イギリスを中心に匿名で活動し、ゲリラ的にストリートアートを発表するたびに世界中で話題になるバンクシー。彼の作品は、反戦や反差別など平和的なメッセージを含むことも多い。そんなバンクシーはアート作品を通してチャリティー活動も行なっており、話題性も相まって多額の金額が集まることも多い。そこで今回は過去にバンクシーが行ったチャリティー活動を紹介する。

チャリティーTシャツを販売
2021年12月11日、人種差別抗議デモ参加者を支援する限定版のチャリティーTシャツがイギリス・ブリストルで販売された。Tシャツには「BRISTOL」の文字と台座から銅像が倒れ粉々に壊れているような絵がプリントされている。これは、昨年ブリストルで起きた米国の黒人男性暴行死事件を巡る抗議デモにて、コルストン像という有名な奴隷商人の銅像を参加者が引き倒し海に投げるという事件のことを示唆している。バンクシーのチャリティーTシャツで得られた収益はこの事件に関して刑事裁判にかけられる4人に寄付される。

バンクシー本人のインスタグラムより
(画像=バンクシー本人のインスタグラムより)

Tシャツの価格は付加価値税を除いて子供用が25ポンド(約3700円)、大人用が30ポンド(約4500円)。このチャリティーTシャツに関してバンクシーは自身のインスタグラムでも宣伝しており、その影響もあってかブリストルの複数の店舗で販売されたTシャツは、数千人の行列を成すほどの人気ぶりだという。

チャリティーTシャツ
(画像=チャリティーTシャツ)

画像引用:https://hypebeast.com/jp/

刑務所をアートセンターに
2021年3月にイギリス・ブリストルのレディング元刑務所の壁に脱獄犯の絵が描かれ話題となった。この刑務所はアイルランド出身の詩人オスカー・ワイルドがかつて同性愛を禁じる法によって収監されていたことでも知られている。壁画の脱獄犯が命綱にしているのはタイプライターということもあり、この脱獄犯はオスカー・ワイルドではないかという見方が広まっている。

脱獄犯の絵
(画像=脱獄犯の絵)

画像引用:https://www.bbc.com/

この刑務所は2019年から競売にかけられていたのだが、バンクシーはそれを購入するために資金を募り、15億円の調達を予定。この15億円とレディング・バラ評議会からの1260万ポンド(約19億円)の資金を合わせて、入札の申し入れを行った。

バンクシーはオスカー・ワイルドという芸術家の人生の一部を台無しにしたこの刑務所を、時を経て芸術の中枢に変化させることを目標にプロジェクトを実施するという。これが成功すれば、地域の芸術発展やLGBTに対する反差別への貢献、さらに刑務所購入のための入札金だけでなく、地元の話題性によりかなりの経済効果が見込めるだろう。

バンクシーのインスタグラムには本作の制作過程が動画で収められている。

コロナ禍には医療従事者に向けた作品発表
2020年5月にバンクシーが自身のインスタグラムやWebサイトで発表した《Game Changer》。初期のコロナ禍でパンク状態の病院で働く医療従事者に向けて描かれた作品で、少年がマスクをしたナース姿のお人形をヒーローのように見立てて遊ぶ様子を描いた作品は、多くの反響を呼んだ。この作品はその後オークションでバンクシー史上過去最高額の1670万ポンド(約25億円)で落札され、その売り上げはサウサンプトン大学病院をはじめとする全国の医療機関や慈善団体に寄付された。

《Game Changer》
(画像=《Game Changer》)

画像引用:https://www.artpedia.asia/

アート作品を通してチャリティー活動も行なっているバンクシー。影響力の高い彼だからこそ、チャリティーを通して社会への問題提起をより世間に広めることにもつながる。今後のバンクシーの活動にも注視したい。

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文章:ANDART編集部