スーパー業界勢力図 あの有名スーパーも完全子会社化!?
(画像=yu_photo/stock.adobe.com)

新型コロナウイルスの感染拡大による「巣ごもり需要」の増加は、スーパーマーケット業界には追い風だった。しかし、中長期的にはスーパーマーケット市場は縮小していくとみられ、今後、業界再編が加速するとみられている。スーパーマーケット業界の課題や今後の動向に迫る。

コロナ禍による一時的な需要増が起きたが…

すでに、コロナ禍による緊急期待宣言は全て解除されたが、感染者が増え続けていた時期は、レストランや居酒屋などの飲食店から多くの人の足が遠のいた。飲食店は臨時休業や時短営業を余儀無くされ、多くの消費者が感染を避けるために自主的に外食を控えた。

このような状況は、スーパーマーケット業界にとってはプラスに働いた。家で料理をして食事をする人が増えたからだ。リモートワークが推奨されたことも、外食需要を低下させたが、スーパーマーケットの売上高を伸ばした。

現在は新たな変異株であるオミクロン株に対する懸念が高まっているものの、日本国内のコロナの新規感染者数は、他国に比べて低い水準でとどまっている。それにより、多くの飲食店は、通常営業を再開しており、スーパーマーケット業界の一時的な需要増は、終わりを迎えた。

特需が終わってしまった今、スーパー業界はコロナ禍の前からの懸案事項に、再び真剣に向き合わなければならない状況だ。その懸案事項とは、市場の先細りだ。今後、スーパーマーケット業界が縮小していくと考えられる理由は2つある。

市場が今後縮小していくと考えられている理由

スーパーマーケット市場が今後、縮小していくと考えられている理由は、EC(電子商取引)の普及が加速していることと、日本において人口減が続いていることだ。

ECの普及が加速

コロナ禍はスーパーマーケットにとって一時的な追い風だったが、将来を考えると向かい風だったのかもしれない。その理由は、これまでECを利用したことがない人も、その利便性の高さに気付いたからだ。

もちろん、ECを展開しているスーパーマーケットもあり、順調に事業規模を拡大している企業も存在するが、世の中でECを利用する人が増えると「店舗」を持つスーパーマーケットは不利になる。無店舗型のEC事業者よりも、固定費や人件費の負担が大きいからだ。

人口減が続く日本

日本の人口が減り続けていることも、スーパーマーケット業界にとってはマイナスだ。当然、人口が少なくなった分、日本全体で食料品の消費は落ち込み、日用品の売れる量も減っていく。

ちなみに、2021年6月1日現在の推計値で日本の総人口は1億2,528万人だ。2020年6月と比べると、57万3,000人も減っている。

スーパーマーケット業界で再編の動きが顕著に

このような中、すでにスーパーマーケット業界で再編の動きが顕著になりつつある。M&Aや資本提携などの動きが目立ち始め、各社は経営効率を高めようと必死になっている。将来的に売上高が減っても、利益率を高めれば生き残っていけるからだ。

近年の業界再編の事例を紹介しよう。

アークスがオータニを完全子会社

北海道札幌市に本社を置き、北海道から東北地方へと徐々にスーパーの店舗数を増やしているアークスは、2021年3月、栃木県などでスーパーマーケットを展開するオータニについて、完全子会社化のための株式譲渡契約を締結したことを発表した。

オータニを買収することによって、アークスは関東圏へと事業を拡大することとなる。注目したい点としては、経営統合によってさまざまな「インフラ」を共有することにより、経営効率を高めようとしていることだ。

スーパーマーケットを展開する場合、在庫管理システムなどが必ず必要となる。アークスもオータニもそれぞれ独自でこのようなインフラを有していたが、経営統合してこれらを共有すれば、結果的にコストの削減につながる。

H2Oと関西スーパーマーケットが経営統合

2021年に入ってからは、百貨店や食品スーパーを展開するエイチ・ツー・オーリテイリング(H2O)の傘下企業が、兵庫県や大阪府の食品スーパー、関西スーパーマーケットと経営統合した。

店舗があるエリアが一部重なっていることもあり、経営統合によるシナジーは大きいとみられる。仕入れをまとめることによって仕入れコストを抑えていく考えのようだ。アークスとオータニの例と同様に、全体で収益力がアップすることが期待される。

今後は「無人化」もキーワードに

今後は、スーパーマーケット各社がいかにうまくECで売上を伸ばしていけるかも注目となる。M&Aなどによって経営効率をいくら上げても、スーパーマーケット市場自体が先細っていく中では、事業規模の拡大に限界があるからだ。

一方、M&A以外で事業効率を高める方法もある。そのキーワードになるのが「無人化」だ。在庫を無人でチェックして回るロボットなどを導入すれば、当初はロボットの導入コストが業績を圧迫するものの、中長期的にみて人件費を抑制できる意義が大きい。

同様に、米国や中国で盛んに試されている「無人スーパー」も、スーパーマーケットを展開する企業が生き残る上でのカギとなる。さらに変化が予想されるスーパーマーケット業界の動向から目が離せない。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)

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