メンバーの力を合わせれば、大きな目標を成し遂げられる。しかし、メンバーが多いと組織のトラブルも増加しやすい。一体感のある強い組織を構築するにはどうすればよいのだろう。今回は組織構造の概要を始め、組織に必要な要素と組織のモデルを解説していく。
目次
組織構造に必要な3つの要素
そもそも組織構造とは、共通目標を達成するために、構成員の役割が分化・統合されている集団の成り立ちである。わかりやすくいえば、メンバーの役割や権限、責任などの仕組みをさす。ここからは、組織構造に必要な要素を中心に解説していく。
要素1.共通目的
組織として、共通目的がなければ何も始まらない。会社の場合、経営理念やビジョンといった概念がその役割を果たす。
共通目的が明確になっていないと、組織のメンバーは物事の進め方がわからず混乱してしまいがちだ。また、経営者とスタッフの上下関係でも、意思疎通が困難になるだろう。生産性の低下やメンバーの離脱など、悪循環が発生する可能性も高くなる。
SDGsが注目されているように、会社組織は利益追求だけではなく、社会貢献まで目指す必要が生じてきた。共通目的があれば、社会からも認識されやすくなるだろう。
要素2.貢献意欲
組織では多数のメンバーがそれぞれの専門性や個性を生かしながら、各役割を担って業務を行う。その中で各メンバーの貢献意欲が強いほど組織は強くなる。
貢献意欲を高めるには、組織に貢献した場合に評価される仕組みが重要だ。仕組みが機能すれば組織に対する信頼が生まれ、貢献意欲が増すという好循環が発生する。
勤続年数が短い会社組織であれば特に、貢献意欲が高まる評価体制を点検してみるとよいだろう。
要素3.コミュニケーション
阿吽の呼吸や暗黙の了解など、言葉を交わさなくてもよいコミュニケーションも知られる。しかし、組織ではさまざまな立場のメンバーが存在しており、共同作業を行うにはコミュニケーションが不可欠である。
期限や実行者、方法などのコミュニケーションをおろそかにすると、組織がうまく機能しない。気軽に声をかけあいながらタイミングを合わせ、お互いに協力できる体制を目指す必要がある。
組織構造の代表的な5つのモデル
組織構造は、状況や環境、メンバー構成などによって、さまざまな形態に分かれる。代表的な組織構造には、機能別組織や事業部制組織、チーム型組織、カンパニー制組織、マトリックス型組織などのモデルがある。
モデル1.機能別組織
機能別組織は、機能ごとに分けて組織を形成する組織モデルだ。営業部や製造部、経理部、人事部、情報システム部などのように、専門性ごとに人員配置を行うための組織といえよう。日本国内でも広く利用されており、なじみがある組織モデルではないだろうか。
機能別組織のメリットは、各組織が業務内容に特化した専門部署となるため、メンバーの能力が専門化しやすく、知識の共有も行いやすいことだ。
結果として生産性の向上が期待できる。会社全体としても業務の重複を避けながら、効率的な組織運営が可能になる。
機能別組織のデメリットは、事業の決定を経営上層部が行うので、意思決定に時間を要する点だ。また、機能別に組織リーダーを育成するのには向いているが、組織全体をマネジメントできる人材が育ちにくい。
モデル2.事業部制組織
事業部制組織とは、提供サービスや販売商品などを単位として、事業部ごとに業務運営を分けていく組織モデルだ。機能別組織と同様に国内でよく利用される組織構造である。
事業部制組織のメリットは、事業部内で意思決定が完結できるため、スピーディーな業務遂行が可能な点だ。
また、事業部単位でマネジメントリーダーを配置することにより、事業全体を管理できるリーダーも生まれやすくなり、経営者候補の人材育成も可能となる。
さらに、部署ごとにマネジメントできるため、将来的買収や事業拡大などの組織再編があっても、現状の部署ごとに事業を継続できる点もメリットだ。
ただし事業部制組織は、事業部ごとに業務内容が重複する間接部門を置くことがあり、コストや効率化の観点からデメリットになりえる。
モデル3.チーム型組織
チーム型組織とは、特定のプロジェクトのために短期的に集められたメンバーで事業推進を行う組織モデルだ。各メンバーが異なる専門性を持つ点に特徴がある。
チーム型組織では、専門能力の高い人材で組織を編成するので、仕事の品質を高く維持しながら、達成スピードを速くできる。
各メンバーが専門性を有しているので、チーム内のコミュニケーションを通じて、新たな変革が起きやすくなる点もメリットといえよう。
チーム型組織のデメリットは、プロジェクト内でのみ活動するため、ほかのスタッフとのコミュニケーションが減少することだ。また、チームメンバーが各部署から引き抜かれるため、既存部署の業務状況にも配慮しなければならない。
モデル4.カンパニー型組織
カンパニー型組織は、組織内の各事業部門を独立した会社として扱い、それぞれにカンパニーとしての権限を委譲する組織モデルだ。事業部制組織よりも意思決定の権限が拡大している。
カンパニー型組織では、事業部制組織よりもさらに高度な意思決定ができ、柔軟かつスピーディーに事業を進められる。
ただしカンパニー型組織では、事業部単位で重要な意思決定を下すので、判断ミスや不正などが発生した場合、会社に重大な損害が生まれるリスクがある。
また、独立して業務を遂行するため、他事業部とのコミュニケーションが少なくなり、全社的な視点が欠落しやすい。
モデル5.マトリックス型組織
マトリックス型組織は、機能別組織と事業部制組織のよい点だけを組み合わせて構成された組織モデルだ。1人の組織メンバーが複数の事業部に所属する構造になっている。
マトリックス型組織のメリットは、機能別組織の長所である専門性の特化と、事業部制組織の長所である意思決定の迅速化だ。
各メンバーが複数の事業部に関わるため、情報共有が円滑になり問題の解決がスピーディーになる。
ただし、複数の事業部へ所属する社員は、事業部ごとのリーダーに加え、機能別組織におけるリーダーからも指示を受けるため、指揮命令系統の混乱が生じやすい。意見の不一致から社員同士の対立が発生するリスクも増える。
組織構造の比較表
ここまで説明した組織構造のモデルを表としてまとめたので、おさらいしながら比較してみてほしい。
会社全体として成長できる組織構造を目指す
新型コロナウイルスがもたらした経済構造改革の機会は、産業だけでなく働き方そのものを変えていくだろう。
日本は少子化の流れから、どの組織でも優秀な人材の確保に目が行ってしまいがちだ。
しかしこの機会に、メンバーがやりがいを持って業務に取り組み、会社全体として成長していける組織構造を再検討していきたい。
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文・風間啓哉(公認会計士・税理士)