”マリアージュ”。フランス語で「結婚」を意味し、ワインと料理などの組み合わせや相性の良さを表すときにも使われる言葉だ。
天王洲にある「WHAT MUSEUM」でスタートした展覧会「OKETA COLLECTION『Mariage −骨董から現代アート−』」展は、なんと「骨董」と「現代アート」の”マリアージュ”を試みた展覧会だ。
長年ファッションビジネスに携わってきたコレクターの桶田俊二・聖子夫妻。2000年頃から収集をはじめた「骨董」は、物故作家のものが多くこれ以上新しい作品は出てこないという魅力を感じ、一方で「現代アート」は、12年前に草間彌生のドキュメンタリーを見てその力強さにひかれて収集を始めたという。
両方を収集しながらも、「骨董」と「現代アート」を同時に展示するのは今回が初。「ひとつの空間に置いても意外に相性が良く、その展示の”楽しさ”を感じて欲しいと思った」といい、コレクターの邸宅で、おすすめの見方を教えてもらうかのような体験だ。
4つの展示室ごとに異なるテーマで構成された展覧会のみどころを紹介する。
▍HALL「身体」
「自分たちの目で見てかっこいいと思う作品を集めた」という展示室は、さまざまなアーティストの立体作品だけを一同に集めて展示するというチャレンジングな試み。
壁の間から作品の一部がのぞき、まるで作品を探しながら見るような遊び心のある楽しい展示室だ。
今回の展覧会のキービジュアルにもなっているVERDY(ヴェルディ)の≪VICK≫は、グラフィックアーティストのVERDYがはじめて手がけた立体作品。
鏡にうつることで「TIME」誌の表紙が完成するマンゴ・トムソンの作品 ≪Novenber 14, 2016 (The End Near)≫ の中で、VERDYの作品と ”マリアージュ” して「ぜひ一緒に写真を撮って欲しい」と桶田氏はコメントしている。
▍SPACE3「カラフル」
「ロサンゼルスのように明るく、見ると元気が出てくるような作品」を集めたという展示室。インターナショナルな作家たちの平面作品と、日本の骨董が意外に合うのではないかと考えたという、まさに”マリアージュ”の空間が「思ったイメージのとおりにできあがった」という。
この空間で特に目を引くのは、ロサンゼルスを拠点に活動するアーティスト クレイグ・クチアの≪a window as a painting as a painting is a window≫。今回の展示のためにコミッションワークを依頼したという世界初公開の作品だ。
骨董は、竹かごや陶芸などの分野で、代表的な作家・多くの人が知る作品を集めたという。桶谷寧の≪曜変天目茶碗≫は、500作品つくってひとつ完成するかどうかという非常に希少価値の高いもので、その中でも今回は非常によくできたものが展示できたという。
▍SPACE4「モノクロ」
こちらの展示室は、一転してモノクロームの空間だ。五木田智央、KAWS、そして、昨年亡くなったヴァージル・アブローと、桶田コレクションの中でも代表的なアーティストの作品が並ぶ。
アメリカのファッションデザイナーで、昨年急逝したヴァージル・アブローはアートにも才能があった一方、生涯に制作した点数はそれほど多くない。今回は、そのうちの代表的な1点も展示されている。長年ファッションビジネスに携わってきた桶田夫妻らしいコレクションのひとつだ。
また、TIDEの≪COMPO:L≫は、平面の絵画の中からネコが立体として飛び出てきたような作品で、こちらも今回が初披露だ。
▍名和晃平の作品のみを展示する、本展覧会だけの空間
最後の展示室は、名和晃平の代表作のひとつ ≪PixCell-Deer#48≫ 1作品だけのための展示室だ。本作は、桶田夫妻が「どうしても欲しくて」制作を依頼したという作品であり、「ぜひ見ていただきたい作品のひとつ」だという。
「森の中の鹿」をコンセプトに、名和の率いるSANDWITCHと協力してつくりあげたという展示室は、真っ黒な空間の中から、光りをまとった作品が浮かび上がってくるようだ。360°から見ることができるので、是非ぐるりと一周、その光の変化を楽しんで欲しい。
今回、桶田ご夫妻は、世の中がコロナ禍で暗い雰囲気になる中、「楽しい」「心地よい」展覧会をつくりたかったといい、本当に見ることが楽しい作品で満たされた空間だ。
会場ではスマートフォンで、桶田ご夫妻による音声ガイドも無料で楽しむことができる。コレクターの独自の視点と、おもてなしのような雰囲気を感じながら作品を楽しんで欲しい。
【展覧会情報】
OKETA COLLECTION「Mariage −骨董から現代アート−」展
会期:2022年4月28日(木)〜7月3日(日)
会場:WHAT MUSEUM 2階 (〒140-0002 東京都品川区東品川 2-6-10 寺田倉庫G号)
開館時間:火~日 11時~18時(最終入場17時)月曜休館(祝日の場合、翌火曜休館)
入場料:一般1,200円、大学生/専門学生 700円、高校生以下 無料
※同時開催の展覧会の観覧料を含みます
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文・写真:ANDART編集部