注目のオークション情報から、​​NFTのトピックまで。先週1週間にアートマーケットを賑わせた話題を振り返ります。(1ドル=116円で換算)

目次

  1. オークション
  2. NFT
  3. ギャラリー・アートフェア
  4. アーティスト

オークション

▍1982年のバスキア三連画がオークションへ。最低落札予想額は約35億円

≪Portrait of an Artist as a Young Derelict≫ / ジャン=ミシェル・バスキア
(画像=≪Portrait of an Artist as a Young Derelict≫ / ジャン=ミシェル・バスキア)

画像出典:https://www.barrons.com/

1982年に制作されたジャン=ミシェル・バスキアの大作 ≪Portrait of an Artist as a Young Derelict≫ が、2022年5月にニューヨークで開催されるクリスティーズの21世紀イブニングセールで競売にかけられることが発表された。三連画として構成されたこの作品は、実際には10枚の木製の扉やパネルなどのパーツが組み合わされ、祭壇画のように作られている。少なくとも20年間、同じ匿名の個人コレクションに所蔵され市場には出回らなかった作品。最低落札予想額は3,000万ドル(約34.8億円)。昨年より、バスキア作品は価格の高騰が続いている。(PENTA)

▍羽田空港で日本初のアライアンスよる保税アートオークションを開催

2022年3月30日、羽田空港で、シンワワイズホールディングスの主導にて、海外の複数オークションハウスが参画した保税オークションが開催される。保税アートオークションとは、 2020年と2021年の関税法基本通達一部改正によって、保税地域(外国貨物の積卸し、運搬、蔵置などの行為をする場所)で実施が可能となったアートオークションのことで、落札・輸入通関されるまでは税金が発生しない。2021 年 10 月に羽田空港で日本初の保税アートオークションが開催されている。今回は、国際的なオークションアライアンスの枠組みのもとで開催される初のオークション。海外の複数のオークションハウスが参画し、アンディ・ウォーホル、草間彌生らの作品のほか、NFTアートの出品も予定されている。(プレスリリース)

▍亡命中のゴッホの絵画がオークションへ。約52億円での落札見込み

≪Champs près des Alpilles≫ / フィンセント・ファン・ゴッホ
(画像=≪Champs près des Alpilles≫ / フィンセント・ファン・ゴッホ)

画像出典:https://www.artnews.com/

フィンセント・ファン・ゴッホがフランスの精神病院に収容されている間に制作した絵画≪Fields near the Alpilles≫ (1889)が、初めてオークションに出品される。2022年5月にニューヨークで開催されるクリスティーズの20世紀美術イブニングセールで競売にかけられる予定で、約4,500万ドル(約52.2億円)の値がつくと予想されている。制作以来、個人の手に渡り一度も公に展示されたことのない作品。デザイナーのイヴ・サンローランとそのパートナーのピエール・ベルジェにより所有していたこともあるという。(ARTnews)

NFT

▍約35億円での落札を期待されたサザビーズのNFTセール、急遽中止に

2022年2月23日、サザビーズは「CryptoPunks」として知られるNFT作品104種のセットのセールを実施する予定で、落札予想価格は3000万ドル(約34.8億円)だった。しかし、オークション開始予定時刻を25分も過ぎてから売却は見送られ、販売委託者はオークションハウスをあざけるミームをTwitterに投稿した。サザビーズのセールスルームの客は満員となっていたが、突然の販売見送りの連絡に唖然として帰宅していったという。取引がどのように決裂した経緯については明かされていないが、オークションの取り下げは通常、法的な懸念や予想された価格が達成されない恐れがある場合などに起こる。(The New York Times)

▍OpenSeaでハッカーにより約2億円分のNFTが盗まれる

2022年2月19日、多くのOpenSeaユーザーのアカウントがハッキングされた。最終的にトークンを失ったユーザーは17人で、合計で170万ドル(約2億円)の価値のあるNFTが盗まれたものと想定されている。正規の電子メールを装い、悪意のあるリンクを広めるフィッシング攻撃によるもの。OpenSeaは現在、スマートコントラクトシステムを更新中であり、ハッカーはこの状況を利用したものと考えられている。OpenSeaが被害者に何らかの補償をするか、ハッカーに対して法的手段を求めるかはまだわかっていない。(artnet news)

ギャラリー・アートフェア

▍成長を続ける現代アートのプリント市場

美術品のオークション取引量が過去最高を記録しているが、そうした中でも特に版画(プリント)作品の市場は成長を続けており、143,000点以上のロット販売による年間総売上高は5億2,900万ドル(約614億円)と異例の高水準となっていることをArtpriceが伝えている。これは、美術品市場で最も手頃な価格の媒体としては新記録であり、2020年に他の伝統的な媒体が縮小を記録した中でも販売量が増加しているという。

