“コロナ倒産”2022年3月は過去最多、累計3,000件を超える
(画像=beeboys/stock.adobe.com)

新型コロナウイルスの脅威が顕在化した2020年3月以降、飲食店をはじめとする多くの企業が苦境に立たされた。日本政府の補助金などの政策は一定のセーフティーネットになったが、企業によっては十分な支援ではなかったかもしれない。結果として多くの企業は倒産し2022年3月時点でコロナ関連の破たんは3,000件を超えた。

2021年の“コロナ倒産”は1,770件

東京商エリサーチが発表した2021年度の全国企業倒産件数は、前年度比16.5%減の5,980件と1964年度(4,931件)以来57年ぶりの低水準だった。前年度を下回ったのは2年連続。新型コロナウイルスの感染拡大を受けた政府や自治体の資金繰り支援策の効果で倒産件数が抑えられた格好だ。産業別では、全10産業のうち「運輸業」を除く9産業で倒産件数が前年度を下回った。

このうち「建設業」「製造業」「卸売業」など7産業は、1992年度以降で最も少なかった。最多は「サービス業他」の1,972件(前年度比18.9%減)。負債総額は、同3.3%減の1兆1,679億7,400万円と4年連続で前年度を下回り、1973年度(9,055億7,000万円)以来48年ぶりの低さだった。同時に発表された2022年3月の倒産件数は、前年同月比6.46%減の593件、負債総額は同19.9%増の1,696億7,300万円だった。

全体を見ると2021年度の倒産件数は少なかったと言える。しかしコロナ関連の破たん件数は、1,770件と2020年度の1,155件から比べて大きく増加した。補助金で多くの企業が財務状況を持ち直したのは事実だが、それでも2020年対比1.5倍程度の企業がコロナの影響で倒産している。

2022年1月、2月も100件越え

2022年に入り「ウィズコロナ」のムードが高まってきたが、同年1月下旬に全国でまん延防止措置法が適用された。結果として人流は大きく抑制され、飲食店を中心に大きなダメージを受けることになった。その後も世間のムードは感染予防に重点が置かれる。多くの企業は苦境に立たされ、結果として1月、2月ともに“コロナ倒産”は100件を超え、2022年3月は過去最多の216件になった。

業種別では飲食関連が最多

業種別では、飲食業が最多で612件。飲食関連の苦境はニュースでも取りあげられているため、ご存じの方も多いだろう。コロナ禍で大幅に来店客が減り、デリバリーやテイクアウトのサービスを導入しても挽回しきれない事業者が多かったようだ。

次いで多かったのは、工期の大幅な見直しを迫られたことを主要因として建設業が345件、人流の抑制を主な原因としたアパレル関連の246件だった。また飲食料品卸売業が飲食店の不振に引きずられる格好で144件。旅行や海外からの入国制限の影響でインバウンドがほとんどなくなってしまった旅行業が続いた。一方でITやDXなどの人流の影響がない非接触分野は、業績を大きく伸ばした企業も多い。

倒産企業の高い借入金依存

倒産企業の借入金の依存度を見ると生存企業との明らかな違いが見えてくる。倒産企業の借入比率は、「前々期66.9%→前期 66.3%→最新期 70.5%」と非常に高い。一方、生存企業の最新期の借入比率は、29.5%と倒産企業との違いは明白だ。倒産企業の多くは「補助金で何とか生き長らえていたに過ぎない」という見方もできる。

また債務返済能力を見るインタレスト・カバレッジ・レシオを見ると倒産企業の72.4%は、返済能力が著しく低い「1」未満だった(生存企業は40.6%)。最後に債務の返済にかかる期間を見る指標である債務償還年数は生存企業が約2.5年に対して、倒産企業は約25倍と10倍の差があり、いかに倒産企業が利益を上げるのに窮していたかがわかる。

このように債務という切り口で比較すると倒産企業はなるべくしてなったとも考えられる。

倒産件数は底を打ったのか

倒産件数自体は、過去最低を記録するなど確実に減っている。しかし、中身をよく精査すると補助金で生き長らえている企業も多く存在する。今後ウィズコロナが加速し、救済策がなくなっていくとこのような補助金頼りの企業は淘汰されるだろう。

“コロナ倒産”はまだまだ増えるではないだろうか。

文・渡辺智(FP1級技能士)

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