選ばれ続ける営業マンの特徴と、選ばれるための心構え
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世の中は引き続き新型コロナの影響を多分に受けている。こんな世の中でも2022年に入り、年が明けたことで新たな目標を立てた方もたくさんいるのではないだろうか。中には、「今年こそ起業する!」など、営業に力を入れることが避けては通れない目標を立てた人もいるかもしれない。今日は、そのような方々向けに、選ばれ続ける営業マンについて解説したい。

本物の「上司力」
大村 康雄(オオムラヤスオ)
株式会社エッジコネクション 代表取締役

延岡高校、慶應義塾大学経済学部卒業後、新卒生として米系金融機関であるシティバンク銀行入行。営業職として同期で唯一16ヶ月連続売上目標を達成。 2007年、日本の営業マーケティング活動はもっと効率的にできるという思いから営業支援・コンサルティング事業を展開する株式会社エッジコネクション創業。ワークライフバランスを保ちつつ業績を上げる様々な経営ノウハウを構築、体系化し、多くの経営者が経営に苦しむ状況を変えるべく各種ノウハウをコンサルティング業、各メディア等で発信中。1200社以上支援し、90%以上の現場にて売上アップや残業削減、創業前後の企業支援では80%以上が初年度黒字を達成。東京都中小企業振興公社や宮崎県延岡市商工会議所など各地で講師経験多数。

目次

  1. ヒトは減点主義
  2. 心地よい人間関係とは?
  3. 営業職とはお客様からの減点との戦い
  4. 営業マンの減点を増やしてしまうもの
  5. 選ばれ続ける営業マンになるためのマインドセット
  6. “農業マインド”で営業を行うために必要なこと
    1. ①安定的な商談数を確保できるマーケティング体制を確立する
    2. ②必ず次の約束を取り付けて商談を終わる
    3. ③営業資料を使い倒す

ヒトは減点主義

良い噂より悪い噂の方が広まりやすいといわれる。他人の不幸は蜜の味なんて言葉もある。

このように、良い話よりも悪い話の方に注目しがちなのが人間であることは、様々なことわざ、格言、通説などにより知れ渡っている。

実際、自分の身の回りの人が自分に対してしたことについて、良いことよりも悪いことの方が印象に残っていないだろうか?

例えば、恋人との楽しみにしていたデートに、相手が1時間遅刻してきたとする。電車の遅延ならまだしも、理由は寝坊。「なんでこんな時に寝坊するの??」と、気持ちはマイナスに振れてしまうだろう。
それに対し、「ごめん!」と言われただけでマイナスに触れた気持ちは戻るだろうか?
おそらく難しい。デート中、ずっと謝る。何かプレゼントを渡す。いつも割り勘のところを今回はすべておごるなどなど、出会いがしらの「ごめん!」以外にも様々なことをしないと、気持ちを戻してはもらえなそうだ。

何が言いたいかというと、1時間の寝坊によって下がった自分の評価は、1時間以上の謝罪やそれなりのプレゼントなどでないと挽回できないということだ。つまり、起こしてしまった減点のダメージは相当に大きいわけである。

これが、ヒトは減点主義と、私がいう所以だ。

これだけの例だと、まだ否定的な方もいるかもしれない。では、こういう想像もしてみて欲しい。
デートの出会いがしら、相手がサプライズでプレゼントをくれたとする。

当然、それはうれしいことだ。だが、遅刻したときに謝罪を繰り返すかのように、その場でそれ以上のプレゼントを返そうとすることは起こるだろうか? なかなか想像できないだろう。
ドラマや映画などでも、寝坊してしまったことをひたすら謝り続ける主人公は見たことがあるが、サプライズでプレゼントをもらったことで、慌ててそれ以上のお返しを探すシーンはめったに見ない。

このように、ミスに対しては強く印象に残り、されたミス以上のものを求めるのが人間なのである。

心地よい人間関係とは?

