セールスプロモーション,コツ,基礎知識
(写真=Rawpixel.com/Shutterstock.com)

セールスプロモーション(SP)とは、ターゲットの購買意欲を喚起する取り組みのことだ。ターゲットは「消費者」であることが多いが、流通業者や社内の営業担当者などもあり、多岐に渡る。セールスプロモーションは広告やPRと混同されやすいが、広告がその商品やサービスの魅力を知ってもらうための活動であるのに対し、セールスプロモーションは相手の購買意欲を掻き立て、購買のアクションを起こさせるための活動を指す。

近年はテレビや新聞、ラジオなどのマス広告に一切頼らず、インターネットやノベルティの配布を通じて企業から消費者へ直接アプローチするケースも増えている。ここでは、セールスプロモーションの基礎知識を確認しながら、近年話題になっている「デジタル活用」を含めたセールスプロモーションの動向について解説する。

セールスプロモーションとは

セールスプロモーションとは「販売促進のための活動」を指し、消費者の購買意欲だけでなく流通業者の販売意欲を引き出す取り組みを含めた活動の全般をいう。

広告などで喚起した関心を実際の購買に結びつけることが目的であり、企業の利益を生み出すマーケティング施策の一つとして重要なプロセスと言えるだろう。

「広告」「PR」「セールスプロモーション」の違い

セールスプロモーションを広告やPRなどを混同する人も多いが、特に広告とは目的が大きく異なることを押さえておきたい。

広告の目的が「より多くの人に魅力を伝えて認知度を上げること」であるのに対し、セールスプロモーションは広告によって認知させた上で、その先の「購入への動機づけ」を目的としている。飲料を例にすると、テレビCMが広告で、店頭での試飲販売やキャンペーンなどがセールスプロモーションにあたる。

消費者に欲しいと思わせ、さらに購入するという行動を促すためのセールスプロモーション戦略に、正解はない。時流の変化に応じて、各社がさまざまな工夫をこらしている。

ちなみにPRとは「パブリックリレーションズ(Public Relations)」のことで、セールスプロモーション活動に含まれることが多い。企業が社会と良好な関係性を築く活動を指し、双方向あるいはマルチディメンショナルであることが特徴だ、これに対して「広報」は、一方から発信するという性格が強い。

セールスプロモーション戦略の立て方と注目すべき動向

セールスプロモーションの計画のコツ

セールスプロモーションを計画する際は、まずその施策の目的(ゴール)を設定することが重要だ。ゴールは、プロセスの中で複数設定することもある。たとえば、売り場まで誘導することが第1段階、店頭で自社商品を手に取ってもらって購入に結び付けるのが第2段階、さらにはリピーターになってもらうのが第3段階など、ステップによって手法を変える必要もある。

大きな目標を達成するためには、小さな目標を段階的に用意するのがコツだ。またマーケティング戦略を検討する際に、「何をするか」よりも「何をしないか」を決めるという考え方がある。行動を取捨選択し優先順位をつけて行うと、プロジェクトを効率良く進められることが多い。

手法とツールを知る

一口にセールスプロモーションと言っても、展示会への出展や店頭サンプリング、ネットクーポン配布などさまざまな手法がある。特に近年はECサイトにおけるデータ分析や、SNSによる拡散を狙ったものなど、デジタルマーケティングを用いた手法が増えていることは間違いない。

この背景には、従来のオフライン施策では費用対効果が計測できないことのほか、一時的な売上アップしか期待できないという懸念が払拭できないことがある。最近は紙のDMにもデジタルに誘導する仕掛けがあり、QRコードからオンラインへ誘導することで開封率や顧客分析までできるようになっている。

その逆で、オンラインからオフライン(店舗やイベントなど)へと消費者を誘導する「On2Off」施策にも注目したい。また、リアル店舗やカタログ、ECサイトなど複数のチャネルを横断した一貫性のある購買体験を顧客に提供し、顧客管理を効率化してパーソナライズサービスの質を高める「オムニチャネル」という販売戦略もトピックとして取り上げられることが多いので要チェックだ。

効果測定をする

どんなプロジェクトにも言えることだが、施策を実行したら必ずその振り返りをすべきだ。セールスプロモーションによって消費者の心理がどう変化したかを知るためには、プロモーション開始以前の「事前調査」と施策実行後の「事後調査」を必ず実施し、狙ったターゲットへどれくらい訴求でき、費用対効果はどうだったのかをデータで振り返ることが重要である。

改善点が多く見つかるほど、その後のセールスプロモーション戦略の精度が高まり、より効果的な施策を実行できるようになる。効果測定の方法としては、アンケートで広告の浸透度やイメージの変化を調査する方法などが導入しやすいだろう。

これによって、たとえば「企業側が考えているイメージ戦略が世間の認知と大きくズレていた」ということが明らかになることがある。

マス広告の活用はセールスプロモーションに有効か

効果測定という側面から見れば、テレビや新聞、雑誌などのマス広告はインターネットが普及するまでは主な広告戦略であったが、効果測定がしにくいため、現在はデジタル広告に押され気味だ。

