2022年のCNF世界生産量は80t、出荷金額は72億円の見込
~「お試し」から具体的な用途を想定した「採用検討」へとフェーズが進む~
株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、2022年のセルロースナノファイバー(CNF)世界市場を調査し、市場動向、参入企業動向、将来展望を明らかにした。
CNFの世界市場規模予測
1.市場概況
サンプル供給分を含む2022年のセルロースナノファイバー(以下、CNF)世界生産量(ミクロン~ナノサイズのミクロフィプリルセルロース、京都プロセスの化学変性パルプを含む)は、前年比140.4%の80t、出荷金額は同134.6%の72億円に達するものと見込まれる。
2021年の後半から2022年にかけて、CNFメーカー各社の用途開発に弾みがつき始め、生産量もこれまでに比べ増加傾向にある。特に化粧品や食品、塗料などの機能性添加剤向け用途では実際の製品でCNFが採用される例も増えてきた。サンプルワーク(供給)についても実生産に近い条件で行うケースが増えてきており、CNFが初めて商業利用されてから6年が経過し、ユーザー企業(需要家)サイドではCNFを試してみるという段階を経て、分散安定性やチキソ性など新たな性能や付加価値にメリットを見出した継続採用例も増加している。
ただ、国内のCNFメーカーが保有する設備を全て合わせた生産能力は1,000t/年を超える規模であり、現状の稼働率は10%にも至っていない。CNF生産量を拡大し設備稼働率を上昇させるためには、価格や性能、ハンドリングといった点で、よりユーザー企業が使いやすいCNFを開発・提案し、採用拡大を図ることで量産化を早期に実現することが求められる。
2.注目トピック
自動車部材での採用を目指し、耐衝撃性向上に関する研究開発が進展
CNFの使用量が多い複合樹脂用途では自動車や建材などの構造材としての活用が期待されているが、中でも自動車用途においては部材の樹脂化を進める上で、安全性の観点からも耐衝撃性は必須性能となる。
ただ、CNF複合樹脂には、CNFを使用しない複合樹脂と比較して曲げ弾性率や曲げ強度はアップするのに対し、衝撃強度が低下してしまうという問題がある。これを受け、CNFメーカー及びCNF複合樹脂メーカーサイドでは、本命ともいえる自動車向け構造材での採用に向けた耐衝撃性向上への取組みが進められている。
3.将来展望
CNFの性能では軽量、高強度、低線膨張係数であることに加え、ナノサイズの繊維がネットワークを形成するというユニークな特性により、他素材には無いさまざまな性能が発揮される。これらをうまく活用することで、新製品開発の際に使用者に新たな驚きをもたらす性能や使用感の付与が可能となる。
CNFのような新しい材料を事業化する上では、既存の競合材料にはない独自の性能の訴求や新しい使い方の提案に加え、従来の枠組みにとらわれず、ユーザー企業の想定をこえた「驚き」をもたらす提案をいかに進めて行けるかが問われる。市場やユーザーの期待を超える “ワクワク感” のある提案こそが、新市場の創出と需要の拡大につながるのである。
調査要綱
1.調査期間: 2022年1月~3月 2.調査対象: セルロースナノファイバーメーカー(製紙メーカー、化学メーカー等)、研究機関 3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、ならびに文献調査併用 |
<セルロースナノファイバーとは> セルロースナノファイバー(Cellulose Nano Fiber:CNF)は、パルプあるいは木材チップに含まれるセルロース繊維をナノサイズまで解繊したもの。 植物に含まれるセルロース繊維からCNFを取り出す方法としては、①触媒や酸などでセルロース分子鎖の水素結合を緩めてからミキサーなどにかける化学的解繊法と、機械の力で微細化する機械的解繊法に大別される。また、機械的解繊法は②原料をホモジナイザーなどの機械に投入し、すりつぶすように微細化して解繊していく方法と、③セルロースを分散させた液体を高速で衝突させ、水のエネルギーと衝突の衝撃で解繊する方法(水衝突解繊法)がある。 |
<市場に含まれる商品・サービス> セルロースナノファイバー、セルロースナノファイバーを添加剤、強化材などに使用した各種製品 |
出典資料について
資料名 | 2022年版 セルロースナノファイバー市場の展望と戦略 |
発刊日 | 2022年03月30日 |
体裁 | A4 170ページ |
価格(税込) | 165,000円 (本体価格 150,000円) |
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