「アジア大学ランキング」日本トップ10陥落 研究力の低下が止まらないワケ
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英大学評価機関クアクアレリ・シモンズ(QS)が毎年発表している「アジア大学ランキング」で、日本の大学の凋落が目立つ。最新版(2022年)では中国から7校がトップ10入りしたのに対し、日本はわずか2校がトップ20入りしたのみ。かつてアジア圏トップの競争力を誇った日本の大学が、なぜ世界で評価されなくなっているのか。

アジア大学ランキング トップ10

最新のランキングはQSが「学術的な評判」「雇用者(企業など)からの評判」「学生1人辺りの教員比率」「論文数」「引用数」など11の指針に基づき、アジア圏の687の教育機関を評価したものだ。まずは、トップ10を見てみよう。

「アジア大学ランキング」日本トップ10陥落 研究力の低下が止まらないワケ

上位は中国が席巻 追い上げる韓国

ランキングを見て驚かされるのは、中国の大学の席巻ぶりだ。全126校がランク入りし、そのうち9校(4校は香港)がトップ20入りを果たすという快挙である。順位は若干変動し、北京大学が2021年から大きく順位を上げてトップ3入りした一方で、精華大学や浙江大学、復旦大学、香港科技大学は順位を下げた。

韓国については、トップ10入りは逃したものの、韓国大学(13位)やKAIST(韓国科学技術院、14位)、延世大学校(16位)など5校がトップ20入りした。

シンガポールからは、2014年以降首位をキープしているシンガポール国立大学(NUS)と、「論文1本当たりの引用数」では6年連続1位の南洋理工大学(NTU)が3位に位置している。2021年にトップ10入りしたマレーシア大学は、順位を一つ上げた。

日本はトップ10落ち 

日本は108校がランク入りし、東京大学(11位)と京都大学(15位)がトップ20、東京工業大学(21位)、大阪大学(22位)、東北大学(23位)、名古屋大学(28位)、九州大学(29位)、北海道大学(30位)がトップ30に選ばれた。中国、韓国と比べると明らかに勢いが減退している上に、順位を上げた学校数(36校)より順位を下げた学校数(65校)の方がはるかに多い点が指摘されている。

過去のランキング結果と比較すると、その凋落ぶりが際立つ。2012年に発表された同ランキングでは、300校中73校が日本の大学と最多だった。そのうち7校がトップ20入りするなど、アジア圏で断トツの競争力を誇示していた。

ところが、2016年には形勢が逆転した。2011年のランキングと比べると、東京大学が4位から8位、京都大学が6位から9位、大阪大学が8位から11位など、主要大学が相次いで圏外落ちした。

日本の評価を下げている2つの弱点とは?

なぜ、日本の大学の国際競争力はここまで低下してしまったのか。

各項目の評価を見ると、日本の最大の強みは「教育の質の高さ」であることが分かる。「学術的な評判」では、東京大学と京都大学の2校が100ポイント(以下、pt)を獲得したほか、「教員と学生の比率」には6校、「雇用者からの評判」には3校がトップ10入りした。また、「博士号(PhD)を取得した教員数」では、公立はこだて未来大学が首位に輝いた。

ところが、「国際性」と「論文」となると一気に評価が下がる。以下、総体的な評価を下げている2つの要因について詳しく見てみよう。

改善されない「国際性」の欠如

国際性の乏しさが日本の大学の弱点であることは、以前から多方面で指摘されていた。政府をあげて国際力強化戦略が推し進められているものの、今ひとつ成果に結びついていないようだ。

各大学の国際性の指針となる「外国籍の教員数」「留学生数」「受入留学生数」「派遣学生数」といった評価項目をトップ10校と比べると、その差は歴然としている。トップ10校が一貫して高スコアであるのに対し、日本の大学は総体的にスコアが低い。

「国際リサーチのネットワーク」は2校がトップ10入りしているが、「留学生数」は立命館アジア太平洋大学1校のみ、「受入留学生数」「外国籍の教員」「派遣学生数」は0校という現状だ。

「論文1本当たりの引用数」はトップ40も叶わず

かつては得意だった論文分野においても、年々勢いを失っている。

「論文数」では豊田工業大学が首位に輝いたものの、それ以外の大学はトップ20入りすらしていない。「論文1本当たりの引用数」も苦戦しており、最高順位は42位の岩手県立大学滝沢キャンパス(93.2pt)だった。また引用数のスコアが70pt以上の大学は5校のみで、その他はいずれも50pt以下と驚くほど評価が低い。国際的な影響力の低下が伝わって来る結果となった。

ちなみに、「論文数」では、インドの大学が多数上位にランクインしている点も注目されている。

トップに返り咲くための3つの課題

もちろん、他のアジア圏の大学の競争力が急激に伸びたことも、日本の大学がランクダウンした要因の一つとして数えられる。しかし裏を返せば、日本の大学の成長力が他のアジア圏に取り残されてしまったことにほかならない。

QSのランキング担当者は日本の大学がアジアのトップに返り咲くための3つの課題として、「国際競争力の強化」「競争条件の公平化」「十分な研究予算の確保」を挙げている。大学の経営難や研究費の偏りが問題視されている近年、主要大学だけではなくすべての大学に資金を最適に配分し、多様な才能の育成を支援することが、日本の大学の競走力強化につながるのではないだろうか。

文・アレン琴子(英国在住のフリーライター)

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