注目のオークション情報から、​​NFTのトピックまで。先週1週間にアートマーケットを賑わせた話題を振り返ります。(1ドル=115円、1ポンド=152円で換算)

目次

  1. アート投資
  2. 注目の作品
  3. オークション
  4. NFT
  5. ギャラリー・アートフェア
  6. アーティスト

アート投資

▍「日本のアート産業に関する市場調査 2021」公開。アートの投資性資産としての価値も試算

一般社団法人 アート東京による「日本のアート産業に関する市場調査 2021」が公開された。日本の美術品市場規模は 2,186 億円となり、昨年から約 8.4%減少したものの、世界的に見ると日本のプレゼンスは上昇したと報告されている。また、今年は「資産としてのアート」のリスク・リターンについても報告。アートのカテゴリの中でも「現代アート」は2009年以降上がり調子で、売却時に購入時の金額を上回る可能性が高いことや、S&P500に対して強い正の相関を持っている様子などを伝えている。(日本のアート産業に関する市場調査)

▍現代美術への投資は、インフレに対する有効なヘッジであると報告 

アート市場のデータとメディアの大手「Artnet AG」のデータサイエンスチームの調査によると、世界経済が前例のない政治的混乱と社会的激変に見舞われる中、他の主要な資産クラスと比較して、ファインアートへの投資はインフレ圧力と市場の変動に対するヘッジとして重要である事を結論づけている。特に戦後美術と現代美術が強い収益を上げていることを明らかにし、S&P500と同程度の成長を示唆するデータを示している。また、現代美術と印象派美術は、着実に上昇傾向にあり、一方でオールドマスター絵画は、より緩やかな成長であると伝えている。(busiesswire)

注目の作品

オークションにかけられる≪Untitled≫ / ジャン=ミシェル・バスキア (1982) Image courtesy Phillips
(画像=オークションにかけられる≪Untitled≫ / ジャン=ミシェル・バスキア (1982) Image courtesy Phillips)

画像出典:https://news.artnet.com/

▍前澤友作のバスキア作品がオークションへ。80億円以上となる可能性 前澤友作は、2022年5月18日のフィリップスオークションに、ジャン=ミシェル・バスキアの絵画 ≪Untitled≫ (1982年) を出品する。2016年5月にクリスティーズから5,730万ドル(当時のレートで約62億円) で入手したもの。6年近い保有期間を経て、7,000万ドル(約81億円)以上となる可能性が示唆されている。さらに前澤は、自身のコレクション専門の美術館を近いうちにオープンし、そこで本作を展示する予定であることも明かした。(artnet news)

オークション

サザビーズのヘレナニューマンとルネマグリット≪L'empire des lumières≫(1961年)

約90億円で落札された ≪L’empire des lumières≫ / ルネ・マグリット
(画像=約90億円で落札された ≪L’empire des lumières≫ / ルネ・マグリット)

画像出典:https://news.artnet.com/

▍サザビーズがロンドンで開催した近現代美術セールスで330億円超を獲得。記録的なマグリット作品が貢献 2022年3月2日、サザビーズオークションでルネ・マグリットの絵画が5,940万ポンド (約90億円) で落札され、マグリットのオークション新記録を樹立した。予想落札価格の4,500万ポンド (約68億円) から大きな上昇を見せた。オークション全体の販売率は88%、販売総額は2億2,140万ポンド (約337億円) となり、好調な滑り出しとなった。ロンドンの春のオークションの動向からは、ロシアの動きがまだアート市場を著しく動揺させないことをこれまでのところ証明している。(artnet news)

▍ロシア系企業のフィリップス、ロンドンでの売却益全額 約8.8億円 をウクライナ赤十字社に寄贈 2022年3月3日、フィリップス社は、ロンドンで行われた「20世紀と現代美術」オークションの純益全額をウクライナ赤十字社に寄付すると発表し、580万ポンド (約8.8億円) を同団体に寄付した。フィリップスは2008年以来、モスクワの高級小売企業マーキュリーグループの所有となっており、一部のコレクターからはボイコットするよう圧力がかかる中、本決定がなされた。オークションハウスの広報担当者は「フィリップスのオーナーは制裁の対象ではなく、いかなる制裁リストにも直接的・間接的に含まれる可能性のある個人・機関とのつながりはない」と述べている。(artnet news)

▍ロシアへの金融制裁、アートマーケットへの影響は? ロシアがウクライナに侵攻して以来、アートマーケットへの影響の不安の声が聞こえ始めている。オークション大手3社は、制裁を受けた個人・企業との取引を避けることを改めて表明した。金融界がロシアへの門戸を閉ざしているため、ロシアの大富豪や億万長者たちは、ウォーホル、ロスコ、ピカソといった高額の絵画を現金に換える必要があるかもしれないという。また、国際的な作品輸送の問題が今後発生してくる可能性もある。ただし現在のところ、春のロンドンで開催中のオークションの売れ行きは好調で、アートマーケットは大きな影響を受けていない様子だ。artnet news)

