グローバルの共通言語は「英語」というのは誰もが持っている共通認識であろう。日本における英語力と収入には相関関係があることが、多くの調査結果で明らかにされており、納得のいく読者も多いだろう。
だが、共通のキーワードは決して「英語」だけではない。稼ぐ社長同士でグローバルに通用する話題というのがある。それは「資産運用」「ワイン」そして「筋トレ」である。
資産運用は「統計と効率性」のゲーム
資産運用とは、投資をすることで資産を拡大させ、マネー管理をする活動の総称である。資産運用を一言で語るならば、「統計と効率性」のゲームである。
たとえば、100円を投じて60%の可能性で2倍に、40%の可能性で100円を失うというゲームなら、やらないという人もかなり多いだろう。ここで注目するべきポイントは、投資は何度もやり直すことができるという点である。3回やれば、運が悪ければ3回連続で100円を失い続けるかもしれないが、回数を重ねるごとに期待値の通り収束にしていく。つまり、回数を重ねるほど勝率は6割に極めて近くなるため、この投資は勝てる投資と言える。そして往々にして稼ぐ社長は感情ではなく、論理的に必要なことを積み上げる力の持ち主なので、統計的に勝つ投資を選択する人種といえる。
また、効率性とは資産規模の大きさを生かすということである。年間の利回りが3%得られる投資があるとする。元本100万円の場合に得られる利益は3万円だ。しかし、元本が10億円の場合、利益は3,000万円という結果になる。同じ時間と労力をかけても得られる結果が全く異なる。さらに複利の存在で、やればやるほど雪だるま式に資産は増えていく。お金を持っている人は効率の良い投資ができるのだ。
これらの理由から、稼ぐ社長がビジネスに集中していてもそのうち投資に興味を持ち、統計と効率で勝負するという自分たちに分の良いゲームへの参加をするのだ。
ワインは稼ぐ社長との共通言語
ワインはお金持ちが好む嗜好(しこう)品、というイメージをお持ちの人も多いだろう。そして実際、それは間違っていないのだ。
ビールや日本酒などに比べて、ワインは相対的に値段が高い。トップクラスの高価なビールや日本酒といえどもせいぜい数万円程度、多くは数百円で最高においしい味を堪能することができる。
対して、良いワインは高い。極端な例で言えば1945年のロマネ・コンティは1億円を超える金額が付いている。ここまで高価でなくても、ビールや日本酒には見られない1本数十万円、数百万円というワインを見つけることは難しくないのだ。良いワインを堪能し、話題にできるのは稼ぐ社長でなければ決してできない芸当だと筆者は考えている。
ワインは実に奥が深い世界だ。筆者は過去にそれを実感する体験をして、すっかりワインの世界に魅せられてしまった。同じ畑で同じぶどうから作られたワインだが、ぶどうの収穫時期がたった2ヵ月違うだけで価格が130%以上も違うワインを飲み比べたことがある。値段はかなりしたものの、なぜ収穫時期が異なるだけでこんなに味わい深さが違い、こんなに値段に差が出るのか関心が湧いた。別日、お金持ちの社長とディナーをご一緒した際にこの話をしたところ、饒舌にワイン論を語ってくれた。彼は別にワインの専門家ではない。だが、自宅にはセラーがあり、多くのビンテージワインを保管していることを語ってくれた。
ワインは稼ぐ社長との共通言語なのである。
筋トレは並外れた意志力が必要
そして最後は筋トレである。日本では筋トレを誤解している人があまりにも多い。漫画などでも「筋肉ばか」として描かれるシーンはいまだに散見される。
だが、美しくしっかりとした筋肉をつけるのはばかではできない。生まれ持った肉体の才能も去ることながら、栄養、トレーニングの知識が必須で、必要なトレーニングメニューを計画通りこなす実行力とプランニング力、そして何よりそれを維持する意志力が必要だ。何も考えていない人には、できないのである。
アメリカでは、正しい筋トレイメージを持っている人が日本より多いだろう。金融街の億トレーダーも、出勤前に筋トレで一汗流して仕事に取り組んでいるというのはよく聞く話だろう。学校教育の場でも、筋トレを教えるクラスが存在するし、世界をリードする企業CEOでだらしない体型の持ち主など一人もいない。皆、しっかりとした筋トレを経て体力と精神力を鍛えているのだ。
稼ぐ社長は筋トレをしている。稼げない社長が夜の遊びやギャンブルを話題にする傍ら、稼ぐ社長は熱く筋トレ論を語るのである。
共通言語のメリットは、ひとえに人間関係の構築にある。どこまでいっても人間は社会的な動物だ。社長業は孤独なものだが、彼らがたどり着く趣味は今回紹介した3つであることが多い。稼ぐ社長同士の会話の潤滑油に、始めるのはどうだろうか。
文・黒坂岳央(水菓子 肥後庵 代表・フルーツビジネスジャーナリスト)