こうしたなか、2021年の版画の作品別落札価格のランキングを見ると、歴史的な作品よりも現代アートの作品が高額で取引されていることが分かる。上位3作は以下の通り。 (Artprice)

 1位:≪Girl with Balloon≫ / バンクシー (2003), 約280万ドル (約3.2億円)

 2位:≪Flowers≫ / アンディ・ウォーホル (1970), 約260万ドル (約3.0億円)

 3位:≪Séries 347≫ / パブロ・ピカソ (1968), 約219万ドル (約2.5億円)

▍フランスのキュレーター ニコラ・ブリオーがアートを展示・販売する新たなプラットフォームを立ち上げ

パリのパレ・ド・トーキョーを共同設立したフランスの作家・キュレーターのニコラ・ブリオーが、ヴェネチア・ビエンナーレ期間中に新しい巡回展示・販売のためのプラットフォームを立ち上げる。「Radicants」と名付けられたこのプラットフォームは、約30人のキュレーターと協力して、展示・販売、ツアー展示、財団や美術館とのコラボレーション、書籍出版など、幅広いプロジェクトを企画・制作するという。特に、美術館専属ではないインディペンデント・キュレーターたちを支援することを考え、リソース不足で通常実現できないようなプロジェクトを実現することに重点を置くという。(artnet news)

アーティスト

▍Netflixのドキュメンタリー「アンディ・ウォーホル・ダイアリー」、AIで再現したウォーホルの声が日記を読み上げる

Netflixのドキュメンタリー「アンディ・ウォーホル・ダイアリー」のキービジュアル
(画像=Netflixのドキュメンタリー「アンディ・ウォーホル・ダイアリー」のキービジュアル)

画像出典:https://www.netflix.com/

Netflixは、アンディ・ウォーホルの死後に出版された日記をもとにしたドキュメンタリー作品の公式トレーラーを公開した。このシリーズの予告編では、AI技術を活用してウォーホルの声を再現し、日記のナレーションを行う様子が紹介されている。俳優のビル・アーウィンが録音したセリフをもとに、ウォーホルのピッツバーグ訛りを取り入れた音声合成アルゴリズムと融合させ、驚くほどリアルに模倣しているという。偉大な人物でありながら、私生活では非常に秘密主義だったウォーホルの生涯をを、彼自身の言葉と、周囲の人々を通して明らかにしていく作品になるようだ。(HYPEBEAST)

▍サンフランシスコで”没入型”のピカソ展を開催

「Imagine Picasso」展の様子
(画像=「Imagine Picasso」展の様子)

画像出典:https://news.artnet.com/

ゴッホやミュシャなど、海外で流行する”没入型”の展覧会だが、サンフランシスコでは新たに没入型のピカソ展「Imagine Picasso」が開催される。ピカソの200以上の作品の画像を組み込んでいるという。制作チームは、「ピカソの遺族と直接仕事をした」と言い、ピカソの孫であるオリヴィエ・ウィドマイヤー・ピカソは、「この展覧会は祖父を喜ばせたと思う、彼は何よりも自由の人だったのだから」とコメントしているという。ただ、artnet newsは本展を「反戦の傑作 ≪ゲルニカ≫ を単なるInstagramの背景に変えるもの」と評している。(artnet news)

▍デイヴィッド・ホックニー、個展で最新作の自画像を披露

デイヴィッド・ホックニーの最新ポートレート
(画像=デイヴィッド・ホックニーの最新ポートレート)

画像出典:https://www.theguardian.com/

ケンブリッジ大学のフィッツウィリアム美術館とダウニング大学のヒュング・ギャラリーで3月より、「ホックニーの眼」展が開催される。この中で、今年85歳となるホックニーの最新の自画像が公開されることが明らかとなった。今回の展覧会では、この自画像のほかにも、英国で一般公開されていない作品が多数展示されるという。(The Guardian)

▍ロイ・リキテンスタインのスタジオがホイットニー美術館に寄贈される

ロイ・リキテンスタインとドロシー・リキテンスタイン(1992年)
(画像=ロイ・リキテンスタインとドロシー・リキテンスタイン(1992年) )

画像出典:https://www.artnews.com/

画家 ロイ・リキテンスタインの未亡人ドロシー・リキテンスタインは、故人のスタジオをニューヨークのホイットニー美術館に寄贈することを約束した。1997年に亡くなって以来、リキテンスタインのスタジオでは、彼の財団がカタログレゾネを作成し、彼のアーカイブを監督してきた。ホイットニー美術館はこの約840平米の建物を、これまで同美術館で多くの著名なアーティスト、批評家、歴史家を受け入れてきた有名な独立研究プログラムに使用する予定だという。(ARTnews)

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文:ANDART編集部