トラブル,不動産,分割方法
(写真=ベンチャーサポート法律事務所編集部)

人が亡くなると、その亡くなった人(被相続人)が有していた財産(相続財産)は相続人に承継されます(民法第882条)。

本記事では、この相続について、誰が財産人になるのか、そして最終的にその相続財産がどのようにして相続人に帰属するのかという遺産分割の方法について整理したいと思います。

1. 相続人および相続分は法律によって定められている

1-1. 相続人となる者(民法第887条)

被相続人が亡くなった場合に誰が相続人になるか、そして、相続人が複数いる場合にその相続分がどのようなものかは、民法が定めています。

相続人になる人は以下の通りです。

 ①第1順位:被相続人の子供
 ②第2順位:被相続人に子供がいない場合には、被相続人の両親
 ③第3順位:被相続人に子供も両親もいない場合には、被相続人の兄弟姉妹

このように、第2順位から第3順位までの相続人は、先順位の相続人がいない場合に限って相続人となります。

また、被相続人に配偶者がいる場合には、配偶者はこれらの第1順位から第3順位の相続人とともに常に相続人になります(民法第890条)。

1-2. 相続分

誰が相続人になるかわかったところで、各相続人が被相続人の財産のうち、どの程度の財産を相続できるかが問題となります。

この相続分についても民法が定めています(民法第900条)。

 ①配偶者と子供が相続人の場合には、配偶者が1/2、子供が1/2の相続分
 ②配偶者と両親が相続人の場合には、配偶者が2/3、両親が1/3の相続分
 ③配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合には、配偶者が3/4、兄弟姉妹が1/4の相続分
 ④配偶者がいない場合には、それぞれ第1順位から第3順位の相続人が100%を相続
 ⑤第1順位から第3順位の相続人が複数いる場合には、その相続分を同一順位の相続人間で等分
 ⑥配偶者と子供2人が相続人の場合には、配偶者は1/2を相続し、子供はその相続分である1/2を2人で等分し、それぞれ1/4を相続
 ⑦配偶者と被相続人の兄・弟・妹が相続人の場合には、配偶者は3/4を相続し、兄・弟・妹はその相続分である1/4を3等分して、それぞれ1/12を相続

2. 遺産分割

相続人の範囲および相続分については、上記の通り民法が定めています。

こう見てくると、相続分が決まっているのだから、遺産分割についてトラブルが生じる余地はないと思われるかもしれませんが、実はそうではありません。

民法は、相続分という割合を定めているだけで、被相続人が有していた具体的な財産のうちのどの財産を誰が取得するかは、相続分からは決まらないからです。

したがって、最終的には、具体的に存在する個々の相続財産について、誰がどの財産を相続するのかを相続人間で協議等により決定して、遺産分割を行う必要があります。

この場合、例えば、相続財産がすべて金銭などの場合には、その金銭を相続分の割合で分配することが可能でしょう。

しかし、実際には、相続財産の中には現金や預金だけではなく、不動産、自動車、貴金属、骨董品などさまざまな財産が含まれています。

そこで、これらの相続財産について、具体的に誰がどの財産を取得するのかを決定する必要があります。

そして、その際に、相続人間で取得したい財産が重複したり、結果的にその価値が相続分の割合とずれてしまうことなどから不公平であるといった主張がなされ、相続トラブルに発展する可能性があるのです。

3. 遺産分割の方法

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遺産分割は、基本的に相続人間の協議によって行います(民法第906条、第907条第1項)。

その際の遺産分割の方法としては以下の3つの方法があるとされています。

 ・現物分割
 ・代償分割
 ・換価分割

具体的に見ていきましょう。

3-1. 現物分割

相続財産を現物のまま、相続人間で分けることをいいます。

例えば、土地を相続分に応じて分筆して相続人それぞれが分筆後の土地を相続する場合などがあります。

また、A土地は配偶者が相続し、B土地は長男が相続し、預金・有価証券は次男が相続する、といった形で、それぞれ相続財産の中の異なる財産を相続人が現物のまま相続する方法です。

<メリット>
現物分割は、相続財産を現物のまま相続人が承継するため、例えば、先祖代々の財産をそのまま維持したり、思い出の品をそのまま承継できるというメリットがあります。

<デメリット>
土地のように分割できる場合はいいですが、分割できない財産については、最終的に各相続人が取得する財産の価値が相続分に適合するように割り振ることは現実に困難を伴います。

