M&Aコラム
固い握手を交わすたから抜型工業の石瀬文陽会長(左)と大創の大塚雅一社長(右) (画像=M&Aコラム)

抜型設計製造業界に大きなインパクトを与えるM&Aとなりました。この度、抜型製造のパイオニアとして業界屈指の技術力とプレゼンスをもつ株式会社たから抜型工業(富山県)は、同じく業界2位のシェアの占める大創株式会社(大阪府)と資本提携を結びました。両社は2022年7月1日、富山県内のホテルにて成約式を執り行いました。

譲渡企業、譲受け企業双方が「ワクワクする」と話すM&A

たから抜型工業は、石瀬文陽会長が1957年に創業しました。富山を中心に東北から近畿間に取引先を持ち、段ボールや紙パッケージ用の抜型に加え、電子基板用の抜型の設計製造も得意としてきました。経営は息子の和文社長に任せていたものの、近年、体調に不安も感じていたことから、企業のより良い発展を考えM&Aでの譲渡を決断されました。
会長の決断について和文社長に現在の心境をお聞きすると、「ワクワクしています」とにこやかに答えます。「昨今のDX(デジタルトランスフォーメーション)やAIの進化は、今後のものづくりの現場にさまざまな変化をもたらすでしょうが、人の手で作るものづくりも、変わらず今後の日本経済を牽引していくだろうと思っています。たから抜型工業がこれまでに培ったものを、今後は大創の力でさらに発展させていきたい」とM&A後の期待を話されました。

業界の中で手を組むことで技術の融合を図りさらなる相乗効果を目指す

たから抜型工業を譲り受けた大創は、紙器・段ボールメーカーを主な取引先として、パッケージ抜型(木型)の製造販売のほか、木型に装着する各種備品の販売も手掛ける会社です。大阪本社、愛知、千葉に工場をもち、関東、東海、関西エリアだけでなく、海外でも抜型を販売しています。1979年に父親が創業した同社を2011年に引き継いだ大塚雅一社長は、「常にお客様視点で考える」という先代からの信念を大切に守ってきました。
近年、国内の紙器・段ボール業界は大手メーカーの海外移転などによって厳しい状況にあり、工場を閉鎖するメーカーも増えているといいます。今回、業界の中で手を組むことで、技術の融合による新たな可能性に期待しています。
抜型製造のパイオニアとして高い技術力を誇るたから抜型工業を譲り受けることにたいして「大きな責任を感じている」という大塚社長。「たから抜型工業の精神と社員の皆様をしっかり守っていくことをお約束し、さらなる相乗効果をもって抜型というものの可能性を広げていきたい」と、成約式の中で今後の抱負を力強く語りました。

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(左から)たから抜型工業の石瀬和文社長、文陽会長、大創の大塚雅一社長、徹夫常務 (画像=M&Aコラム)

7月1日から「大創たから株式会社」として新たにスタートを切る

M&A後は、大創で常務を務めてきた社長の弟・徹夫氏が新たにたから抜型工業の社長に就任します。徹夫氏は今後の意気込みを「たから抜型工業の会社の色を出しながら大創と融合して発展していくように頑張っていきたい」と話されました。
成約式では大塚社長と常務より、これまで会社を牽引してきた石瀬会長に感謝の気持ちを形にした盾を、石瀬社長にはネーム入りの万年筆がプレゼントされました。
7月1日から、たから抜型工業は「大創たから株式会社」として新たなスタートを切りました。あえて「抜型」という言葉を外すことで、これまで専業だった事業領域に広がりを出していきたいとの思いを込めました。それぞれがM&A後の姿に希望を抱く、笑顔の絶えない成約式となりました。

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