ビジネスエリートが身につける教養ウイスキーの愉しみ方
(画像=LukasGojda/stock.adobe.com)

(本記事は、橋口 孝司氏の著書『ビジネスエリートが身につける教養 ウイスキーの愉しみ方』=あさ出版、2020年12月25日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

ウイスキーの価格が高騰してきた理由

最近のウイスキーに関する話題で多いのは「オークションでマッカランが、1億円で落札された!」というようなニュースです。オークションで高値がつく絵画などのアート作品はあっても、ウイスキーがその場に並んで、ニュースになるほど高値で取引されることは、今まではあまりなかった光景です。

特に日本では、ジャパニーズウイスキーが高値で取引された話題も多く取りあげられています。日本のウイスキーはすっかり投資、投機のための商品となってしまっています。

なぜ、このような状況になっているのでしょうか。

主な理由は、日本のウイスキーが高い評価を受けている、ハイボールブームで人気が高い、原酒不足といったものです。

また、内閣府ではクールジャパン戦略を示しており、各省庁が世界へ日本を発信しています。外務省によると、日本には、着物や華道、茶道、歌舞伎、武道など、世界に誇る伝統文化が数多くあり、これらの文化は、日本という国の魅力を示す代名詞にもなっていて、精力的に広報活動を行っています。

2013年にユネスコ無形文化遺産に登録された「和食」は、日本という枠を飛び越え、今では世界でブームを巻き起こす食文化として認知されました。また、漫画、アニメ、映画、ゲーム、ライトノベルなどの多種多様な日本の作品が、ポップカルチャーとして世界に向けて紹介されるだけではなく、各国で日本のポップカルチャーの魅力を発信するさまざまなイベントが行われています。

このように日本の情報が世界各国へと配信され、ウイスキーブームと相まって、レアな貴重なウイスキーが投資、投機の対象となっているのです。

高値で取引されたウイスキー

ウイスキーの中には、通常では考えられないほど価格が高騰したウイスキーがあります。ほんの少し紹介しますが、これ以外にも国産シングルモルトウイスキーは高値で販売されています。

・軽井沢1960 シングルカスク #5627 52年熟成
2020年3月

イギリスのサザビーズのオークションで4690万円(36万3000ポンド)で落札され、日本産ウイスキーの世界新記録を作りました。なお、2017年4月には同オークションにて同商品「軽井沢1960 シングルカスク #5627」は52 年熟成で価格は1401万4000円(10万100ポンド)となり、ジャパニーズウイスキーの新記録となっていました。3年で4倍となるとはものすごいマネーゲームになったものです。

・イチローズモルト「カード」シリーズ フルセット54本
2019年8月

ボナムズ香港のオークションで、イチローズモルト「カード」シリーズ計54本が、9750万円(719万2000香港ドル)で落札されました。

イチローズモルト「カード」シリーズは、2004年に閉鎖された羽生蒸溜所(2000年に生産停止)で1985~2000年の間に蒸溜された原酒を、同蒸溜所の残存原酒を継承した株式会社ベンチャーウイスキーが2005~2014年にかけて54種のシングルモルトウイスキーとして発売したものです。発売当時の価格は、1本あたりいずれも1万円前後だったようです。

羽生蒸溜所は埼玉県羽生市の東亜酒造が1946~2004年10月まで所有していた蒸溜所(稼働は2000年まで)です。

「イチローズモルト」と名乗っていますが、2008年2月に稼働を開始した秩父蒸溜所(埼玉県秩父市)のシングルモルトウイスキーではありません。

・ザ・マッカラン 1926 60年 マイケル・ディロン氏によるデザイン
2018年11月

イギリスのクリスティーズ社のオークションで、「ザ・マッカラン 192660年 マイケル・ディロン」が1億7360万円(120万ポンド)で落札され、ウイスキーの史上最高額を記録しました。なお、「ザ・マッカラン 192660年ヴァレリオ・アダミ」は同年5月に1億2500万円で落札されました。

・ザ・マッカラン60年 ヴァレリオ・アダミ氏によるデザイン
・ザ・マッカラン60年 ピーター・ブレイク氏によるデザイン
2018年5月

ボナムス香港のワイン&ウイスキーオークションに、異なるラベルデザインが施された「ザ・マッカラン60年」2本が出品されました。このうちヴァレリオ・アダミ氏によるデザインの1本が、約1億2185万円(110万ドル)で落札され、もう1本のピーター・ブレイク氏によるデザインは約1億1235万円(101万4千ドル)で落札されました。

・サントリーシングルモルトウイスキー「山崎50年」
サントリーチーフブレンダー・福與伸二氏のサイン入り

2018年1月

香港サザビーズで行われたオークションで、2011年に発売されたサントリーシングルモルトウイスキー「山崎50年」が3250万円(30万1500ドル)で落札されました。なお、「山崎50年」は2005年に50 本、2007年に50本、2011年に150本が各100万円で販売されていました。

2020年2月、「山崎55年」は5日から募集を開始、6月30日に発売されました。

なお、価格は300万円(税抜)と5年の熟成期間が延びて200万円の値上げとなりました。

レアウイスキーブームと転売ビジネスが横行している現在、はたしてこの300万円ウイスキーはいくらに跳ね上がるのか見物でもあります。

55年以上熟成した希少な超長期熟成の山崎蒸溜所のモルト原酒の中から、1964年蒸溜のホワイトオーク樽原酒や1960年蒸溜のミズナラ樽原酒など、熟成のピークを迎えた原酒をブレンダーが厳選し、ていねいにブレンドし完成させたものは、まさに世界的にも貴重なシングルモルト・ジャパニーズウイスキーとなるでしょう。

ビジネスエリートが身につける教養 ウイスキーの愉しみ方
橋口 孝司(はしぐち・ たかし)
株式会社ホスピタリティバンク代表取締役。ホテルバーテンダーから料飲支配人、新規ホテル開業、運営などを手がけ、26年間ホテルに勤務。2008年より、株式会社ホスピタリティバンク代表取締役に就任。2015年からは「橋口孝司 燻製料理とお酒の教室」を主催。NPO法人FBO評議員・公認講師、ビア&スピリッツアドバイザー協会顧問、スピリッツナビゲーター認定講師などを務めている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

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