建設業許可,資格条件
(写真=ベンチャーサポート行政書士法人編集部)

建設業界で仕事をしている方は、「500万円以上の契約をするときには建設業の許可を受けていないと罰則がある」という話を聞いたことがある方は多いと思います。

小規模な工事であれば建設業の許可がなくても請け負うことは可能ですが、上の規模を超える仕事をするときには、建設業許可を受けていないとペナルティが課せられる可能性があります。

建設業の許可を受けるためには、資格要件を満たしたうえで都道府県に対して手続きを申請する必要があり、資格取得後も毎年その許可を更新する手続きを継続的に行わなくてはなりません。

建設業許可に必要な5つの資格条件

建設業の許可を受けるためには、次の5つの資格要件を満たしている必要があります。

・①経営業務の管理責任者がいること
・②専任技術者がいること
・③財産的な基礎が安定していること
・④誠実に契約を履行すること
・⑤欠格要件に該当しないこと

以下、順番に説明させていただきます。

資格条件①:経営業務の管理責任者がいること

建設業の許可を受けるためには、会社の経営業務に従事する管理責任者を、経営幹部としておいている必要があります。

経営幹部というのは、個人事業の場合には事業主本人、法人企業の場合には取締役となっている人です。

ここでいう管理責任者については、法律上詳細な条件が設けられています。

なお、建設業には29の業種がありますが、管理責任者として指定したい人の経験は「今回許可を受けようとするもの」と「それ以外のもの」とで条件が異なります。

・許可を受けたい建設業について、5年以上経営者としての実務経験がある人
・許可を受けたい建設業以外の建設業について、7年以上経営者としての実務経験がある事
・許可を受けたい建設業について、経営業務に準ずる地位にある人で、5年以上経営者としての実務経験がある人
・許可を受けたい建設業について、経営業務に準ずる地位にある人で、7年以上経営者を補佐した経験がある人

資格条件②:専任技術者がいること

建設業の許可を受けるためには、専任技術者を雇用している必要があります。

専任技術者は、一定の資格を有しているか、実務経験を有していなくてはなりません。

資格については許可を受けたい建設業によって異なり、実務経験については10年以上の経験または指定された種類の学校を出た後に3年~5年従事した経験が必要です。

なお、社長自身が①、②の双方の資格を有している場合には、同一人物を管理責任者、専任技術者の両方に指定しても問題ありません。

資格条件③:財産的な基礎が安定していること

建設業許可申請にあたっては、ある程度安定的に事業を経営していると役所側に判断してもらう必要があります。

具体的には、直前の事業年度における決算書で、貸借対照表の純資産の部合計額が500万円以上であるか、500万円以上の金額が記載された残高証明書を取得できることが必要です。

