皆さんは弁護士事務所にご相談されたことはございますか?
初めて弁護士事務所に訪問される方にとっては、弁護士事務所というのはとても敷居の高い存在で、もしかしたら自分の手持ちでは相談することが適わないのではないかと考える方も少なくないのかもしれません。
そこで、今回は弁護士の報酬規程がどのように定められているのかについて少しでもイメージを持っていただくための解説をさせて頂こうと思っておりますので、是非最後までお読みいただければ幸甚です。
1. 弁護士事務所の報酬規程はバラバラです
弁護士事務所に行くと、これくらいというルールがあれば分かりやすいのですが、実はそのようなシステムにはなっていません。
弁護士事務所にかかわらず、法律専門家の報酬規程は自由化ルールになってしまいましたので、同じ仕事でも少ない報酬で動いて頂ける事務所もあれば、通常よりも高額な報酬で高度なサービスを提供する事務所も存在します。
しかしながら、そうはいっても日弁連の旧報酬規程というものが全国の法律事務所の一定の基準にはなっているようです。
そこで、この旧報酬規程がどのようになっているのかについて確認をしてみることにしましょう。
1-1. 旧報酬規程の内容とは?
法律相談 | 相談料 | 5,000円~25,000円/30分 |
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訴訟事件 | 着手金 | (1)事件に係り発生する利益が300万円以下であるとき:8% (2)〃300万円~3,000万円:5%+9万円 (3)〃3,000万円~3億円:3%+69万円 (4)〃3億円~:2%+369万円 ただし、最低着手金額は10万円着手金の金額は事件によって多少変動することがあります。 |
報酬金 | (1)事件に係り発生する利益が300万円以下であるとき:16% (2)〃300万円~3,000万円:10%+18万円 (3)〃3,000万円~3億円:6%+138万円 (4)〃3億円~:4%+738万円 着手金の金額は事件によって多少変動することがあります。 |
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調停並びに示談交渉事件 | 着手金・報酬金 | 上記に準じて算出されることになります。 ただし、それぞれの金額について、2/3に減額することもできます。 なお、示談交渉から調停、示談交渉若しくは調停から訴訟その他の事件を受任するときの着手金は上記着手金の1/2となります。 この場合でも、着手金の最低額は、10万円となります。 |
日当 | 半日(往復2時間~4時間) | 3万円~5万円 |
1日(往復4時間を超える場合) | 5万円~10万円 |
弁護士事務所の旧報酬規程はこのようなルールに基づいて作成されています。
それでは、相続において問題となる場合には、どのように考えることが出来るのでしょうか?それは、争いの対象となる被相続人の財産の時価相当額を基準に考えることになります。
ただし、相続財産の中には、争いの対象となっているものと、そもそも争いの対象にはなっていないものとがあるでしょう。
この場合、すべてを基準に考えることは相当ではありませんので、争いの対象とはなっていないものについては、時価相当の3分の1まで減額して算出されることになると覚えておきましょう。
2. 法律事務所に依頼する場合の費用にはどのようなものがあるのでしょうか?
法律事務所での費用について、上図を参考に費用を考えていきたいと思います。
2-1. 相談料
まずは、上図の冒頭の「相談料」です。
多くの方にとって認識があるかもしれませんが、法律事務所は、知識労働ですので、相談に対する回答が法律サービスということになります。
ただし、法律事務所によっては、相談料を無料にしているところもありますので、確認してみるのも良いでしょう。
2-2. 着手金
着手金というのは、もしかしたら馴染みがない人もいるかもしれませんが、弁護士事務所では、実際に仕事に入るために前払い金額としての着手金をもらい受けるようになっています。
着手金の支払いのタイミングは、依頼する法律事務所ごとに確認をしてみてください。
2-3. 報酬金
事件が無事に解決した場合には、仕事の完成に対する報酬としての対価を支払わなければいけません。
これは、着手金とは別に支払うことになりますので注意が必要です。
報酬及び着手金については、事件によって発生する経済的な利益をもとに算出されることになります。
2-4. 手数料
弁護士が活動するにあたり、いくつかの書類の提出・申し立てを行うためには、所定の手数料を支払うことが求められることになります。
これは、業務ごとに定められることになります。
2-5. 日当
弁護士が法的手続きを行うために、出張を行うために必要となる支払金です。
これは、時間で定められることが多いと考えられますが、法律事務所によっては報酬の中に予め日当を含めているものもありますので、依頼する事務所の報酬規程を確認するようにしましょう。
2-6. 実費
実費は、法律事務所に依頼をしなくても誰が手続きをしても発生する費用です。
依頼を完成するまでは、実費を立て替えてもらえるところもありますが、実費については損得を考えなくても良いかと思います。
3. ケース別の弁護士費用の目安を見てみましょう
それでは、相続の起こった場合のケース別の弁護士費用がどれほど掛かるのかについて見てみましょう。
3-1. 遺言書を作成する場合
遺言書を作成する場合には、文量によりますがおよそ15万円程度でしょうか。
ただし、遺言書を作成する場合には、別途日当や実費などが発生することもありますので、実際の金額はこれよりも高額になることがほとんどです。
3-2. 遺言を執行する場合
相続財産の法律的な実現を行う場合には、およそ30万円以上はかかるとお考え下さい。
具体的な金額については、被相続人の方の財産金額をもとにして算出されますので、財産が少なければ少額になりますし、多ければそれほど高額になるということになります。
3-3. 相続放棄を行う場合
相続放棄を行う場合には、およそ10万円程度かかります。
ただし、これはあくまで相続放棄自体にかかる費用であり、その事前調査の費用が別に請求されることもあります。
よって、総合的に考えると、やはりそれなりの金額が必要ということになります。
3-4. 遺産分割協議を行う場合
遺産分割協議を行う場合には、およそ20万円以上というのが目安になります。
これも遺言の執行と同じく財産によって変動することになります。
3-5. 遺留分減殺請求を行う場合
遺留分減殺請求を行使する場合には、報酬は以下の報酬規程をご確認ください。
遺留分減殺請求は、各法定相続人が持つ最低限の相続分を侵害された場合に、この最低限の相続分を確保するための請求のことを言います。
これを余分に相続した人に対して行使することで、法定相続人は余分に相続した人の相続分を減殺して、自己の相続分を増加させることが出来ます。
経済的利益 | 着手金 | 報酬金 |
---|---|---|
300万円以下 | 0.08 | 0.16 |
300万円~3,000万円 | 5%+9万円 | 10%+18万円 |
3,000万円~3億円 | 3%+69万円 | 6%+138万円 |
3億円~ | 2%+369万円 | 4%+738万円 |
4. まとめ
さて、ここまで法律事務所の報酬規定を確認してきましたが、少しはご理解いただけましたでしょうか。
多くの法律事務所では、費用の名目を報酬や手数料などと分けていることもありますので、トータル費用を確認することを忘れないようにしてください。
また、費用だけに目を行き過ぎて、肝心の弁護士の信用に対する観察を忘れないようにご注意ください。(提供:ベンチャーサポート法律事務所)