次世代車,xEV用,世界市場,2019年
(写真=mikolajn/Shutterstock.com)

2030年の次世代車(xEV)普及台数は2,443万台に、世界自動車新車販売台数の1/5がxEVへ

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、次世代車(xEV)世界市場の調査を実施し、市場概況、個別メーカーの事業戦略を明らかにし、2030年までの世界の自動車新車販売台数および次世代車に搭載される主要9分野別機器/コンポーネントについて予測した。

パワートレイン別世界自動車新車販売台数推移

パワートレイン別世界自動車新車販売台数推移

1.市場概況

2018年の世界自動車新車販売台数は9,599万1,000台(内燃機関車(ICE)9,172万7,000台と次世代車(xEV)426万4,000台の合計)で前年比99.2%となり、これまでの成長基調から一転した。

米中貿易摩擦、英国のEU離脱問題、中東情勢などが世界経済に影響を及ぼすなか、世界自動車新車販売台数は縮小した一方で、2018年の次世代車(xEV; HEV、PHEV、EV、FCV)の新車販売台数はに前年比36.7%増で好調に推移した。燃費規制や排ガス規制といった環境規制のほか、エネルギー政策や産業振興策といった各国の様々な施策のなか、次世代車の普及はさらに拡大するものとみる。
一方で、次世代車は内燃機関車に比べ、車両価格の高さと車両特性のバランスが最大の課題であると考える。

2.注目トピック

次世代車(xEV)普及で注目される主要機器・コンポーネント

次世代車(xEV; HEV、PHEV、EV、FCV)は従来の内燃機関車(ICE)と動力源が異なるため、車両を構成する機器やコンポーネントも当該車両に適合した仕様や性能が求められている。次世代車の主要機器やコンポーネントのうち、ここでは主機モータ、インバータ、車載用電池を取り上げる。

主機モータは、機電一体化したモータの提案がサプライヤーによって積極的に行われており、主流であった自動車メーカーの内製モータの供給不足を補う存在としてサプライヤーによる受託生産拡大が期待される。今後、EV、PHEVへの搭載で高出力、高耐久性のモータが求められるようになる一方、現在主流の2モータ式のHEVから1モータ式のEVの普及が進むことで、主機モータの数量ベースの成長率は次世代車の新車販売台数の成長率を上回ることはないとみる。

インバータは電池の直流電流(DC)を3層交流電流(AC)に変換し、走行用モータを駆動するためのキーコンポーネントである。インバータには電力変換のためのパワー半導体が実装されており、高効率・低損失化が求められている。このため、現状のSi(シリコン)からSiC(シリコンカーバイド)を使ったパワー半導体の実用化が注目されている。すでに一部の自動車メーカーで採用が始まっており、2020年以降はEVの高級車限定で搭載が進む可能性が高い。

車載用電池(リチウムイオン電池)は、主要四部材の組み合わせの最適化、ならびにモジュール、パック構造の最適化等でエネルギー密度の向上によるkWh単価の引き下げ(低価格化)が推進されており、更なる性能向上を目指した開発も進められている。

車載用電池市場は、世界的な環境規制強化の流れ、ならびに各国政府のEV普及政策等を背景とする自動車メーカー各社の電動車ラインナップ(M-HEV、HEV、PHEV、EV等)強化を受け、2020年以降も市場成長が続くとみる。しかし、マーケットの反応次第では電動車ラインナップや、ターゲット市場の見直し等が行われ、車載用電池市場の成長性に影響を与える可能性もあると考える。

3.将来展望

2030年の世界自動車新車販売台数は1億2,248万台(内燃機関車(ICE)9,805万台と次世代車(xEV)2,443万台の合計)で、このうち内燃機関車(ICE)は世界自動車新車販売台数の約80%、次世代車(xEV; HEV、PHEV、EV、FCV)は約20%を占めると予測する。

EVは電池価格や航続距離、充電インフラ整備、リサイクルの問題など課題が山積しているが、内燃機関車は希薄燃焼や気筒休止といった技術革新の余地がまだ多く残されている。こうしたなか、各国の補助金政策や税制優遇なしでは、高価な次世代車が内燃機関車に対して競争力を保つことは難しいものとみる。

このような理由から内燃機関車の新車販売台数が縮小傾向に転じ、次世代車が拡大する時期は2025~2030年頃になるものと考える。