矢野経済研究所
(画像=琢也 栂/stock.adobe.com)

2021年の自動車アフターマーケット市場規模は20兆473億円

~新車供給停滞の中、中古車がニーズを獲得し伸長、自動車利用頻度の拡大で一部の賃貸サービスや補修部品にも追い風~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、2021年の自動車アフターマーケット市場を調査し、セグメント別の動向、参入企業動向、将来展望を明らかにした。

自動車アフターマーケット市場規模推移

矢野経済研究所
(画像=矢野経済研究所)

1.市場概況

2021年の自動車アフターマーケット市場規模は、前年比105.5%の20兆473億円と推計した。2021年調査時と比較して中古車販売市場が大きく拡大した。

自動車流通の起点となる国内新車販売は、半導体不足やサプライチェーンの混乱を受けて新車の生産および納期の遅延が深刻化したことで、引き続き減少した。新車供給が進まないことにより、中古車供給も低迷したが、自動車購入需要は在庫があり即納も可能な中古車に向かったことで、中古車の需要は増大した。

2021年の四輪車保有台数は7,866.7万台※となり、前年を僅かに下回った(※データ出所:国土交通省)。新車販売が伸びなかった一方で、法人による社有車の減車等が実施された結果、前年比減に繋がった。なお、保有車両における保有期間の長期化傾向は継続している。

新車販売台数や四輪車保有台数の減少は自動車アフターマーケットの母数となる流通量の縮小を意味するが、自動車需要そのものが減っているわけではない。新車購入が叶わなかったユーザーが中古車購入や保有車両の車検、メンテナンスを選択したケースもあるものとみる。また、カーシェアリングなどの賃貸サービスの利用に流れたユーザー層も存在する。つまり、サービスの提供体制・内容によっては収益の維持・拡大が可能であり、自動車アフターマーケットの参入事業者にとっては、ユーザーニーズの正確な把握とタイムリーなサービス提供がより重要となっている。

2.注目トピック

需給逼迫の中古車市場、価格上昇も伴い市場は拡大

新車の納期遅延から、中古車市場では高年式車を中心に流通在庫が不足した。ユーザーの車両購入需要を獲得したい国内中古車販売事業者や海外輸出事業者等による仕入競争が激化し、オートオークション(AA)における中古車価格は高騰を続けた。

こうした中、2021年の中古車小売市場規模は4兆1,215億円(小売台数は268.5万台、平均購入価格は153.5万円と推計)と推計し、2020年(2兆8,548億円)から大きく拡大した。

2022年8月時点においても新車生産体制の正常化には至っていない。新車の納車が進まず、下取車が発生しにくいことで、中古車市場における流通在庫不足は継続する。国内中古車買取・販売事業者によるユーザーからの直接買取競争や輸出事業者も交えたAAでの落札競争が激化することで、価格も高止まりで推移するとみられる。

3.将来展望

2021年は新車販売の低迷が自動車保有台数の減少にも繋がり、自動車アフターマーケットの母数となる流通量が縮小する結果となった。一方、コロナ禍において、国民のワクチン接種が進み、外出自粛が緩和されたことで、概して自動車の利用頻度は回復傾向にあるものとみる。こうした環境下では、自動車は購入による所有にこだわらず、カーシェアリングやレンタカーなど必要な時に必要な分のみ利用するサービスを求めるユーザー層も存在したとみる。つまり、2021年の自動車保有台数の減少は一時的なものである可能性があるものの、保有からサービス利用といったユーザー層の増加傾向を背景に、減少局面となった可能性も否定できないと考える。

また、今後は自動車アフターマーケットを取り巻く環境の変化についても認識しておく必要がある。2020年以降は世界的に脱炭素化の流れが加速しており、自動車業界においては車両の電動化を通じてカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出量を全体としてゼロにする)の達成に取り組む動きが活発化している。

電気自動車(BEV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)といった電動車両の国内新車販売台数は依然として低位であり、中古車としても相場の安定や流通量拡大などはまだ先であるものとみる。一方で、自動車メーカー各社も電動化に舵を切っているため、こうした電動車両に対応するための体制づくりが普及期における即応力につながるものと考える。

自動車アフターマーケットにおける事業者たちは現在、事業の多角化による収益体制の維持・強化を進めているが、今後は従来以上に市場環境の変化を捉え、顧客の求めるサービスや商品を提供することが、新規顧客の開拓や既存顧客の維持に繋がり、将来にわたる成長を左右するとみる。

調査要綱

1.調査期間: 2022年4月~7月
2.調査対象: 自動車アフターマーケット関連事業を展開する企業・団体、および管轄官庁など
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話・メール等によるヒアリング、ならびに文献調査併用
<自動車アフターマーケット市場とは>
本調査における自動車アフターマーケットとは、新車販売後に発生する様々な事業の総称であり、その対象は①中古車事業(中古車小売、中古車輸出、中古車買取、オートオークション)、②自動車賃貸事業(オートリース、レンタカー、カーシェアリング)、③自動車部品・用品事業(カー用品、補修部品、リサイクル部品(中古・リビルト))、④自動車整備事業(自動車整備、自動車整備機器)、⑤その他関連サービス事業(自動車保険、ロードサービス)の5事業とする。
なお、自動車アフターマーケット市場規模は、各種公表データ等を基にした矢野経済研究所の推計値である。
<市場に含まれる商品・サービス>
新車、中古車、中古車輸出、オートオークション、入札会、オートリース、個人向けオート リース、メンテナンスリース、ファイナンスリース、レンタカー、カーシェアリング、自動車定額制サービス、カー用品、タイヤ、アルミホイール、カーオーディオ、カーナビゲーション、ドライブレコーダー、車内アクセサリー、オイル・ケミカル用品、純正部品、優良部品、補修部品、リサイクル 部品、リユース部品、リビルト部品、自動車整備、車検整備、定期点検整備、事故整備、メンテナンスパック、自動車機械工具、自動車保険、自賠責保険、任意保険、ダイレクト損害保険、ロードサービス、ガソリン、セルフSS

出典資料について

資料名2022年版 自動車アフターマーケット総覧
発刊日2022年07月29日
体裁A4 262ページ
価格(税込)198,000円 (本体価格 180,000円)

お問い合わせ先

部署マーケティング本部 広報チーム
住所〒164-8620 東京都中野区本町2-46-2
電話番号03-5371-6912
メールアドレスpress@yano.co.jp

©2022 Yano Research Institute Ltd. All Rights Reserved.
本資料における著作権やその他本資料にかかる一切の権利は、株式会社矢野経済研究所に帰属します。
報道目的以外での引用・転載については上記広報チームまでお問い合わせください。
利用目的によっては事前に文章内容を確認させていただく場合がございます。