一定時点において500万円以上のお金が手元にあったことが重要ですので、例えば損益計算書上赤字決算となっていても問題ありません。

例えば、月末に売掛金が一時的に入金されたタイミングで銀行残高証明書を取得し、その数字をもって許可申請を受けることも可能です。

資格条件④:誠実に契約を履行すること

ごく簡単にいうと、暴力団の構成員などは建設業の許可を受けることができません。

建設業の許可を受けようとする人が、脅迫や横領といった法律に反する行為をする恐れがある場合には許可申請を受けることができません。

なお、許可を受けようとする「人」とは、法人企業の場合には役員、個人事業者の場合は個人事業主本人が該当します。

資格条件⑤:欠格要件に該当しないこと

建設業許可を受けるためには、欠格要件に該当してはいけません。

欠格要件とは、例えば成年被後見人などに該当する場合や、過去に許可を取り消された経歴がある場合をいいます。

また、禁固以上の刑に処された経歴がある人や、5年以内に許可を取り消されるのを避けるために廃業した人は欠格要件に該当します。

建設業許可は定期的に更新も必要

建設業の許可は一度取得してしまえば終わりというわけではなく、定期的に更新の作業を行わなくてはなりません。

具体的には、5年ごとに更新手続きが必要になりますが、その間毎年決算届を行政庁に提出し、事業の状況に大きな変更が生じた場合には変更届も提出しなくてはなりません。

建設業の許可を更新してもらうためには、法律上決められた条件があり、それらが1つでも欠けてしまうと更新申請を受け付けてもらうことができません。

以下、許可の更新に必要な要件について基本的な内容を確認しておきましょう。

①決算届の提出

建設業の許可の有効期限は5年間ですが、その間は毎年決算届を行政庁に対して届け出ておかなければなりません。

この決算届は事業年度が終了した日の4か月以内に提出する必要があります。

法人の場合は事業年度終了から2か月以内に法人税の申告、4か月以内に決算届の提出、と覚えておくと良いですね。

②重要事項の変更時に変更届を提出すること

会社の商号や営業所の変更、資本金や役員や重要な従業員(支配人と呼びます)の選解任があったときには変更届を提出する必要があります。

特に、経営管理者や専任技術者、いわゆる令3条の使用人(各営業所の代表者など)に変更があったときには、2週間以内に変更届を提出することが義務付けられています。

③従業員を社会保険に加入させていること

法人企業であれば、すべての従業員を社会保険に加入させる義務があります。

実際には中小零細規模の企業はこのルールは守れていないところが多いというのが実情ですが、建設業を営む事業者に対しては監督官庁が厳しくチェックする傾向があることは理解しておく必要があります。

なお、ここでいう社会保険というのは健康保険・厚生年金・労災保険・雇用保険の4つのことです。

特に労災保険については建設業者にとってとても重要なものですから、毎年必ず労働保険料の申告を適切に行い、年度更新を欠かさないようにしましょう。

④常勤の経営管理責任者・専任技術者が欠けていないこと

建設業の許可を受ける際には常勤の経営管理責任者、専任技術者がいることが絶対条件ですが、更新時にもこれらの人たちは常勤の社員として企業に所属していることが求められます。

具体的には、常勤社員であれば社会保険に必ず加入しているはずですから、彼らの被保険者証の写しなどを更新時に添付しなくてはなりません。

社会保険の被保険者証には、被保険者となった日時が記載されていますから、常勤者が欠けた期間があることが発覚した場合には建設業許可の更新に影響が出る可能性があります。

建設業の許可申請は自分でできる?

建設業の許可申請は、事業主の方ご自身が自力で手続きを行うことも決して不可能ではありません。

手続きを行う都道府県や国交省のウェブサイトを見れば許可を受けるために必要な手続きの流れは説明されていますし、法律の条文を実際の事例に即して理解できる方であれば不可能なほど困難な手続きではないと思います。

ただし、許可申請はお役所を相手に行う手続きですから、手続きは平日の昼間にアポイントを取って進める必要があります。

複雑な書類作成や役所窓口との交渉は、慣れない方にとってはストレスのたまる作業であるのは間違いないでしょう。

会計ソフトなどは昔と比べてとても便利なものが増え、簡単な確定申告であれば自力でやる事業者の方も増えていますが、役所の手続きだけは何十年も変わっていないというのが実際のところです。

実際、建設業の許可申請を受けているほとんどすべての事業者が行政書士などの専門家を利用しているのには、やはりそれだけの理由があるのです。

専門家に依頼した場合の費用

建設業許可申請の専門家というと第一には行政書士ですが、彼らに申請手続きを依頼した時の費用は10万円~15万円程度が相場です(新規取得の場合)

頑張れば自力でもできる作業なんだから高い!と感じるか、この程度の費用で全部任せられるならなら安いかも…と感じるかは人それぞれだとは思いますが、建設業の

許可申請を行うのはおそらく一生に1度か2度しかないことだと思います。

スピード重視かつ確実に許可手続きをスケジュール通りに終わらせたいと感じていらっしゃる経営者の方は、専門家に任せることも検討してみても良いかもしれませんね。

まとめ

以上、建設業許可を受けるために必要な5つの資格要件について解説させていただきました。

建設業を営む方にとって、建設業許可を受けられるかどうかは死活問題となる重要な問題です。

本文で説明させていただいた5つの資格要件を満たすことができれば、法律上は問題なく許可申請を受けることができますが、実際に手続きを進める上ではさまざまなハードルがあります。

建設業の許可申請手続きを行う際には、行政書士などの専門家のアドバイスを受けることも検討してみてくださいね。(提供:ベンチャーサポート行政書士法人