食品産業新聞社
(画像=食品産業新聞社)

3年ぶりの行動制限のない夏休みを迎えるとあって、当初は地方需要の伸びが期待されたが、新型コロナウイルス感染の「第7波」の影響で、再び暗雲が漂っている。国は「まん延防止等重点措置」など一律の行動制限を敷く考えはないとしているが、それだけに、感染拡大で地方あるいは都市部への人出が回復するか見通し難くなっている。

カット筋の作業スケジュールを考慮すれば、盆休み前の枝肉の手当ては今週がヤマとなる。月替わりも重なって末端からの発注自体は増えているものの、様子見の部分もあり、決して活気がある状況ではない。そして、盆休み明け以降は消費も落ちるため、多少の補充買いがあっても、全般的に在庫消化の動きが強まるとみられ、とくに和牛の枝肉相場は後半に向けて一段下げと予想される。

〈供給見通し〉
農畜産業振興機構の牛肉需給予測によると、8月の成牛出荷頭数は8万6,800頭で前年同月比6.1%増としている。このうち、和牛が3万7,100頭(同4.2%増)、交雑2万100頭(同13.3%増)、乳用種が2万8,000頭(3.5%増)といずれも前年を上回る見込み。

ただ、個体識別情報から予測すると、ホル雄は6%減の1.2万頭強と少ない出荷が予想される。輸入品については、機構の需給予測によると、チルドが2万900t(10.4%減)、フローズンが3万1,700t(4.2%増)と見込んでいる。チルドは末端不振から国内在庫がかさんでおり、末端需要次第では後半にかけて在庫消化の動きがさらに強まる可能性もある。

〈需要見通し〉
今週は月替わりとなり、かつ来週後半から企業が盆休みに入ることから、和牛・交雑・ホルスともにヒレ、リブロース、サーロイン、バラ、モモなどそれぞれのパーツの発注量は増えている。

ただ、盆休み期間中の実需がどこまで伸びるかは不透明で、月替わりの当用買いの側面が強い。とくに地方のホテル・飲食店関係は、旅行・帰省の自粛や予約キャンセルなど「第7波」によるダメージを懸念する声がある半面、行動制限がないため「去年よりはマシ、郊外の焼肉店などは期待できる」(関東の卸筋)など見方がさまざまだ。

さらに、一部の問屋では、取引先の飲食店のスタッフが感染あるいは濃厚接触者となった関係でフルに店舗営業ができなくなり、発注自体が止まっているとの話も聞かれる。今後の感染次第では、都市部・地方ともにこうしたケースが増える可能性もありそうだ。

また、猛暑の影響で家庭や屋外でのBBQ需要は厳しいとの見方が強い。新型コロナ1年目の一昨年の盆休み期間中は、巣ごもり需要で流通各社が焼肉強化を図り、昨年も帰省・外出の自粛と大雨による気温低下の影響で精肉・素材回帰の動きが強まった。ただ、今年は、猛暑と節約志向の強まりで昨年度同様に厳しい販売となりそうだ。もっとも、感染を避けるため旅行やレジャーの出費を控えた分、近場の飲食店やスーパーでステーキなど高価格帯の商品を奮発するなど「メリハリ消費」も期待できる。とはいえ、盆休み明け以降は実需も一服するため、荷動きは鈍化し、荷余り感が強まるとみられる。

〈価格見通し〉
例年であれは、盆休み前の稼働日の関係で今週末から来週前半にかけて手当ての動きが入り、モノを揃えようと交雑種・ホルスは強保合の展開とみられる。ただ、和牛については上げ要因が少なく、上位等級を中心に弱含みと予想される。

さらに、盆休み明け以降は需要が冷え込むため、多少の補充買いが入ったとしても在庫消化の動きが強まり、全体的に一段下げの展開が予想される。このため、枝肉相場も後半は一段下げとなり、月間平均(東京市場)では和牛去勢A5で2,550円前後、A4で2,250円前後、A3で2,100円前後。交雑種では去勢B3が1,550円前後、B2で1,350円前後、ホルス去勢B2で1,050円前後と予想される。

〈畜産日報2022年8月3日付〉