ヒトは減点主義であると考えたとき、ふと自分の身近な人たちを振り返ってみてほしい。

おそらく、自分があまり減点しない人、もっと直観に近い表現でいえば、はてなマークがつくポイントが少ない人に好感を抱いていないだろうか。

「数年前にこんなうれしいことをしてくれたから、どれだけ待ち合わせをすっぽかされてもずっと友達」より、「特に大きな出来事もないけど、だからこそ一緒にいてなんとなく居心地が良いからずっと友達」という人間関係の方が多いのではないかと思う。

このように、我々は、自分が減点しない人に対して無意識に好感を抱き、そのような人と交流を深めていっているのである。

営業職とはお客様からの減点との戦い

ヒトは、自分自身が減点をしない人と付き合いたがると考えたとき、営業職という仕事がどれだけ常にお客様からの減点にさらされているか、改めて気づくことができる。

言葉遣いが良くない。
予定していた時期にフォローアップの連絡がない。
提案書の内容が薄い。
見積もりが予算内に収まってない。
他社事例が自社に合致しない。 などなど

少し考えただけでも、お客様が営業担当者に減点しそうなポイントはどんどん出てくる。
これらすべてのポイントにて、減点されないような立ち居振る舞いを行っていくことこそ、選ばれ続ける営業マンへの道なのである。

当然、平坦な道のりではない。減点ゼロの営業マンなんてこの世に存在しないだろう。
しかし、最小限の減点に食い止めることに成功することで、お客様と長期的な関係になっている営業マンはたくさんいる。

そのような選ばれ続ける営業マンになるための方法は一つではない。
なぜなら、各営業マンによって個性があるからである。

ある営業マンは遅刻しがち
ある営業マンは言葉足らずな時がある
ある営業マンはいつも少し提出期限に遅れて提案を持ってくる

このように、ヒトの欠点は千差万別だ。しかし、その欠点以外で減点されていなければ総合点として他の営業マンを上回ることができる。

営業マンの減点を増やしてしまうもの

簡単にここまでのポイントをまとめておこう。

・ヒトは減点主義で他人を無意識に見ている。
・ヒトは大きな加点があった人よりも、普段から減点が少ない人と付き合いたがる。
・営業職は、お客様から減点されるポイントが数限りなくある職種である。
・減点幅を抑える方法は、各営業マンの個性によるので唯一の方法はない。

以上がここまでのポイントだ。お客様に選ばれ続ける営業マンになる方法は“減点を抑える”ことだが、どう抑えるかは正解が千差万別なのだ。

しかし、逆に減点を“増やす”ことについて、その原因は絞り込まれている。
それは、“売上へのプレッシャー”である。

後少しで今月の売上目標が達成するのに、もう今月の見込み案件はない。
しかし、来月に返答を頂く予定のお客様はいくつかいる。

こんなとき、多くの営業マンはその来月返答予定のお客様に連絡しないだろうか?
関係性が強固であれば問題ないかもしれないが、このような場合、多くのケースでお客様は嫌悪感を抱く。「来月って言ったよね?」と。まさに減点だ。

このように売上へのプレッシャーはお客様からの減点のきっかけになりうる。少しイメージするだけでも、他にも下記のようなシーンが思い浮かぶ。

・商談数が足りていないので、過去顧客に用事もないのにアポを取ろうとする。
・売上が足りないので、伺っていた予算感よりも少し多めに見積もりを出す。
・忙しくて提案書をきちんと作れないので、紹介する事例数を減らす。

ドキッとした営業職の方も多いのではないだろうか。
売上へのプレッシャーは、お客様と長期的な関係性を築く上ではマイナスなのである。

選ばれ続ける営業マンになるためのマインドセット

「エース営業マンをイメージしてください。」と言われたとき、多くの方がイメージするのは、ギラギラした野性味あふれた人物像かもしれない。
しかし、実際に様々な企業でエース営業マンを見ていると、実態は異なり、物静かで生真面目な印象の方が、エース営業マンであるケースの方が多い。

