企業には、役職を示す略語として「CEO」「COO」「CFO」などを始めとする多種多様な「CxO」が存在する。いずれも日本の会社法上で定められている役職ではないが、役割や責任の所在を示す上で重要である。この記事では、CxOが日本の企業に導入された経緯や、CxOに共通する特徴、CxOの種類について解説する。
目次
- CxOが日本企業に導入された経緯
- CxOに共通する6つの特徴
- CxOの種類、よく使われる15種
- 1.CEO:Chief Executive Officer
- 2.COO:Chief Operating Officer
- 3.CFO:Chief Financial Officer
- 4.CMO:Chief Marketing Officer
- 5.CSMO:Chief Strategy & Marketing Officer
- 6.CBO:Chief Branding Officer
- 7.CTO:Chief Technical Officer
- 8.CIO:Chief Information Officer
- 9.CISO:Chief Information Security Officer
- 10.CDO:Chief Digital Officer
- 11.CDTO:Chief Digital Transformation Officer
- 12.CSO:Chief Standardization Officer
- 13.CKO:Chief Knowledge Officer
- 14.CHRO:Chief Human Resource Officer
- 15.CAO:Chief Administrative Officer
- CxOの意味や役職についてステークホルダーに誤解を与えないようにする
- 事業承継・M&Aをご検討中の経営者さまへ
CxOが日本企業に導入された経緯
1990年代初めのバブル崩壊による経済の悪化に伴い、日本企業はアメリカのコーポレート・ガバナンス(内部統制)にならった執行役員制度を導入するようになった。
日本企業で初めて執行役員制度を導入したのは、ソニー株式会社であった。その後、アメリカの法人において業務執行を統括するCEOやCOOといった役職も導入された。日本企業に多種多様な「CxO」が導入されるようになったのも、この流れからと考えられている。
CEOやCOO以外にも、法務や人事、IT技術、知財などの各専門分野を統括する「CxO」が、現在も日本企業に次々と導入されている。各分野のCxOがそれぞれの業務執行を経営視点で統括することによって、専門性の高い業務をより戦略的に取り組むことができる。
CxOに共通する6つの特徴
CEOやCOO、CFOなどのさまざまな役職が導入されているが、「CxO」には共通した特徴がある。
1.会社法上の役員ではない
CxOは、いずれも日本の会社法上の役員ではない。日本の法制において、会社の業務執行を担う者は、代表取締役や取締役、執行役員制度によって導入された執行役員、指名委員会等設置会社における代表執行役や執行役である。
そのため、各専門分野の業務執行の統括を担うCxOは、代表取締役や取締役、執行役員などを兼務していることが多い。
2.取締役が兼務しているとは限らない
CxOを取締役が兼務している会社は多いが、必ずしもCxOに就任する者が取締役とは限らない。取締役であるケースもあれば、そうではない執行役員などがCxOに就任するケースもあり、取締役兼執行役員がCxOをさらに兼務することもある。
誰がいずれのCxOに就くかは、会社の方針によって異なる。言い換えると、会社の重要なポジションの人物に兼務させているCxOの種類で、その会社が何を重視しているかを知ることもできるということだ。
なお、代表取締役社長がCEOやCOOを兼務することが多いように、どういったポジションの人物が就任するかがある程度決まっているCxOもあるといえるだろう。
しかしこれについても、会社の考え方で変わるところであり、たとえば代表取締役社長が、それ以外のCxOとして、「CFO(Chief Financial Officer:最高財務責任者)」や「CCO(Chief Compliance Officer:最高コンプライアンス責任者)」などを兼務している会社もある。
また、体制によっては、取締役でない者も含めた複数の人物がCEOやCOOに就任している会社もある。
3.CxOの兼任もある
CxOの種類を見ると、「この2つは何が違うのだろう」「役割が重複していないか」と思うCxOがたくさんでてくる。実際には、それらを企業がすべて割り当てるわけではなく、必要なCxOだけを選任している。
