世界の2大オークションハウスと言われているのが「サザビーズ」と「クリスティーズ」。どちらも18世紀にロンドンで誕生し、今でもアートマーケットを牽引する存在だ。この記事では、それぞれのオークションハウスの歴史と特徴を紹介する。

Sotheby's and Christie's
(画像=Sotheby's and Christie's)

世界最古の国際オークション会社、サザビーズ
❚ 歴史

サザビーズは世界最古の国際オークション会社。創業者サミュエル・ベイカーはロンドンの実業家で、出版を手掛けることもあった。1744年、自身の名前で初めてオークションを開催し、ジョン・スタンレー卿の蔵書数百冊を出品。その後も貴族たちの膨大な蔵書を競売にかけ、かのナポレオン・ボナパルトが流刑地セントヘレナに持ち出した書籍と皇帝の杖も取り扱った。

このようにサザビーズは当初「書籍」をメインで扱うオークションハウスだった。1778年にベイカーが他界し、オークションハウス名の由来ともなった甥ジョン・サザビーが跡を継いでから、版画、コイン、メダル、古美術品などに領域を拡大していく。

1928年、サザビーズ・ロンドンに出品されたシェイクスピアの貴重な遺品
(画像=1928年、サザビーズ・ロンドンに出品されたシェイクスピアの貴重な遺品)

引用:https://www.sothebys.com/

契機となったのは、1917年のオフィス移転。立て続けにオークションで成功を収めたサザビーズは、高級ブランド店が並ぶことで知られるメイフェアのニューボンドストリートへ本拠地を移した。そして絵画と装飾美術品の販売に重点を置くようになり、1950年代半ばには印象派とモダンアートの部門が設立される。1957年の印象派とポスト印象派コレクションが出品された際には、エリザベス女王も会場に訪れた。

1964年には、当時アメリカ最大の美術品オークション会社だったParke-Bernet社を買収。翌年には本拠地をニューヨークに移して規模を拡大した。2019年には、アートコレクターのパトリック・ドライに買収されたが、売却額は約4000億円とされる。現在では世界40カ国に計80のオフィスを構える世界最大級の美術品オークション会社となった。

❚ オークション界のパイオニア的存在

サザビーズはオークション界を率いる存在として、オークションの新しい在り方を示してきた。1950年代には、イギリスのオークションハウスとして初めてアメリカにオフィスを開設し、現在主流となっている「イブニング・セール」という形態も導入。1960年代には、複数の大陸にまたがった同時入札を可能にするため、衛星通信を利用することに。初めてアジアでもオークションを開催した。

また、1970年代、アンディ・ウォーホル、ジャスパー・ジョーンズ、ロバート・ラウシェンバーグら存命中のアーティストの作品を初めて扱ったのもサザビーズである。

Warhol and Marilyn
(画像=〈左〉1988年、ニューズウィークの表紙を飾ったアンディ・ウォーホル。同年4月から5月にかけてサザビーズで個人コレクションを公開した。 〈右〉同年、サザビーズで1,732千万ドルで落札された「オレンジ・マリリン」。当時、ウォーホルの作品としては最高額だった。)

引用:https://www.sothebys.com/

❚ 史上初!アーティスト自身が作品を出品

通常アートの売買には、ギャラリーがアーティストの新作を販売するプライマリ市場と、所有者がオークションに出品するなどして転売するセカンダリ市場がある。セカンダリ市場にはアーティストが介入しないのが常識だったが、2008年にその常識を打ち破る事件が起こった。イギリスを代表する現代アーティスト、ダミアン・ハーストが自身の作品をサザビーズに出品したのである。

「Beautiful Inside My Head Forever」と称された2日間にわたるオークションでは、牛をホルマリン漬けにした作品など244点が競売にかけられた。合計落札価格は1.1億ポンド以上にのぼり、1人の芸術家の作品落札総額として当時の最高記録を樹立した。

❚ バンクシー「シュレッダー事件」の現場

あの「シュレッダー事件」が起こったのもサザビーズ・ロンドンのオークション会場。2018年、バンクシーの《Girl with Balloon》が落札直後に自動的に裁断され、《Love is in the Bin》と改名された。

オークション会場で制作された史上初の作品として世界中で話題となり、バンクシー作品全体の価格も一気に高騰。同作は2021年に再びサザビーズのオークションに出品され、裁断前の約18倍となる約28.9億円での落札となった。これは現在のバンクシーのオークションレコードでもある。