マス広告は、費用がかさむ割に費用対効果の検証において正確性に欠けるというデメリットがある。デジタル広告は、ターゲットを絞り込んだ広告配信ができ、効果測定の精度が高いというメリットがある。これを踏まえると、必ずしもセールスプロモーションにマス広告は必要ないかもしれない。

ただし、デジタル広告も万能ではなく、SNSなどを中心としたデジタルコンテンツへの依存度が低いシニア層への訴求力が弱いというデメリットがあることを覚えておこう。

セールスプロモーションの4つの手法

セールスプロモーションの主な手法を種類別に紹介しよう。

1. ダイレクトマーケティング

「日本一のマーケター」と言われている神田昌典氏が提唱したことで知られるダイレクト(レスポンス)マーケティング。その名のとおり、広告やメディアを通して企業が直接見込客に対してアプローチする手法で、その反応を計測してデータ化していくものだ。

たとえば、DMやメルマガで新商品や季節キャンペーンの案内を送付したり、ホームページに無料相談のボタンを設置したり、ハガキや折り込みチラシなどに割引券を付けるなど、直接顧客へアプローチし、その反応を計測できることから、効果を正確に測定できることがメリットだ。

また、ルートサンプリングという店舗や街頭などで試供品を配布する手法もよく使われる。事前に見込客をセグメントしておけば、最小限のコストで販促効果を上げることもできる。

そのほか、チラシなどを直接配布するポスティングする方法などもあるが、事前に配布エリアや条件を絞っておかないと、手間や人件費ばかりがかかってしまう可能性がある。

2. イベントプロモーション

イベントプロモーションとは、展示会などのイベントに出展することで販売促進を行うことを指す。見込客に実際に商品を手に取ってもらうことができるので、商品の魅力や必要性を感じさせて購買意欲を高めることができる。特に五感を刺激できる商品に向いており、音楽CDを売るためにライブイベントを行うこともイベントプロモーションと言える。

デメリットとしては、成果がイベントの来場者数に左右されることのほか、悪天候などによって想定よりも費用対効果が悪化することなどが挙げられる。

3. キャンペーンプロモーション

キャンペーンプロモーションは、期間限定のキャンペーンによって顧客の関心を引く手法だ。抽選券付きの広告や、ホームページなどで集客しエントリーをさせた上で抽選を行い、景品を提供するという手法がよく用いられる。

最大のメリットは、キャンペーンの参加に際して顧客の住所や名前、家族構成などの情報を入手しやすいことであり、これは見込客の属性分析や新規顧客の獲得に活用できる。

割引や景品の提供によって一時的に利益率が下がることがデメリットとして考えられるが、購買意欲の喚起がしやすく、また広く行われている方法だけあって、効果があることが多い。

ただし不特定多数に提供するキャンペーンの場合、特典だけを目的にキャンペーンに参加する人が多くなるため、本商品の売上に直結しないケースも多い。割引や景品の内容については、よく検討する必要がある。

4. 店頭(インストア)プロモーション

インストアプロモーションとは来店者を対象にした販促活動のことで、消費者にある程度購買意欲がある状況で購入をクロージングする手法だ。

ポスターやマネキンなどの店内ディスプレイや、店頭での割引シールの貼付、割引スタンプの押印、店員によるデモンストレーションなどがそれにあたる。低予算で実施でき、直接消費者の反応を確かめられるのがメリットだ。

実店舗を想定しがちだが、最近はECストアでもチャットやライブ配信機能を備えているところもあり、ITの普及とともにインストアの定義も変わりつつあると言えるだろう。

これからのセールスプロモーションに欠かせない「デジタル活用」

これまでセールスプロモーションというと、「店頭」「イベント」「ノベルティ」など、オフラインでの活動が基本だった。しかし近年はデジタルの活用が主流になりつつあり、前述のオムニチャネル戦略のように、ターゲットのライフスタイルにマッチするよう、既存のオフラインサービスとITを横断してアプローチする活動が目立つ。特に、ECサイトやコミュニケーションアプリと連携したポイントサービスなどの導入が活発だ。

ピンチをチャンスに変えたJTのデジタルマーケティング

「うちの商品はITとうまくマッチしない」と諦めている人がいたら、面白い例を一つ紹介したい。日本のたばこ業界をけん引してきたJTは、喫煙を助長するようなネット広告を配信できないという厳しい規制を遵守しながらも、多くのオウンドメディアを運営して「JTスモーカーズID」という会員IDの発行を促し、ポイント制度を導入した。さらに、アクセスログなどのデータを社内で効率的に共有できるよう見直すことで、顧客ロイヤルティを強化することに成功している。