また、役割は違っても目的が似ているCxOを、1名が兼任している場合もある。たとえば、「CSO(Chief Strategy Officer:最高戦略責任者)」と「CQO(Chief Quality Officer:最高品質責任者)」などである。
(参考)トヨタ紡績株式会社:役員一覧
4.同じ表記でも異なるCxOがある
CxOは「Chief 〇〇 Officer」の略称だが、いずれも法律上の役職ではなく、その表示方法などは特に統一されていない。略称と英語表記の両方を示している場合もあれば、略称のみの表示、英語表記のみの場合もある。
略称のみの表記の場合、同じ略称でも、異なるCxOがかなりあることに注意が必要である。たとえば、CPOという表示一つをとってみても下記の4つがある。
・Chief Product Officer(最高プロダクト責任者)
・Chief Project Officer(最高計画責任者)
・Chief Privacy Officer(最高個人情報保護責任者)
・Chief Productivity Officer(最高生産性責任者)
CEO、COO、CFO、CTO、CMOなどは、何の略称かわざわざ確認を取るまでもないだろうが、それ以外で略称のみしか表記されていないCxOに出くわした際は、どんな役職なのか勝手に解釈せずによく調べておくべきだ。
5.同じCxOで訳が異なったり、異なるCxOが同じ訳だったりすることもある
CxOの日本語訳は、それを導入する企業の解釈によっても多少変わる。たとえば、CSO(Chief Strategy Officer)には、最高戦略責任者の他に、最高企画責任者の誤訳も見受けられる。日本の法律上の定義はないため、どちらが正しいという話ではない。
その逆で、異なるCxOでも同じ日本語訳が用いられているものもある。たとえば、CJO(Chief Judicial Officer)とCLO (Chief Legal Officer)はどちらも「最高法務責任者」である。
6.CxxOという表記もある
CxOは、通常「Chief 〇〇 Officer」という3つの単語の略称から成るが、「Chief 〇〇 〇〇 Officer」という4つの単語の略称から成るものもある。
CxOの種類、よく使われる15種
CxOの種類は非常に多いため、実際によく活用されているCxOを中心に解説する。
1.CEO:Chief Executive Officer
【日本語訳】
最高経営責任者
【役割・特徴】
企業全体の業務執行ラインのトップ。代表取締役社長や代表取締役会長などが兼務していることが多い。
2.COO:Chief Operating Officer
【日本語訳】
最高執行責任者
【役割・特徴】
マーケティング、開発、製造など事業活動に関する業務執行を統括する。代表取締役社長が兼務していることもある。
3.CFO:Chief Financial Officer
【日本語訳】
最高財務責任者
【役割・特徴】
財務に関する業務執行を統括する。財務会計に対する専門知識だけでなく、経営視点で財務戦略を立案し、企業価値を向上させる能力や高いコミュニケーション能力が求められる。代表取締役が兼務していることもある。
4.CMO:Chief Marketing Officer
【日本語訳】
最高マーケティング責任者
【役割・特徴】
マーケティングに関する業務を統括する。市場や顧客の調査から、マーケティング戦略の策定、実行も担う。
なお、経済産業省の審議会「サービス産業の高付加価値化に関する研究会」(2014年3月18日)での配布資料の『ビジネスモデル革新について』によると、CMO(最高マーケティング責任者)を任命している企業の割合は以下のようになっている。
米国:62%(フォーチューン500社が対象)
日本:0.3%(時価総額上位300社が対象)
一昔前の調査結果とはいえ、CxOの普及率を公的機関が示した貴重なデータであり、一つの参考にはなるだろう。
(参考)経済産業省HP: サービス産業の高付加価値化に関する研究会(第3回)‐配布資料
5.CSMO:Chief Strategy & Marketing Officer
【日本語訳】
最高戦略・マーケティング責任者
【役割・特徴】
CSO(Chief strategy Officer:最高戦略責任者)とCMO(Chief Marketing Officer:最高マーケティング責任者)の役割を統括する。LINE株式会社で導入されている。
(参考)LINE株式会社
【同じ略称のCxO】
Chief Social Marketing Officer
6.CBO:Chief Branding Officer
【日本語訳】
最高ブランド責任者
【役割・特徴】
ブランドマネジメントを統括する。具体的には、ブランドの企画、開発、運用から、ブランドイメージを守るための製品管理等なども統括の対象に含まれる。
