コミュニケーションコストとは、意思疎通をするときに要する時間や労力のこと。コミュニケーションコストが低いほど生産性が高いといわれている。「生産性の向上」や「無駄の削減」といったキーワードが注目を集めている中、コミュニケーションコストを重視する企業が増加していることをご存じだろうか。
コミュニケーションコストが高いとどのような弊害があるか、下げることの重要性や具体的な削減方法について解説する。
目次
コミュニケーションコストとは?
コミュニケーションコストとは、意思疎通をするまでにかかる時間や労力のことだ。具体的には、上司から部下に情報伝達や指示をして理解してもらうまでの時間、商談で相手に必要事項を伝える際にかかる手間や時間などを指す。コミュニケーションコストが高いと情報を確実に伝えるまでに時間がかかり結果生産性も落ちることが懸念される。
生産性の向上のためにもコミュニケーションコストを下げていくことが求められているのだ。
コミュニケーションコストが高いことで起きる4つの弊害
職場においてコミュニケーションコストが高いことで起きる弊害を見ていこう。
1. 重要なことが伝わらない
コミュニケーションコストが高い職場では「情報伝達に時間がかかる」「伝達はできても正確に伝わらない」といった弊害がある。そのため重要なことが伝わっておらず業務でミスが発生したり取引先に迷惑をかけてしまったりする恐れがある。
2. 業務の効率が下がる
コミュニケーションコストが高い職場では、指示の受け渡しなどにも時間や手間がかかる。そのため本来行わないといけない業務に手をつける時間がなくなり効率が下がる恐れもある。また情報が正しく伝わらないことでミスが生じる可能性もあるだろう。ミスの修正にも時間や手間がかかってしまうため、さらに無駄が生じ生産性も低下する。
3. 意思決定が遅くなる
コミュニケーションコストが高い職場では、上司と部下、部署間の意思疎通もうまくいっていないことが多く、意思決定のスピードが遅くなりがちだ。結果的に「進めるはずだったプロジェクトが進まない」「複数の人に何度も同じ説明をする必要が出てくる」といった弊害も生まれる。意思決定が遅くなることで取引先との信用問題や業績への悪影響が生じることもあるだろう。
これを防ぐには、社内で情報伝達が遅くなっている理由を分析したうえで改善していくことが急務だ。
4. 従業員のモチベーションが下がる
「伝えたはずのことが伝わっていない」「部下に指示が伝わっておらず取引先にまで迷惑をかけた」などが続くと従業員のモチベーションも下がってくることが懸念される。モチベーションが下がると業務に力が入らなくなり生産性の低下や業績悪化につながりかねない。またモチベーション低下は、従業員の定着率の悪化を引き起こす可能性もある。
コミュニケーションコストを減らための2つのマインド
仕事をするうえでコミュニケーションコストは、非常に重要だ。紹介した通り、コミュニケーションコストが高いと情報伝達に時間がかかったり、上司から部下へ指示が伝わりにくかったりするなどの問題が生じる。生産性も低下しかねない。また無駄な作業が多くなり本来の業務を行う時間も少なくなってくるだろう。
コミュニケーションコストが高いと感じる場合は、そのままにせず、下げるように努力することが重要だ。またコミュニケーションコストを下げるためには、従業員個人の努力も必要だろう。従業員個人に身につけてもらいたい仕事や持ってもらいたい意識には、以下のようなものがある。
1. 自分の仕事や役割を把握する
会社・部署内での自分の業務や役割を正しく把握することが重要だ。もし分からない従業員が多い場合は、上司や先輩社員が定期的に教える機会を作るのもいいだろう。自分の役割が分かっていると状況に応じて動けるようになってくる。また業務内のどのような場面で上司や先輩社員の指示を仰げばいいのかを理解することも可能だ。
そのため伝えるべき情報や上司に確認したい情報についても具体的に分かるようになってくるだろう。結果的に情報伝達に時間がかからなくなる効果が期待できる。
2. 相手の話を理解するように努める
自分の思い込みに頼らず相手の話を「よく聞く」ことができる従業員を作ることが重要だ。よく話を聞かずに行動してしまうと大きなトラブルに発展することを覚えてもらうようにしよう。まずは、動く前に相手の言うことをしっかりと聞くところから始めるよう指導していきたい。
ここまで、コミュニケーションコストを下げるために従業員個人に行ってもらいたいこと、期待したいことについて述べた。しかしコミュニケーションコスト削減は、従業員の努力だけに頼ることになってはならない。組織として仕組みづくりを行うことも必要だ。特にコミュニケーションコストが高い企業では「メール」「電話」「チャットツール」など情報伝達ツールがバラバラになっていることが多い。
