいかげんなものになってしまいます。

カラオケで肩を組んでどんちゃん騒ぎをしていた上司が、翌日になって真顔で何らかの指示をしてきたとしても、部下は真剣に聞こうとはしませんよね。

部下のタイプを見極めようとする

これは、属人的で再現性の低いマネジメントスタイルの典型です。大勢の人と接してきたベテラン経営者がこのマネジメントを実施するのであれば、うまくいくかもしれません。

ただ、当時の私のように初めて部下を持つマネージャーに同じことを求めてしまうのはわけが違います。ましてや、そのセンスが低い人や苦手な人にこのマネジメントスタイルを求めると、大きなストレスを与えることになるでしょう。

部下と距離感を保ち事実で管理をしよう

中間管理職のポジションに就く人は、経営者に比べると経験や知識が不足しています。また、与えられている責任範囲も経営者に比べれば狭いはずです。

このような中間管理職に、コミュニケーション能力の高さやリーダーシップ、決断力、育成力などを求めることは現実的ではありません。つまり、そのタイミングでこれら全てを兼ね備えたリーダーを育成しようにも再現性のあるノウハウは存在していないのです。

そうなると、どんな人が中間管理職になっても必ず実施できる再現性の高いマネジメントスタイルの必要性がご理解いただけると思います。端的に表現すると「部下と距離感を保ち、事実で管理をするマネジメント」です。

ルールを淡々と守らせ、馴れ合いの飲み会には参加せずに部下との距離感を保つこと、アドバイスや同行営業ではなく、部下の責任範囲の領域は部下に任せ、不足が出たときにその不足を埋めるために考えさせる環境をつくることこそが、再現性の高い正しいマネジメントスタイルとなります。

再現性がなく、部下の成長につながらないマネジメントをついついやってしまっている中間管理職は相当数います。一方で、私が結論としてご提示した再現性の高い正しいマネジメントスタイルを実践するにしても、実際にどうすればいいのかイメージを持ちきれない人も多いでしょう。我々識学ではこのノウハウを体系的にインプットし、実際にアウトプットに変えていくまでをしっかりサポートしておりますので、ぜひご相談ください。