大手オークションハウスのクリスティーズとフィリップスの2022年上半期の結果をまとめてご紹介。「当時」と記載している金額以外は1USD=135円で計算。

目次

  1. 【フィリップス】
  2. 前年比+37%と好調
  3. 記録的なセールで売上を牽引
  4. 【クリスティーズ】
  5. プライベートセールに苦戦しつつも、全体は+18%で終了
  6. アジアからの需要が減少
  7. 2021年上半期のトップロットは?

【フィリップス】

phillips
(画像=phillips)

出典:https://www.phillips.com/

前年比+37%と好調

フィリップスは、2022年上半期の売上高が7億4,600万ドル(約1,007億1,000万円)に達し、2021年上半期の5億4,270万ドル(当時約608億円)と比較して37%の大幅増加となったと発表した。

オークションの売上高は5億9,000万ドル(約795億5,000万円)と2021年上半期に対し、30%増加。プライベートセールは1億5,600万ドル(約210億円)にのぼり、72%の増加となった。オンラインオークションとライブオークションの購入者の44%が初めての購入者で、アジアを拠点とする購入者の35%がミレニアル世代だったと伝えている。

記録的なセールで売上を牽引

1位は前澤氏が出品したバスキア

2022年上半期のトップロットは、5月18日に開催された「20th Century & Contemporary Art Evening Sale」で、8,500万ドル(当時約108億7,294万円)で落札されたジャン=ミシェル・バスキアの《Untitled (Devil)》である。これは2016年に前澤友作氏がクリスティーズから5,730万ドル(当時約62億円)で落札した作品で、今回の落札をうけてバスキア作品の歴代3位となり、またフィリップス史上最高価格を記録した。

《Untitled (Devil)》(1982)
(画像=《Untitled (Devil)》(1982))

出典:https://www.phillips.com/

以下のトップロット2位〜5位も全て同じオークションで落札され、フィリップスにとって記録的なセールとなった。

2位:イヴ・クライン《Relief Éponge bleu sans titre (RE 49)》(1961)
1,999万9,500ドル(当時約25億5,828万円)で落札

イヴクライン
(画像=イヴクライン)

出典:https://www.phillips.com/

3位:アレクサンダー・カルダー《39=50》(1959)
1,564万8,500ドル(当時約20億171万円)で落札

39=50
(画像=39=50)

出典:https://www.phillips.com

4位:草間彌生《Untitled (Nets)》(1959)
1,049万6,000ドル(当時約13億4,262万円)で落札 ※草間彌生のオークションレコードを更新

5位:パブロ・ピカソ《Figures et plante》(1932)
1,026万7,000ドル(当時約13億1,332万円)で落札

ピカソ
(画像=ピカソ)

出典:https://www.phillips.com

【クリスティーズ】

クリスティーズ
(画像=クリスティーズ)

出典:https://www.dailysabah.com/

プライベートセールに苦戦しつつも、全体は+18%で終了

クリスティーズは2022年の上半期の売上高が41億ドル(約5,535億円)に達し、2021年上半期に対して(米ドルベースで)18%増加と発表。これは2015年以来最高の業績であり、世界の名門一族であるロックフェラー家の「ロックフェラーコレクション」を過去最高の8億3,500万ドル(当時約918億円)で売却した2018年上半期をも上回る結果となった。

オークション売上高は35億ドル(約4,725億円)に上り、2021年上半期の26億5,000万ドル(当時約2,968億円)を32%上回った。プライベートセールは2021年の8億5,000万ドル(当時約952億円)から29%減少した6億ドル(約810億円)で終了。不調に見える結果ではあるが、これは過去5年間で2番目の売上であり、パンデミックを経てライブオークションへの回帰を考えれば、この減少はあまりマイナスに捉える必要はないだろう。

アジアからの需要が減少

上半期に初めてクリスティーズを利用したバイヤーは全体の30%(2021年は29%)で、その約2/3がオンラインから参入しており、うち34%がミレニアル世代だった。新規バイヤーの1位はアメリカ39%、2位がEMEA(ヨーロッパ、中東、アフリカ)33%、3位がアジア28%で、国別ではアメリカ、中国(香港)、イギリス、フランスが最も多かった。

しかし、世界のオークション売上高に占めるアジアのバイヤーの割合は22%と、過去最高を記録した2021年に比べると40%近く減少を見せた。一方、全体の44%をアメリカ大陸、34%をEMEAのバイヤーが占めていた。

2021年上半期のトップロットは?

2022年上半期に開催されたオークションで最も高額な美術品12点のうち、7点をクリスティーズが落札した。世界中で話題になったアンディ・ウォーホルの《Shot Sage Blue Marilyn》は、1億9,504万ドル(当時約253億5,520万円)で落札され、20世紀の美術品史上かつオークション史上2番目に高額な作品となった。

アンディ・ウォーホル《Shot Sage Blue Marilyn》(1964)
(画像=アンディ・ウォーホル《Shot Sage Blue Marilyn》(1964))

出典:https://news.artnet.com/

また、アン・H・バスのコレクションから、フランスの印象派の画家/彫刻家エドガー・ドガの《Petite danseuse de quatorze ans》が約4,160万ドル(当時約53億2,500万円)で落札され、この作家の記録を約15年ぶりに塗り替えた。2,700万ユーロ(当時約38億円)で落札されたスイスの彫刻家アルベルト・ジャコメッティの《Femme qui Marche》は、フランスで最も高価な作品として新記録を樹立した。

エドガー・ドガ《Petite danseuse de quatorze ans》(1881)
(画像=エドガー・ドガ《Petite danseuse de quatorze ans》(1881))

出典:https://fr.wikipedia.org/

アルベルト・ジャコメッティ《Femme qui Marche》(1932/36)
(画像=アルベルト・ジャコメッティ《Femme qui Marche》(1932/36))

出典:https://www.artprice.com/

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文:ANDART編集部

参考

https://www.phillips.com/press/release/phillips-achieves-746-million-in-spring-2022-a-recordbreaking-season-amid-global-expansion
https://www.christies.com/about-us/press-archive/details?PressReleaseID=10593&lid=1