「情報が全然伝わっていない」「自社は情報伝達が遅い」と嘆く前にツールの見直しも率先して進めていきたい。特に「自分が使いやすいから」ではなく社内で統一した情報伝達ツールを使い情報を確認する時間を削減する仕組みづくりを行うことが重要だ。
コミュニケーションコストを下げる4つの方法
では、会社を挙げてコミュニケーションコストを下げる具体的な方法について考えていこう。
1. 社内教育の充実
社員教育が不十分だと「多くの人から同じ質問が出てくる」「同じような在籍期間の従業員でも人によって理解の範囲が異なる」といった弊害がある。一人ひとりに分かるように個別に説明していくと時間がかかりコミュニケーションコストが高くなる原因となりかねない。そのため社員教育をしっかりと行ったうえで同じような質問が出ないような仕組みづくりや社員レベルの向上に努めよう。
特に複数人から同じようなことを質問されるため、上司やベテラン従業員の業務が滞りがちな職場ならばマニュアルを作成し疑問点が出たらいつでも確認できる状態にしておくことが望ましい。マニュアルがあれば質問が減るだけでなく質問がある場合でもマニュアルを踏まえたうえでのものとなる。そのため質問にも回答にも時間がかからなくなることが期待できるだろう。
2. 企業理念を明確にしておく
情報伝達や社内での意思疎通に時間をかけたくないのであれば企業理念を明確にし、すべての従業員に浸透させておくことも必要だ。企業理念が明確であれば従業員の解釈違いが起こりにくく仕事の無駄も生じにくくなり指示も正しく伝わりやすくなるだろう。いざというときだけでなく普段から全従業員が企業理念を確認する機会を持ち、同じ方向を向いて業務に当たれる環境作りを行っていきたい。
3. 社内の雰囲気作り
コミュニケーションコストを削減するためには、社内の雰囲気作りも重要なポイントとなる。例えば若手従業員とベテラン従業員が話しにくい職場環境や話す機会がない職場の場合、業務についての質問もできないため、疑問が解決できなくなり結果的に顧客に迷惑をかける可能性もあるだろう。また従業員間で「言った」「聞いていない」などのトラブルが起こる恐れもある。
普段から雰囲気の良い環境を作り何でも相談しやすく話しやすい職場にしておくことが大切だ。
4. チャットツールなど、情報伝達方法を考える
前述したがコミュニケーションコスト削減には、情報伝達手段の見直しも必要だ。同じ社内、部署内である人は「電話」、別の人は「メール」や「チャットツール」など情報伝達手段が異なると情報が伝わりにくくなる恐れがある。仮に伝わった場合でも伝達に時間がかかる可能性があることも懸念材料の一つだ。
特に「メール」と「電話」、「チャットツール」と「メール」など時と場合によって伝達手段を変えてくる人がいる場合は注意したい。なぜなら情報を伝えたつもりになのに受け取り側は受け取っていない事態が発生する原因にもなりかねないからだ。できれば「メールだけ」「特定のチャットツールだけ」など、社内で一つに絞り誰でも簡単に情報のやり取りができる環境を整えることを考えておきたい。
また小まめな情報共有も重要だ。小まめに情報を伝えることで1回あたりの情報量を減らすことができ、間違えた情報が伝わることを防ぐこともできる。反対に一度に多くの情報を伝える方法だと一度にさまざまな情報を伝えることができる点はメリットだが、解釈違いや伝達ミス、情報の読み飛ばしが起こりやすい点はデメリットだ。
情報伝達手段の見直しは、従業員の意識とは違い、すぐに取りかかりやすい分野でもある。すぐにでも見直してコミュニケーションコストの削減を図ろう。
コミュニケーションコストは徐々に減らすのが重要
コミュニケーションコストが高い企業は、情報伝達がうまくいっていない意思疎通に時間や手間がかかる企業といってもよい。そのままにしておくと無駄な作業や時間が多く発生するため、生産性が低下する危険性もある。生産性が下がると従業員のモチベーション低下につながる可能性もあるだろう。もし現在コミュニケーションコストが高いと感じているのならば早急に業務の見直しを行いたい。
コミュニケーションコストの削減を行う際は、各従業員に自分の仕事や役割を把握してもらい、相手の話をしっかりと聞いて理解してもらう努力を求めることになる。しかしそれだけではなく企業としても改善が必要だ。例えばマニュアルを作成し誰にでも仕事のやり方が分かるようにしたり社員教育で従業員のレベルを上げたりすることを心がけたい。
また意見を交換しやすく質問しやすい職場環境作りも必要だ。情報伝達手段を統一し、すぐに必要な情報を伝えられる仕組みを構築できるよう早急に着手することをおすすめしたい。