黒坂 岳央
黒坂 岳央(くろさか・たけお)
水菓子肥後庵代表。フルーツビジネスジャーナリスト。シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、東京で会社員を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。ビジネス雑誌やニュースサイトでビジネス記事を書いている。著書に『年収1億円超の起業家・投資家・自由業そしてサラリーマンが大切にしている習慣 “億超えマインド"で人生は劇的に変わる!』など。

筆者がお付き合いをしてきた、お金持ちや富裕層の人たちは思考や行動がまったく違う。彼らの仕事ぶりに触れた時に気づいた「成功者の思考の特徴」をご紹介したいと思う。

自己学習型の人工知能が人類の英知を打ち破る

人工知能
(画像=Jirsak / Shutterstock.com)

あなたは「アルファ碁」という囲碁の世界でのイノベーションをご存知だろうか。囲碁というゲームは、チェスなどに比べて遥かに創造的、戦略的思考を必要とするため、囲碁はコンピュータが人間に勝つのは困難と言われていた。

しかし、その囲碁というゲームに人類が王者の座を譲る時が来てしまった。強い棋士の対局データを詰め込んだアルファ碁が、2016年3月に韓国人プロ棋士に4勝1敗で勝利した。つまり、コンピュータが人類に打ち勝った瞬間だったのだ。

だが、その後「アルファ碁ゼロ」というAIが登場して業界は騒然とした。アルファ碁ゼロは対局パターンを教わらず、囲碁の簡単なルールだけを教わり、いわゆる「教師なし」による自己学習だけで強くなるAIとして投入された。初期の頃、アルファ碁ゼロは周囲の嘲笑を買うような打ちを見せていた。だが、アルファ碁ゼロは対局を繰り返す中でどんどん強くなっていき、最終的に対局データを持ったアルファ碁を圧倒する力を身につけた。

教師を必要とせず、自己学習を続けるAIが世界最強になった瞬間だった。

成功者は人工知能的な思考パターンで成功する

この人工知能、アルファ碁ゼロが対局を経て強くなるのと同じように、成功者や歴史的な大発明をしたような人物は人工知能的な自己学習を経ていることが見て取れる。

例えば発明王、エジソンは白熱電球を発明する時に、「失敗ではない。うまくいかない1万通りの方法を発見したのだ」と言っている。注意してもらいたいのは、「1万通り」という部分だ。人間は感情や経験、プライドがじゃまをして何度も同じ失敗をしてしまうものだ。だが、人工知能は違う。淡々と失敗を続ける中から成功する道を模索し続ける。エジソンも「1万回」失敗したのではなく、「1万通り」の異なるやり方を試して、とうとう最後には成功を手にした。エジソンのような成功パターンは、まさにアルファ碁ゼロが対局の中から強くなるパターンを見つけ出すのと同じなのである。

凄腕トレーダーも自己学習で強くなる

世界的に有名なトレーダーはもちろん、筆者がお付き合いをしている投資家のトレードを見ていると、アルファ碁ゼロを想起させる。彼らは自分より優れたトレーダーの必勝法を買っているわけではなく、トレードという対局を経てどんどん自己学習をして強くなっていっているのである。

実は筆者も彼らのトレードから学ばせてもらった実体験がある。ご存知の通り、2018年の仮想通貨市場は暴落に次ぐ暴落で、完全なる下げトレンドだったと言える。筆者は200万円の軍資金を元手に、トレードを経験の中から学び続けて「やらないことリスト」を作り上げ、2018年末には数千万円の利益を上げることができた。富裕層のインナーサークルに入らせてもらったことで、仮想通貨の情報を得ることはあったが、トレードについては基本的に自己研究を重ねていった成果だと自負している。

人工知能的に自己成長を続ける思考は、トレードに限らず、世の中の数多あるビジネスや人付き合いなどにも当てはめることができるだろう。人工知能とは人間の脳をコンピュータで再現したものだが、人間の脳と決定的に違うのは「感情がない」ということだ。つまり、アルファ碁ゼロが失敗から学んで強くなるのに、同じ脳の機能を有しているはずの人間の中で成長できない人がいるのは、「感情」がじゃまをして成長を阻害してしまうからなのである。

人間の脳をモデルに作った人工知能であるが、皮肉なことに人間が人工知能から成功する手法を学ぶべき時が来ているのかもしれない。

文・黒坂岳央(水菓子 肥後庵 代表・フルーツビジネスジャーナリスト)