2018年度の医療用ディスポーザブル製品汎用品市場は前年度比0.9%増の2,504億円、2019年度は同1.3%増の2,537億円を予測
~高齢者人口が増加する中、リユース製品のディスポーザブル化の広がりや製品の単回使用の徹底で堅調に推移~
株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内の医療用ディスポーザブル製品汎用品市場を調査し、市場規模推移、セグメント別動向、参入企業別動向、将来展望を明らかにした。
医療用ディスポーザブル製品汎用品市場規模推移・予測
1.市場概況
汎用品のカテゴリーに入る医療用ディスポーザブル製品については、一部生産調整が実施された製品群があるため、マイナスから横這いで推移している製品があるものの、医療施設側のDPC(診療群分類包括評価)やSPD(院内物流管理システム)導入により適切な在庫管理が推進されることで、市場は堅調に推移している。2018年度の国内医療用ディスポーザブル製品汎用品市場(メーカー出荷金額ベース、全52製品)は、前年度比0.9%増の2,504億47百万円となった。
特に、針刺し事故防止、血液飛散防止、誤接続防止(閉鎖回路)などの感染防止対策製品であるSafety(安全機構付き)製品や、排液処理システムなどの各種吸引製品、ディスポーザブル化の進展が期待できる呼吸・麻酔回路、酸素マスク・カニューラ、あるいは事務方を含む医療従事者の作業効率を向上させるキット製品は、今後も採用施設数や使用量が増加する見通しである。これらの関連製品が市場を牽引することによって、医療用ディスポーザブル製品は引き続き堅調な推移が見込まれ、2019年度の医療用ディスポーザブル製品汎用品市場は同1.3%増の2,536億62百万円になると予測する。
2.注目トピック
尿失禁治療・手術デバイス(TVT・TOT・TMV、人工尿道括約筋術)動向
尿失禁は不随意に尿が漏れる状態で、ICS(International Continence Society:国際禁制学会)によると病的な尿失禁は「社会的、衛生的に問題となるような客観的な漏れを認める状態」と定義されており、健康女性にみられる軽微なものから高齢者の痴呆に伴う尿失禁まで幅広い病態を指している。
治療(Less-Invasive市場のDevice)分野では膀胱尿管逆流症治療材、手術分野では女性用の「TVT・TOT・TMV」、男性では人工尿道括約筋術デバイスがあり、近年では、社会や医療の現場において高齢者人口の増加、女性の社会進出等で尿失禁は重要な問題のひとつとして認識されつつあり、医療サイドからも積極的に尿失禁の治療を行うという姿勢も相まって患者数は確実に増加している。
また、「Uroliftシステム」等の新デバイスが普及する可能性もあるほか、Home Use(在宅向け)分野での自己導尿カテーテルや、高齢化による対象患者数の増加に加えて、一時的な留置と抜去が可能な間欠式バルーンカテーテルや潤滑性に優れた親水性コーティングのディスポ製品が市場を拡大させている。
3.将来展望
医療用ディスポーザブル製品汎用品については、日常的に使用される製品が多いため、使用頻度も高くなり、医療従事者と患者双方の安全・感染管理を踏まえた上で、ディスポ化が進んでおり、注射針やシリンジなどは早くから対応がなされてきた。しかし、ディスポ化がこれまでは進展していなかった分野もあり、呼吸器関連製品や排液を吸引して貯留する容器(バッグ)などはリユース製品の比率が依然高く、近年ディスポ化が進むことで、市場は拡大傾向にある。
高齢者人口が増加する中、リユース製品のディスポーザブル化の広がりや製品の単回使用が徹底されることにより、医療用ディスポーザブル製品汎用品市場は今後も成長する見通しである。また、国の政策として地域包括ケアシステムの構築が推進されており、家庭内における介護体制、介護施設と家庭間におけるインフラ整備、診療報酬以外の補助制度の充実などの支援体制が整えば、Home Use(在宅向け)製品の需要増が期待される。