この違いがどこから来るかというと、営業という仕事の実態が“狩り”ではなく“農業”に近いからである。

狩りのようなスタンスで営業に臨むと、一つ一つの商談を『ここで仕留める』というスタンスで臨んでしまう。このスタンスでは無理やり自社に誘導することになり、相手の印象を悪くし、減点されてしまう。そうすると、もう二度とその企業と連絡が取れなくなることもあり得る。

では、農業的な営業とはどういうものかというと、一度でも商談したすべての方と必ず定期連絡を取るというものだ。名刺(連絡先)交換が種まきなら、定期連絡は水やり。すぐには収穫できなくても、水やりのタイミングを間違えなければいつか相手のニーズが変わって花が咲く、つまり契約が取れるタイミングが来る。

このマインドセットが、お客様に選ばれ続ける営業マンに必要なのである。

ちなみに、営業を狩りと考えるマインドセットでもうまくいく場合もある。
それは、以下の条件を満たす時である。

・商材が売り切りで、購入後の関係性が希薄であること
・アグレッシブな営業で逃げられても次がすぐ見つかるほど、見込み顧客が豊富なこと

この2点に合致する商材、業界を考えてみると、その営業マンはアグレッシブな印象がないだろうか?
逆に、この2点に合致しない場合、営業マンは“農業マインド”を持たなければいけない。

過大な減点を受けて関係性が切れればクロスセル、アップセルができなくなる。
企業数が限られる業界を相手にしたビジネスであれば、一つの企業と疎遠になることは大きなチャンスロスだ。

“農業マインド”で営業を行うために必要なこと

選ばれ続ける営業マンになるためには、“農業マインド”で営業を行うことが重要であることはわかっていただけただろうか。最後に、その農業マインドを手に入れるためのポイントを紹介して、終わりにしたいと思う。

①安定的な商談数を確保できるマーケティング体制を確立する

なぜ狩りのようなスタンスで営業を行ってしまうかというと、次いつチャンスがあるかわからないと思ってしまうからだ。「またチャンスは来るさ!」と思えればアグレッシブになる必要もない。

そのためには、安定的に商談を獲得できる仕組みを確立する必要がある。

テレマーケティング、DM、飛び込み営業などなど、手法は問わないが、「これをやればこれくらいの商談が生まれる。」とわかれば目の前の商談に過度に力を入れる必要はない。

②必ず次の約束を取り付けて商談を終わる

商談の最後に、「また何かありましたらご連絡ください。」と終わっていないだろうか?
そのような終わり方をしても、その“また何か”は起こらないということは多くの営業経験者が感じていることだろう。

よって、このような形で商談を終わらせる。

「本日、来月に予算取りを始めると伺いましたので、予算取りが始まったくらいにどれくらいの予算が確保できそうかなどを伺えればと思います。つきましては、来月の10日前後に一度お電話させていただきますね。」
ここまで話して承諾いただければ、来月の10日前後にまたお話しできる可能性は高い。お話して話が具体化すれば再度商談して固めていけばよい。このように、必ず次の約束を取り付けることで、定期的に連絡(水やり)ができる農業的営業ができる。

③営業資料を使い倒す

次の約束を取り付けるための上記の例を読んで、「こんな突っ込んだ話はなかなかできない。」と思った人もいるかもしれない。

その対策は、営業資料を作りこむことである。

商談は初対面の人同士で行われることが多い。そうすると、相性の良し悪しで商談結果も左右される。

それを最小限に食い止めるための武器が営業資料だ。

「言いそびれた。」
「説明がうまくいかなかった。」

そんなミスも資料上に記載しておけばすべて解決する。
次の約束を取り付けるための商談を実現するため、自分のスキルではなく営業資料に頼る癖をつけよう。

以上が、選ばれ続ける営業マンの特徴とそのための心構えだ。

ぜひとも参考にしていただき、2022年は去年とは違う営業活動を展開してもらいたい。