黒坂 岳央
黒坂 岳央(くろさか・たけお)
水菓子肥後庵代表。フルーツビジネスジャーナリスト。シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、東京で会社員を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。ビジネス雑誌やニュースサイトでビジネス記事を書いている。著書に『年収1億円超の起業家・投資家・自由業そしてサラリーマンが大切にしている習慣 “億超えマインド"で人生は劇的に変わる!』など。

長い間、ファーストクラスのCAを努めたA氏が興味深い話を語っていた。ビジネスクラスの乗客は機内でPCを使って必死に仕事する。それに対して、ファーストクラスの乗客は読書をするのだという。

なぜ、稼ぐ社長ほど本を読むのだろうか?今回はこの謎に迫りたい。

社長は歴史上の人物と対話する

読書
(画像=nito / Shutterstock.com)

稼ぐ社長ほど読書をする一番の理由、それは歴史上の人物と一方通行だが対話をすることにあると筆者は考える。

筆者がよくお世話になっているIT企業の社長がいる。彼は年収2億円を超えているお金持ちだが、彼ほどビジネスで成功を収めている人物でも悩みはあるのだという。そんな彼も悩んだときは、本を読むというのである。

彼のメインビジネスはITアプリ開発だ。思うようなサービスが作れないとき、彼はよくエジソンに自分を重ね合わせるのだという。「エジソンも白熱電球を発明できないときに、周囲の批判を気にせず明るく楽しく白熱電球の可能性に信じて取り組んでいた」ということを思い直し、自らを鼓舞し奮い立たせるのだという。彼いわく、一番の悩み相談はエジソンにしているという。

まさに歴史上の偉人と対話をすることで、ビジネスの経営課題を解決しているのだ。

そもそも社長には社長の数だけ悩みや課題があり、自分自身で解決することを求められている。だが、社長といえども自分と同じような戦場を駆け抜けた人の思考や話を聞いて、共感をしたいという欲求があるのだ。歴史上の偉人というのは、まさに自分が直面する課題を乗り越えた先輩と言うべき存在で、彼らが熱心に読書をする時間を確保する理由はこの点にある。

紙の本がネットより優れているたった一つの理由

今や、紙媒体は苦境に立たされており、新聞、書籍、雑誌は軒並み右肩下がりに市場規模の縮小が続いている。対して、ネットメディアは日々どんどん新しいサービスが立ち上げられ、市場が拡大しているのはご存知のことだろう。

時事ニュースや最先端のノウハウについて言えば、ネットは紙媒体を圧倒する。多くの人の目に触れる形になるまでのコストが紙媒体に比べて圧倒的に小さく、またSNSなどで拡散されやすい性質がある。もはや紙媒体がデジタルに勝るポイントなどないように思える。

だが、ネットが紙媒体に永遠に勝てないポイントが一つだけある。それは「没入感」だ。

紙媒体の「没入感」

紙媒体は読者の本の世界にどっぷりと浸る感覚を作り出すという点で、ネットより圧倒的に優れている。ネットで記事を読んでいても、しょっちゅう「通知」がやってくる。メールやSNS、アプリなどさまざまな通知がポンポン入ってきて、その都度読書は中断されてしまう。現代ほど集中しづらい時代は、歴史上例を見ないのではないだろうか。

だが、その点紙媒体の没入感は紙という特性上100%担保されている。どれだけページを読み進めても、通知で集中力が阻害されてしまうことがないのだ。

一流は上手に読書をする

稼ぐ社長がよく読む本は歴史が多く、その他哲学や科学などしょっちゅう情報がアップデートされない分野が多い。歴史本や伝記をネットで快適に閲覧できるWebサイトを、筆者は知らない。スマホ全盛期の現代においても、こうした分野は紙媒体の本で読むものなのである。

もちろん、稼ぐ社長もネットで情報収集はするだろう。ただし多くの人と異なるのは、彼らが「ネット情報100%」になっていない点である。意識して紙媒体の本を読む時間的、精神的余裕を確保するようにしているのだ。その理由は歴史上の人物と対話するためにあるわけだが、今の時代は紙媒体の本で集中して読書をするというのは、インテリジェンスに富む稼ぐ社長の条件と言えるのかもしれない。

文・黒坂岳央(水菓子 肥後庵 代表・フルーツビジネスジャーナリスト)