「日本の最大手」は「世界の中堅」?トヨタや任天堂を世界企業と比較
(画像=wachiwit/stock.adobe.com)

日本人にとっては「最大手企業」でも、グローバル市場においては「中堅企業」というケースは少なくない。では、トヨタ自動車や任天堂、ファーストリテイリング、イオンなどは、このようなケースに当てはまるだろうか。売上実績や事業規模などを世界企業と比較し、分析していこう。

トヨタ自動車:世界販売で2年連続首位

トヨタ自動車は、日本において時価総額トップの企業だ。トヨタはよく「世界のトヨタ」とも呼ばれるが、実際のところ自動車の販売台数では世界何位なのだろうか。

2021年のトヨタ自動車の販売台数は約1,049万台で、前年比10.1%増だった。この数字はほかの自動車メーカー・グループを抑えてトップで、トヨタは2年連続で首位となった。つまり、トヨタは日本においても世界においても自動車メーカーとして最大手ということになる。

ちなみに、トヨタに続くのがドイツのフォルクスワーゲン(VW)グループで、888万台となっている。日産・ルノー・三菱の3社アライアンスによる合計販売台数は約768万台だ。

ファーストリテイリング:世界最大手とは呼べないが、時価総額では……

カジュアル衣料店「ユニクロ」を展開しているファーストリテイリングは、アパレル業界では日本の最大手である。2位の「しまむら」を大きく引き離し、独走態勢と言っても大げさではない。

では、世界的に見て、ファーストリテイリングはアパレル業界の最大手企業と言えるだろうか。売上高で比較した場合は、「ZARA」を展開するスペイン企業インディテックスなどにはまだ敵わないため、世界最大手とは呼べないだろう。

一方、時価総額では2021年2月にインディテックスを抜いて世界1位となっており(※2022年2月時点ではインディテックスに時価総額で抜かれている)、株式市場における存在感の高さではインディテックスに引けをとらない。

イオンのケース:売上高は米ウォルマートの7分の1程度

イオンと言えば日本における小売業の巨人だ。しかし世界的にみると、売上高はどれほどの規模と言えるだろうか。

デロイトトーマツグループが2021年6月に発表した「世界の小売業ランキング2021」によれば、主にスーパーマーケットの実店舗を展開する企業で最も売上高が高かったのが米Walmart(ウォルマート)で、2019年度の売上高は5,239億6,400万ドル(約60兆円)だった。

それに続くのが同じくアメリカ企業のCostco(コストコ)で、売上高は1,527億300万ドル(約17兆円)である。ドイツ企業のSchwarz Group(シュワルツ・グループ)は1,261億2,400万ドル(約14兆円)だ。

ではイオンはというと、売上高727億1,100万ドル(約8兆円)で、コストコのおよそ半分、ウォルマートの約7分の1といったところだ。つまり、実店舗を展開する小売企業においては、イオンはまだ世界トップレベルとは言えない段階にいる。

任天堂:ゲーム機ではソニーと首位争い、売上高では?

任天堂は、ファミリーコンピュータを1983年に生み出し、日本だけではなく世界においても家庭用ゲーム機の市場を爆発的に広げることに貢献した。少なくともかつては、世界的なゲーム業界の大御所という立ち位置をキープしていたが、最近はどうであろうか。

結論から言えば、「ゲーム機」部門においてはソニーと世界トップの座を争っており、企業としての売上高では中国のIT大手テンセントが展開するゲーム事業に届いていない状況だ。

テンセントの2020年1~12月におけるゲーム事業の売上高は、1,911億元(約3兆4,000億円)とされている。一方、任天堂の2020年4月~2021年3月における売上高は、1兆7,589億円だ。売上高で約2倍の差をつけられている。

しかし総合的に見れば、任天堂を「最大手級」と呼んでも良さそうだ。ゲーム機ではソニーと首位争いをしており、企業としての売上高でも上位にいることは確かだからである。

グローバル規模の視点を持つことを心掛けよう

日本人にとっては最大手企業でも、世界では一大手企業もしくは中堅企業ということはよくある。しかし、この記事で最後に伝えたいことは、そのような企業の世界的な競争力の低さについてではない。情報に触れる側がグローバル規模の視点を持つことが重要であるということだ。

日本市場の中だけに目を向けていると、グローバル市場における日本企業の実力を見誤る。思っていたよりも世界的にすごい日本企業もあれば、世界的にはまだまだという日本企業もある。マクロ的な視点を持っていなければ、これらの事実に気が付かない。

そこで1つ提案したいのが、ある企業の決算発表に関するニュースが出たときは、その業界の世界市場における売上高ランキングを確認するクセをつけることだ。そうすれば、その企業の世界市場における立ち位置が見えてくる。ぜひ一度試してみてほしい。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)

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