2019年度の偏光板世界生産量は前年度比3.7%増の5.54億㎡の見込
~第1四半期には偏光板不足が懸念されたものの、第3四半期からのTVパネル減産・在庫調整により偏光板需要量は落ち込みを見込む、2020年にはTVとTVパネルの需給バランスは改善に向かう見通し~
株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、2019年下期の偏光板及び部材フィルム世界市場を調査し、製品セグメント別の動向、将来展望を明らかにした。
偏光板の世界生産量推移・予測
1.市場概況
2018年度の偏光板市場は前年度比8.8%増と稀にみる大きな成長を遂げ、偏光板世界生産量は5.35億㎡であった。そのうちLCD-TFT向け偏光板の世界生産量は5.27億㎡(同9.1%増)と全体の98.6%を占めている。急成長の背景にあるのはやはり中国TV市場向け需要量の増加で、BOE、CSOT等の中国TVパネル陣営の8.5世代のTVパネル生産拡大や、展開するTVのインチサイズが急速に大型化したことが、偏光板全体の出荷面積を引き上げた。
2019年度における偏光板全体の世界生産量は前年度比3.7%増の5.54億㎡で、そのうちLCD-TFT向け偏光板の世界生産量は5.47億㎡(同3.8%増)となる見込みである。偏光板世界市場は2019年もプラス成長が見込まれるものの、韓国のSDC(サムスンディスプレイ)、LGD(LGディスプレイ)による大幅なTVパネル生産縮小が2019年第3四半期よりスタートし、また、これまで偏光板需要を牽引してきた中国TVパネル陣営の在庫調整の影響で、偏光板世界生産量は前年度伸び率を下回る結果になる見込みである。
2.注目トピック
2019年より後発中国TVパネル陣営の「4枚TAC」離れスタート、PET系偏光板の採用拡大へ
中国TVパネル陣営の中で、PMMAやPETなど非TAC系偏光板の採用の中心はBOE、CSOTであった。一方、中国で後発のVA方式TVパネル陣営であるCEC-PandaやCHOT、HKC等は、これまで「4枚TAC」構造を主力構造として採用してきたが、2019年下期より保護側(Outer)にPETフィルムを使用した「Outer PET」系構造の偏光板の採用を本格化している。
今後、主要な偏光板メーカーは、PET系偏光板の需要が多かった韓国のSDCやLGD向けの出荷量の減少をカバーすべく、中国VA方式TVパネル陣営への「Outer PET」系偏光板販売を強化していくとみられる。
3.将来展望
2019年第3四半期からのTVパネルの減産により、第4四半期も偏光板世界生産量の大幅な増加は見込みにくいものの、中国での新規TVパネル生産ライン(Fab)の稼働状況等を考慮すると、2020年より偏光板世界生産量は徐々に回復に向かうと予測する。
なお、TV本体とTVパネルの需給バランスは2020年以降に取れ、市場は健全化される見通しである。2019年上期時点では、TVとTVパネルの需給バランスは合わず、TVパネル生産台数がTVセット販売台数を超えていた。その背景にあるのは、「中国LCD-TVパネルの生産バブル」であった。
その後、予測より早くTVパネル生産台数は2019年上期にピークを迎え、2020年以降は韓国・台湾TVパネル陣営が手がけるTVパネル生産量が縮小し、TVとTVパネルの需給バランスが取れる見込みである。