成果のあがる経営チームになるための「3つの要素」とは?
(画像=zinkevych/stock.adobe.com)

 企業が成長するためには自分たちの課題に気づき、その課題を的確に解決していくことが必要だが、なぜか前に進まず、出てくる解決策も弱いものばかりということがある。なぜだろうか?チームのメンバーの能力不足なのか、それとも環境が悪すぎるのか?実はチームの人間関係に問題があるというケースがほとんどだ。

「課題解決トラック(IDS)」とは

 私たちが課題解決のために最も効果的なやり方として提唱しているのが「課題解決トラック(IDS)」だ。課題解決モデルや方法はたくさんあるが、ほとんどは複雑すぎて時間もかかる。なかには大量の事務作業に何時間もかかるものさえあるが、そのなかで最も速くて効率的なのが「課題解決トラック(IDS)」と呼ばれるツールだ。  3つのステップで構成されている。

 1、原因を追究する(Identify)
 2、議論をする(Discuss)
 3、解決する(Solve)

 まずは課題リストを調べて、優先順位の高い課題を素早く3つ選ぼう。次に解決すべき課題の「原因は何か」を探るが、ここで注意すべきは表面的な原因ではなく、その何層か下にある「真因」を見つけ出すことである。

 次にその真因を解決するための方法について「議論」を行い、一番良い解決策を見つけることだ。そして最後に解決策をすみやかに実行に移す。解決策をしっかりとやり切ることができれば、その課題とは永遠におさらばすることができる。

課題解決を妨げる障害とは

 このように3つのステップをきちんとやり切ることができれば、課題は確実に解決できるわけだが、現実に進めようとすると大きな障害にぶつかって前に進まなくなることがしばしばだ。原因は環境のせいでもなければ、経営チームのメンバーの無能さでもない。原因は「オープン、正直、弱みを見せられる」の3つの要素が欠如しているからだ。

 企業において課題があるのはごく自然なことだ。トヨタ自動車でよく言われるのが「問題がないことこそ問題だ」だ。企業の現場では問題はあって当然であり、「問題がない」のは、問題に気づいていないか、問題を隠しているかのどちらかであり、みんなが「問題は改善チャンスであり成長のチャンス」と前向きに捉えることこそ大切だというのが同社の考え方である。

 にもかかわらず、多くの企業で問題が隠されたり、見て見ぬふりをされるのはなぜかというと、経営チームに「オープン、正直、弱みを見せられる」の3つの要素が欠けており、せっかく「課題解決トラック(IDS)」を進めようとしても、オープンで正直な議論が行われないからである。

 組織の社員が問題を報告すると上から厳しく罰せられるようでは、誰も問題など報告しなくなるし、問題が起きても隠そうとするようになる。あるいは、表面的には仲がいいように見えても、実は口にしにくい問題は避けて通るとか、誰を傷つけることを極端に恐れるような組織では本音の議論はできず、1の原因を追究するも、2の議論をするも中途半端なものになりやすい。

 日本ではチームワークと言うと、とかく「みんなが仲良くする」「和気あいあいと仕事をする」と誤解している人も多いが、本当のチームワークは、意見のぶつかり合いや前向きな議論と言う「仲の良いケンカ」を経て初めてうまれるものである。ピーター・ドラッカーが言うように「成果が何もなければ、温かな会話や感情も無意味である」がビジネスの世界である。

オープンで正直な議論ができるチームを

 課題解決のためには、口にしにくい問題も話し合わなければならないし、お互いに弱みをさらけ出して率直に話し合える信頼関係が欠かせない。

 課題解決のための議論は、力のある者が他の者を力づくで説き伏せるディベート大会ではない。ましてや自分の立場や利権を守るため場でもない。議論は、自分のためではなく、会社全体の利益のためにある。

本当の意味で良いチームというのは自分の弱みを見せることもできれば、助けを求めることもできる。この世の中に完璧な人はいない。失敗をした時や課題がある時にはここを教えて欲しい、助けてほしいとちゃんと言える人であることが大切なのだ。

 反対に経営チームが見栄っ張りで、プライドばかりが高く、保身に熱心だとオープンで正直な議論は望むべくもなく、結果的にチームは弱くなり、課題解決もできなくなってしまう。
今の企業の置かれた状況に不満があり、課題がうまく解決できないことへのいら立ちがあるなら、経営チームの間に本当の意味の信頼関係があるかを検証してみるといい。自分たちの経営チームはオープンで正直な議論ができるのか、それとも表面的には仲がいいけれども本音の議論はできないのか?

 私たちが経営チームに期待するのは「オープン、正直、弱みを見せられる」の3つである。経営チームにこの3つの要素があれば、組織も同じような性質になり、そのような組織であればたいていの課題は解決することができる。

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