高額の落札記録を叩き出すクリスティーズ
❚ 歴史

1766年、美術商ジェームズ・クリスティーズがロンドンでオークションを開催したところから歴史が始まる。サザビーズと同じように著名人の蔵書も扱ったが、美術品の取り扱いに関してはクリスティーズのほうが早い。1778年には、イギリス最初の首相ロバート・ウォルポールのアートコレクションをロシアのエカチェリーナ2世に売却するという大仕事を成功させた。

Christie's auction history
(画像=Christie's auction history)

引用:https://www.christies.com/

1824年、ロンドンにナショナル・ギャラリーが設立される際にも、クリスティーズから多くの作品が購入された。ニューヨークのメトロポリタン美術館は、1958年、ロンドンのマーケットに初めて参入するにあたって、クリスティーズのオークションに出品している。世界大戦の頃までは、アートオークションの主力選手はクリスティーズだった。

1973年にはロンドン証券取引所に上場。サザビーズがニューヨーク証券取引所に上場するよりも15年早かった。1998年、投資会社を運営するフランソワ・アンリ・ピノーに買収され、現代アートにより注力するようになる。

❚ 現存アーティストのオークションレコードバトル!

2022年1月現在、現存するアーティストのオークション落札価格トップ3は、全てクリスティーズに出品された作品が占めている。

1位 ジェフ・クーンズ《Rabbit》約103.8億円
2位 デイヴィッド・ホックニー《Portrait of an Artist (Pool With Two Figures)》約103億円
3位 ジェフ・クーンズ《Balloon Dog (Orange)》約59億円

一気に最高記録を跳ね上げた現在2位のホックニーの記録は、1年も経たないうちにクーンズに塗り替えられたが、その差は1億円未満。かなり際どい競り合いがクリスティーズで繰り広げられているのだ。

❚ 世界一高額なレオナルド・ダ・ヴィンチの作品

2017年、寡作なことでも知られるレオナルド・ダ・ヴィンチ作とされる絵画《サルバトール・ムンディ》がクリスティーズ出品された。ルネサンス期の作品であるにもかかわらず現代アート部門に出品されたことや、落札価格が史上最高となる約508億円にのぼったことなどから、世界中で話題に。

そもそもダ・ヴィンチの真作であるかどうかの議論に決着がついていない中、クリスティーズはプロモーション映像などを事前に仕掛け、見事高額での落札を実現させた。落札後は一度も一般公開されることなく行方不明となっており、謎を追うドキュメンタリー映画『ダ・ヴィンチは誰に微笑む』も制作されている。

Leonardo da Vinci, Salvator Mundi
(画像=Leonardo da Vinci, Salvator Mundi)

引用:https://www.tatler.com/

❚ いち早くNFTマーケットに参入

ヨーロッパとアジアを中心に10のオークション会場を持つクリスティーズだが、開催されるオークションの約半数はオンライン。テクノロジーに抵抗がない性質からか、サザビーズやフィリップスに先立ってNFTアートが出品された。

2021年3月、デジタルアーティスト・Beepleの作品が約75億円で落札され話題に。11月には最大のNFTプラットフォーム「OpenSea」と共同でNFTオークション「Christie’s x OpenSea」を開催するなど、積極的な姿勢を見せている。

本格アートの「共同保有」という選択肢

近年では、時計やジュエリーの分野で知られるフィリップスが現代アートの分野でも台頭し、第3のオークションハウスとも言われている。現代アート市場は引き続き盛り上がりを見せていくだろう。

オークションでの落札価格は、その時のトレンドや需要の大きさに左右されるところが大きい。サインや鑑定書の有無、保管状態など、細かく確認すべきところもあり、素人が本当に価値のある作品を見極めるのはなかなか困難だ。

ANDARTの共同保有作品は、専門家が資産としての将来性を考慮して選んでいる。「アートを買うことに興味はあるけれど選び方がわからない」「いきなり大金を注ぎ込んで損をするのが怖い」という人は、まずは1枠1万円から本格アートの共同保有オーナーになってみてはいかがだろうか。提示する値段を自分で決められる会員間売買の機能もあるので、投資目的で取り引きを楽しむこともできる。

さらに、各作品のオーナーの方には主要オークション結果の速報をメルマガでお届け。本メディアでも、サザビーズ、クリスティーズを含む国内外主要オークションハウスの結果を随時公開しているので、ぜひ定期的にチェックしていただきたい。

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文:ANDART編集部

参考: https://www.sothebys.com/en/
https://www.christies.com/
https://www.thecollector.com/sothebys-and-christies-a-comparison-of-the-biggest-auction-houses/