相続税,手続きの流れ
(写真=ベンチャーサポート法律事務所編集部)

遺産相続は、突然身に降りかかってきます。一般的にはなじみのない手続きが多いうえにルールや手順も細かく定められており神経を使います。
そして、最終ゴールの相続税申告・納付は期限が切られており、手際よくこなしていくことも求められます。

この記事では、故人が亡くなられてから相続税申告・納付までの一連の手続きと、円滑に進めるためのポイントについて紹介します。

<死亡時から相続税申告までの流れ>
死亡後
1週間 市区町村へ死亡届提出
取引金融機関へ連絡
2か月 相続人と相続分の確定 遺言書確認(家探し・公証役場へ問合せ等)
検認手続き
被相続人の戸籍情報入手
遺産リストの作成 故人宅の遺品探し
取引金融機関のリストアップと残高照会
(郵送物やPCメール等から追っていく)
3か月 遺産承継の判断 相続放棄または限定承認する場合は3か月以内に被相続人住所地の管轄裁判所に申述
4-9か月 遺産分割協議 ・遺言書がある場合
遺言書に基づき分割
ただし遺留分の侵害有無について要確認
・遺言書がない場合
法定相続人全員で協議
各法定相続人には法定相続分の権利あり
裁判所への調停・審判の選択肢も
10か月 相続税の申告・納付 申告期限:被相続人の死亡を知った日の翌日から10か月以内
被相続人の住所地の管轄税務署へ相続人共同で提出
(分割協議後遅滞なく) 分割財産の名義変更 不動産:相続登記が必要
金融資産:一般的には相続人全員からの委任に基づき代表者が一時的に受領

1. 財産が話にくい場合は、遺産リスト作成は大変です

生前に親子間で遺産に関しての情報共有がなされていれば別ですが、そうでなければ遺産リストを作成しなければなりません。

もし故人が懇意にしていた顧問税理士や金融機関がある場合には、遺産を把握している可能性が高いのでコンタクトをとりましょう。

ただし、遺産は生前に把握されていないケースが大部分です。初7日が終わったら、仕事を休んで1日または2日がかりで個人の居宅を徹底的に当たります(刑事ドラマの家宅捜索のイメージです)。
遺品整理業者に任せるのではなく(ネコババされてもわかりません)、面倒でも自分たちでやることをお勧めします。

探す場所はリビング・書斎・寝室などです。机の引き出し・タンス・鏡台など、さらには衣服のポケットまでしらみつぶしに探します。
仏壇・床下・天井裏に大事なものをしまっているケースも少なくありません。

リストアップすべき対象は、銀行預金通帳・保険証書・ゴルフ会員権証書・土地の権利証・賃貸契約書・金銭消費貸借契約書(借用証)などです。

最近は株や投資信託をネットで取引しているケースも多く、そうした場合は居宅に届いている郵送物(証券口座のID通知や運用報告書)などから追っていくしかありません。
ちなみに通信キャリアは、ロック解除には通常応じません

商品券・現金(外貨を含む)・ギフト券といった類も、まとめると意外と大きな金額になります。
とくにクリーンビル(米国の小切手)など換金に手間がかかるものが含まれている場合もあるので、早めに遺品整理した方が良いでしょう。

2. 遺産だけでなく借金にも注意

相続人は遺産がもらえるだけでなく、故人の借金も弁済しなければなりません。とくに故人と今まで疎遠だとしたら、余計に多額の借金が出てくる懸念が高まります。

債権者は、故人が亡くなって3か月はじっと黙っているケースが少なくありません。
その期間が過ぎると相続放棄ができない、つまり借金返済義務が相続人に移転するからです。

相続を放棄(または相続財産を上限に債務を限定承認)する場合は、故人の死亡後3か月以内に、故人の住所地を管轄する裁判所に相続放棄(または限定承認)を申述しなければなりません。

3. 遺言が無い場合は相続人全員の協議が必要

遺言がある場合は、遺言書に従って遺産分割協議書を作成します。
ただし遺言書が遺留分の侵害をしていないかの確認は必要です(例えば子ども2人がいる場合に、どちらかの子供には遺産を相続させないといった遺言内容は遺留分請求権の侵害に当たります)。

遺言書はない場合は、法定相続分を基準として相続人で財産を分割します。
ただし、不動産が遺産の大部分といったケースでは分割が容易でなく、不動産を処分せざる負えない場合も少なくありません。

その他、不動産を相続する相続人が、他の相続人に金銭を支払うという方法もあります(これを代償分割と呼びます)

4. 相続税の申告書や名義変更に添付すべき書類に注意

相続税の申告書や名義変更には、被相続人と相続人の血縁関係を証明する書類(戸籍謄本)や相続人全員の印鑑証明が必要です。

申告書や不動産の登記に関しては添付書類の有効期限が定められていませんが、銀行預金や株式などに関しては、印鑑証明書に関して有効期限を設けているケースが多いので確認が欠かせません。

5. まとめ

相続までに行うべき手続きの概要は、以上のとおりです。
添付書類の不備があると受け付けてもらえず、二度手間になってしまいます。

また自治体や金融機関によって運用ルールが異なるケースもおおいので、手続きに当たっては、役所や事前の確認をしたうえで、間違いの無いよう慎重に進めましょう。(提供:ベンチャーサポート法律事務所