▍ロビー・ウィリアムズ・コレクションのバンクシー絵画2点、合計 約11億円 で落札 英国のポップスター、ロビー・ウィリアムズの所有するバンクシーの作品3点が2022年3月2日のサザビーズ「ザ・ナウ・イブニングオークション」に出品された。3点のうち、≪Kissing Coppers≫は落札されなかったものの、残りの≪Vandalised Oils (Choppers)≫と≪Girl and Balloon≫が同オークションの最高額と3番目に高額なロットとなった。両作品は合わせて720万ポンド (約11億円) となった。(THE VALUE)

NFT

初のギャラリーでの展覧会を開催した「Beeple」ことマイク・ウィンケルマン
(画像=初のギャラリーでの展覧会を開催した「Beeple」ことマイク・ウィンケルマン)

画像出典:https://news.artnet.com/

▍≪Everydays: The First 5,000 Days≫から約1年、Beeple初のギャラリーでの展覧会 2021年に≪Everydays: The First 5,000 Days≫が6,930万ドル (約75億円) で販売され、NFTブームの火付け役となった「Beeple」ことマイク・ウィンケルマンの初個展がNYのギャラリーで開催された。オープニング・レセプションには、わずか24時間で1,100人以上の参加申し込みがあった。Beepleは「これまでギャラリーのオープニングにも行ったことがない」と述べ、伝統的なアートと全く異なる文脈からの参入である様子を見せている。(artnet news)

▍チームラボがNFT作品《Matter is Void》を発売。所有とは何かを模索する チームラボがNFT作品《Matter is Void》を発表した。NFTによって作品の唯一性は付与されず、作品自体は誰でもダウンロード可能であり、何人でも所有することができる。ただし、この作品のNFT所有者は作品内の言葉を自由に書き換えることができ、NFT所有者が言葉を書き換えると、世界中で所有されている全ての作品がその言葉に書き換わるというもの。本作品を通じ、「所有」とはなにかを模索するという。(プレスリリース)

▍日本初のNFTアートフェア「Meta Fair #01」を開催 2022年3月11日〜13日、日本初のNFTアートフェア「Meta Fair #01」が開催される。⾃⾝も出展作家として作品を展⽰する丹原健翔が声をかけ集まった20組の現役アーティストたちが、150点以上の新作をリアルとバーチャルの両空間で同時に展⽰・販売する。岡⽥裕⼦、⼩⼭泰介ら、第一線で活躍するアーティストのNFT作品が展示されるほか、会場ではNFT 作品を所有するために必要なデジタル⼝座の開設カウンターを設置するという。(Meta Fair #01)

ギャラリー・アートフェア

▍日本最大級の国際的なアートフェア「アートフェア東京」が今週開幕

2022年3月11日~13 日、日本最大級の国際的なアートフェア「アートフェア東京」が東京国際フォーラムで開催される。国内外 150 の出展者が集い、歴史的な美術品から最先端の現代アートまで、約 3,500 点のアート作品が一堂に集まる。今年は、ギャラリーの集まる「Galleries」、ジュエリーやファッションも含む多彩なアート分野が交差する「Crossing」、これからのアートシーンで注目すべき作家を個展形式で発表する「Projects」のセクションが展開される。(アートフェア東京)

▍「ARTISTS’ FAIR KYOTO 2022」が開幕。清水寺等での展覧会も 歴史ある京都を舞台に現代アートが出品される「ARTISTS’ FAIR KYOTO 2022」が2022年3月5日に開幕した。アートフェアの枠組みを超えて展覧会もあわせて開催される本イベント。今回は新たな取り組みとして、世界遺産にも指定されている清水寺が会場に加わり、西門、三重塔、経堂、成就院の4 ヵ所で、名和晃平、加藤泉らによる作品が展開される(清水寺会場は3月13日まで)ほか、飲食店、ギャラリー、デパートなどの7つのサテライト会場でも展覧会が開催される。(ARTISTS’ FAIR KYOTO 2022)

アーティスト

「ダミアン・ハースト 桜」展 会場風景 (編集部撮影)
(画像=「ダミアン・ハースト 桜」展 会場風景 (編集部撮影))

▍ダミアン・ハーストの「桜」の展覧会と、ホルマリン作品の展覧会がスタート ダミアン・ハーストの日本初の大規模個展「ダミアン・ハースト 桜」が、2022年3月2日より「国立新美術館」でスタートした。「桜」は2021年に発表されたハーストの最新シリーズだ。ANDARTでは展覧会の様子を写真とともにレポートしている。(参考記事:「ダミアン・ハーストの「桜」が待望の日本初公開。大規模個展レポート」)

また、ロンドンの「ガゴシアン  ブリタニア・ストリート・ギャラリー」では、ハーストの作品の中でも有名なホルマリンの作品に特化した初めての展覧会が2022年3月10日よりスタートする。ハーストの約30年にわたる作品の中から、初公開となる作品が多数展示される。(FAD magazine)

▍KAWSら、希少な小児疾患の治療資金を集めるためにアートを寄贈 アートディーラーのブリジット・フィンは、STXBP1障害という珍しい病気の研究資金を得るためのチャリティオークションを計画している。このイベントに、KAWS、エディ・マルティネスといった著名なアーティストらが作品を寄贈することを明らかにした。オークションは2022年9月に開催される予定。STXBP1障害は3万人に1人の割合で発症し、治療法が確立されていないの病気のひとつ。(artnet news)

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文:ANDART編集部