【同じ略称のCxO】
Chief Business Office(最高営業責任者)
7.CTO:Chief Technical Officer
【日本語訳】
最高技術責任者
【役割・特徴】
企業の技術に関する活動を統括する。製造技術、化学技術、IT技術、研究開発など、専門的な技術や知識を用いる技術部門のトップとして幅広い業種に置かれる。技術職として秀でているだけでなく、経営視点における戦略的な技術の活用や方針の策定を行うことが求められる。
なおIT技術に関する場合、CIOと同義のCxOとして扱われることもある。
8.CIO:Chief Information Officer
【日本語訳】
最高情報責任者
【役割・特徴】
企業の情報戦略を統括する。情報技術に基づくIT戦略の立案や、会社のIT資産に関する業務を最適化することなどが求められる。
9.CISO:Chief Information Security Officer
【日本語訳】
最高情報セキュリティ責任者
【役割・特徴】
情報セキュリティを統括する。CIOの業務にリスク管理としてセキュリティに関する統括が加わっているため、CIOより職責は広い。CIOとは別に設置される場合もあれば、CIOが兼務している場合もある。
10.CDO:Chief Digital Officer
【日本語訳】
最高デジタル責任者
【役割・特徴】
企業のデジタル技術の活用を統括する。最新の技術や、IT化に向けた世間の動向などを踏まえて、その企業に最適な形でデジタル技術を導入する経営戦略を策定、実行することが求められる。
【同じ略称のCxO】
Chief Data Officer(最高データ責任者)
11.CDTO:Chief Digital Transformation Officer
【日本語訳】
最高デジタル・トランスフォーメーション責任者
【役割・特徴】
DXに関する活動を統括し、DXを推進するための施策を立案、実行する。新型コロナウイルスの影響によって導入した企業も見られる。
12.CSO:Chief Standardization Officer
【日本語訳】
最高標準化責任者
【役割・特徴】
知財や製品の標準化に関する戦略を統括する。標準化とは、製品の品質や安全性などの標準に関する取り決めのこと。
日本製品の国際標準化は、日本工業規格(JIS)の活用によって行われているが、昨今は、より戦略的な国際標準化が注目されている。経済産業省による「標準化⼈材を育成する3つのアクションプラン」では、企業内にCSOの設置を促している。
【同じ略称のCxO】
・Chief strategy Officer(最高戦略責任者・最高計画責任者)
・Chief Security Officer(最高セキュリティ責任者)
・Chief Sustainability Officer(最高サスティナビリティ責任者)
13.CKO:Chief Knowledge Officer
【日本語訳】
最高知識責任者
【役割・特徴】
企業のもつ知識やノウハウを組織で共有し、企業価値の向上に活かすナレッジ・マネジメントを統括する。
14.CHRO:Chief Human Resource Officer
【日本語訳】
最高人事責任者
【役割・特徴】
人事に関する活動を統括する。人事の専門知識と経営視点を併せ持ち、採用、人材育成や、人材の活用による経営戦略を策定し、企業価値の向上を行う。
【同じ日本語訳のCxO】
CHO(Chief Human Officer)
15.CAO:Chief Administrative Officer
【日本語訳】
最高総務責任者
【役割・特徴】
総務に関する活動を統括する。総務の職務範囲は広く、管理部、経理部の業務や内部監査業務にも及ぶ。
【同じ略称のCxO】
Chief Analytics Officer(最高分析責任者)
CxOの意味や役職についてステークホルダーに誤解を与えないようにする
本記事では、CxOが導入された経緯やCxOに共通する特徴、CxOの種類について解説した。
日本でもCEOやCOO、CFOなどの役職は普及してきたが、それらを含めて今回紹介したもので15種類の「CxO」の役職がある。同じ略称でも意味が異なることもあるため、自社以外のステークホルダーが誤解しないように、それぞれの役職については、その元となる言葉や日本語訳を設定する必要がある。
なお、説明のために、文中で実在する会社の経営体制について紹介しているが、すべて執筆当時(2021年10月)、ホームページで公開されている内容に基づいて執筆していることをご了承いただきたい。
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文・中村太郎(税理士)