JTは、オンラインだけでなく店頭や協賛イベントの喫煙所でキャンペーンを行ったり、ノベルティを配布したりするなどして、オフラインでも会員登録を促しているという。

この例で注目すべきは、会員登録には成人であることを証明するために身分証明書の提示が必要になることだ。これによって、精度の高いデータを収集できている。たばこならではのピンチをチャンスに変えたのだ。

これからのセールスプロモーションは「オフラインの実体験+オンラインの手軽さ」

他にも、LINEと連携してポイント制度を導入したり、デジタルサイネージとチラシを組み合わせたりするなど、既存のチャネルにオンラインの利便性を加え、セールスプロモーションのオリジナル化を実現している事例が目立つ。

若い世代を中心に、スマホでの手軽なショッピングにシフトしていることを踏まえれば、今後はいかに店頭で商品の魅力を体験してもらい、ネットでいつでも手軽に購入できるようにしておくかがポイントになりそうだ。

またメルマガやアプリを併用すると、新商品などの情報を定期的かつ自由に提供できるのでリピーターの獲得に有効だ。メルマガの開封率やリンクのクリック率などを測定したり、アプリで顧客管理や分析ができたりするなど、セールスプロモーションツール自体もシンプルで手軽になりつつあることにも注目したい。

セールスプロモーションで成功するための3つのポイント

セールスプロモーションで成功するためには、まずはターゲットを定め、市場調査を行い、スピード感をもって施策を実行することが重要だ。事前・事後の効果測定をきちんと行って課題の抽出と解決を繰り返し、チームメンバーで目標を常に共有していくことも欠かせない。

1. ターゲットを明確にする

・消費者向け
消費者向けセールスプロモーションには、割引やノベルティ提供、試食、サンプル配布などがある。これらは主に「価格訴求型」「体験型」「インセンティブ提供型」に大別されるが、特に「体験型」プロモーションはここ数年の消費志向の変化を捉えるものとして注目されている。年齢や性別などで細かくターゲットを設定するケースも多い。

・流通チャネル向け
これは、メーカーが卸売業者や小売店に対して、自社商品の販売活動を活性化してもらうための活動を指す。販売助成などのインセンティブを設ける場合が多いが、消費者の目には触れないことが多い。

・社内向け
社内の営業マン向けのセールスプロモーションもある。マニュアルの整備や報奨・表彰制度などを設けて、営業担当者のモチベーションアップやスキルの向上を目的として行われることが多い。

2. スピード感を失わない

セールスプロモーションを行う際は、市場調査からプロモーション実行までのスピードを落としてはならない。特に大企業は市場調査や施策の実行に時間をかけすぎる傾向があり、セールスプロモーションを実行する頃には他社に遅れを取ってしまっていることが多い。

昨今はSNSの普及などによって消費動向やトレンドサイクルがめまぐるしく変わるため、迅速に対応できるよう意識しなければならない。

3. 共有すべきゴール(目標)は数字ではない

セールスプロモーションに限らず、プロジェクトを成功に導くためには、ゴールの設定とその共有が非常に重要だ。セールスプロモーションにおける最終目標は、リードの獲得件数や売上額など数字で共有されることが多いが、実際はそのような数値目標だけでは不十分だ。

本来セールスプロモーションのゴールとして設定すべきは、「消費者にどんな気持ちで購入してもらいたいか」「どんな想いで商品を使ってもらいたいか」といった消費者の心理的側面、いわゆる「顧客インサイト」に即したものだ。

目標が数値だけの場合、プロジェクトメンバーは数字だけを追いかけることになるため、マイナスの印象を相手に与えてしまいかねない。

「イベントで1,000個完売!」を目標にするのではなく、「自社のブースに立ち寄ってくれた来場者にどんな気持ちになってほしいか」を目標にすることで、ターゲットに与える印象はまるで変わるはずだ。

目標を関係者全員で共有することで、接客対応やチーム内での役割分担も自然と考えるようになる。そうなれば、数値目標の達成は後からついてくるものであることを、あらためて実感できるだろう。

認識のズレをなくして新たな発見を促すためにも、目標と目的、進行状況は逐一掲示しておくなどして、いつでも確認できる状態にしておくことをおすすめする。

セールスプロモーションは案外シンプルである

セールスプロモーションは、工夫次第で「商品を知っているけど購入には至っていない」という潜在顧客へのアプローチを強化し、売上を伸ばすことができる。

「知っている」から「購入する」に誘導することは、簡単なことではない……と思っている人は、ぜひ一度ターゲットとなる消費者が実際に購入する現場に立ってみてほしい。

ECサイトであれば、実際に商品を知るところから購入までの流れをスマホやパソコン、タブレットなどデバイスを変えて何度も体感してみるのだ。消費者の行動を体験してみることで、課題点や売るためのヒントが見えてくるはずだ。

日頃から、自分が購入というアクションを起こしたときの心情や流れをメモしておくこともおすすめだ。自分が「クロージングされた瞬間」を客観視してみると、顧客に心から喜んでもらえる効果的なプロモーションが思い浮かぶかもしれない。

文・THE OWNER編集部