また、相続人間で、相続により取得したいと考える財産が重複するなど、誰がどの財産を取得するかを巡って相続人間で争いが生じる可能性も否定できません。

3-2. 換価分割

換価分割とは、相続財産を売却して金銭に換えて(換価して)、それを相続分に応じて相続人に分割する方法です。

<メリット>
相続財産を換価して金銭に換えた上で、金銭を分配するため、相続分に忠実に従った割合で分割することが可能です。

その意味では最も公平な三分割方法といえるでしょう。

<デメリット>
相続財産を適正な価格で売却できるかという問題があります。

本来の価値よりも低い価格でしか売却できないといった可能性も否定できません。

また、被相続人が有していた財産自体は売却されてしまうため、思い出のある物や、愛着のある物を相続できないというデメリットがあります。

3-3. 代償分割

代償分割とは、相続人の一人が相続財産をそのまま相続し、その代わりに他の相続人に対して、その相続割合に応じた金銭を支払うという遺産分割の方法です。

例えば、配偶者と子供2人(長男・次男)が相続人の場合において、1,000万円相当の自宅土地・建物を長男が相続し、代わりに、長男が配偶者に対して500万円、次男に250万円の現金を支払うというような方法です。

<メリット>
実際の相続財産は現物のまま相続人の中の誰かが相続することができることになります。

また、他の相続人に対しては、その相続分に応じた金銭が支払われるため、相続人間における相続財産の価値の公平もはかることができます。

<デメリット>
代償分割の最大の問題点は、相続財産をそのまま承継する相続人が、他の相続人に対して代償となる金銭を支払わなければならないという点です。

つまり、その相続人は、他の相続人に対して支払う代償相当の現金を有している必要があるため、現実的にこの方法をとることが可能かという点が問題となり得ます。

4. 遺産分割の手続

4-1. 遺産分割協議

遺産分割は原則として相続人間の協議によって行います(民法第907条第1項)。

通常は、相続人間で協議を重ねることで、上記の遺産分割方法を複合的に活用して、具体的に誰がどの財産を取得するか、また、どの財産については売却して対価を分配するのか、どの財産については誰が取得してその代償をいくら支払うのか、といったことを決定します。

この分割方法について合意ができた場合には、遺産分割協議書を作成して、相続人が押印します。

その際、相続財産に不動産がある場合には、所有権移転登記を行うためには実印を押印した遺産分割協議書が必須となりますので、その場合に備えて実印を押印しておくことが好ましいでしょう。

4-2. 裁判による分割

遺産分割について相続人間で協議が整わないときや、そもそも協議ができない場合には、相続人は家庭裁判所に対して遺産分割の調停や審判を求めることができます。

調停は、調停委員が助言をしながら、相続人間の合意を導く制度です。
ただし、最終的には相続人間の合意によって解決する制度ですので、調停委員の助言等にもかかわらず合意にいたらない場合には調停不調で終了することになります。

これに対して審判は、最終的に裁判官が当事者の主張等に基づいて、法令に従って遺産分割方法を決定する手続となります。
その意味で、調停よりもより厳格な手続となり、判断は判決と同様の効力を持つことになります。

5. 遺産分割を巡るトラブル

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遺産分割トラブルの中心は、どの財産を誰が相続するのかの問題、および、相続する財産の価額が不公平であるといった問題といえるでしょう。

遺産分割に関しては、相続人間の協議によって解決することが原則であり、最も好ましい方法ではありますが、ただ、一方で、近しい関係にあるが故に、感情的な対立に発展することも考えられ、最悪、関係の断絶といった事態にも発展しかねません。

したがって、遺産分割協議においては、逆に冷静かつ合理的に判断することが必要です。

そのためには、あえて、客観的な第三者を関与させるということも有効といえます。

その意味で、第三者である弁護士を介入させたり、調停制度を有効に活用するというのも手かもしれません。

6. まとめ

実際、遺産分割でもめて、何年も遺産が放置されているといった事例もあります。

そのような事態は、相続財産が有効活用されないという意味でも不経済ですし、時間が経てば経つほどさらに利害関係人が増えたり、人間関係が複雑化するなどして解決が難しくなりかねません。

ですから、遺産分割については、できるだけ速やかに解決することが好ましいでしょう。

そのためにも、専門家を上手に活用したり、調停などの制度も有効に活用することが合理的と思われます。(提供:ベンチャーサポート法律事務所