建設業を新たに始めようと思った場合、どのくらいの手続き期間が必要なのでしょうか。
営業上の都合上少しでも早く手元に建設業許可証がほしい場合もあると思います。
ここでは、建設業許可を申請してから通知が届くまでの標準的な期間を説明します。
1. 建設業の許可申請にかかる期間
建設業の申請については、特に申請書類に問題がなければ1か月から3か月程度で完了します。
上記は、間違いのない申請書類一式を窓口に提出してからの期間になります。内容に問題があれば修正等のやり取りが必要になり、さらに時間がかかります。
建設業の許可申請は内容や添付書類が非常に多く複雑です。できるだけ早く許認可を取得するためには、事前相談が非常に重要です。
各都道府県の土木事務所へ行き、事前に提出予定の書類を持参し内容に関するアドバイスをもらいながら書類を整えるとよいと思います。
2. 知事免許と大臣免許
上記のように完了するまでの期間に大きな幅が存在するのは、下記の理由によります。
建設業には、一口に「建設業許可」といっても2つの許可の区分が存在します。
まずは、営業所の所在地による分類です。複数の都道府県に営業所を設置して営業を行う場合、本店所在地の地方整備局長等の許可が必要になります。これを大臣許可と言います。
一つの都道府県でのみ営業を行う場合は、都道府県の許可が必要になります。これを知事免許と言います。
また、下請契約の発注金額の規模による分類もあります。一定以上の下請契約を締結する場合には特定建設業の許可が必要になります。それ以外の場合においては、一般建設業の許可で十分です。
上記の分類のうち、申請期間に影響するのは大臣許可なのか都道府県知事許可なのかという区分になります。なぜならば、各県から地方整備局へ移送する期間等が必要だからです。
たとえば、東京都内に本店を持つ事業所が建設業許可を取得しようと思った場合、提出先は東京都都市整備局になります。都道府県知事免許の場合、ここで審査等がなされます。
一方、大臣免許の場合は、整備局では形式的なチェックのみ行い、書類一式は関東地方整備局へ移送されます。つまり2つの行政機関を通して許可の承認が行われるのです。
平成29年6月26日に最終改正された、国土交通省より「国土交通大臣に係る建設業許可の基準及び標準処理期間について」によれば、各県の県庁所在地の土木事務所(各県により呼び方が異なる可能性があります。)から整備局へ移送されるまでの期間は30日程度とされています。さらに、整備局へ到達してから90日程度とされています。
行政手続きは、すべて法律や通知に基づいて行われますからほとんどの手続きについて標準処理期間なるものが定められているのです。
http://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bt_000192.html
知事免許の場合、たとえば東京都都市整備局が公表している建設業許可の手引きが参考になります。ここでは、標準処理期間を30日と定めています。
http://www.toshiseibi.metro.tokyo.jp/kenchiku/kensetsu/
ただし、これはあくまでも「標準処理期間」に関する規定になりますので、実際にはさらに期間を要することもあります。反対に、早く許可が下りることもあります。
経験上、この期間より前に完了することが多いように思います。東京都であれば、2週間程度で完了することもあります。
3. 法人成りする場合
会社設立手続き
現在個人事業主として建設業を行っている方が、法人成りをする場合どのくらいの処理期間がかかるのでしょうか。
国や都道府県からの各種営業許可については、組織が変更しても実態が同様であればそのまま引き継げるものとそうでないものがあります。
今回の建設業許可については、残念ながら後者になります。現在個人で建設業を行っている方が、法人を設立し、代表取締役に就任し新たに法人として許可を取得する場合はもう一度許可をとりなおす必要があります。この場合、上記の期間に加えて法人を設立する期間が必要です。
法人の設立については、法務局に申請して行います。法務局の混雑状況によりますが、申請書類を提出してからおおむね1週間あれば登記は完了します。提出書類に間違いや不備などがあればさらに時間がかかります。
司法書士などの専門家に依頼すれば、役員や発起人の設定など相談に乗ってくれると思います。
会社の規則を定めた「定款」についてもとくに内容にこだわらなければ一般的なフォーマットを提供してくれるでしょう。これらの書類の用意も1週間程度あれば足ります。したがって、全体として2週間もあれば会社の設立は完了します。
ただし、申請書類一式の中に取締役の就任承諾書があります。原則的には、ここに印鑑証明の添付と実印の押印が必要ですので取締役に就任する方が地方に住んでいる場合や、海外にいる場合などにはもう少し時間がかかりそうです。
社会保険への加入手続き
近年においては、建設業に従事する労働者の労働環境の向上のため、社会保険への加入義務の徹底が行われています。
具体的には、社会保険料の納入通知書等の添付が必要になっています。また、労働保険料の納入通知書の添付も必要です。
個人事業主の場合は、社会保険への加入が義務となる最低人数が業種により定められています。
一般的には5人と考えてよいでしょう。この人数を超える常勤の従業員を雇用した場合、社会保険の設置・加入が義務となります。
一方、法人については法人を設立した段階で社会保険への加入が義務となります。代表取締役1人のみの会社であっても社会保険への加入は必要なことが多いです。
建設業許可申請の際に、この社会保険の支払いに関する証明書類の添付が必要となっています。
労働保険については、基本的に個人と法人において加入要件に違いはありません。
従業員を一人でも雇用した場合は常勤・非常勤にかかわらず労災保険に加入することが必要です。
さらに、一週間の所定労働時間が20時間以上となるような場合はさらに雇用保険の加入が必要です。
労働保険については、代表取締役などの経営者については加入する必要はありません。今回の申請においても、社長一人の会社について申請する場合には必要ないでしょう。
これらを社会保険労務士に依頼した場合、手続き自体はそう難易度の高いものではありませんし、法務局の登記申請などとは異なり、社会保険事務所の窓口にてリアルタイムで手続き完了します。
したがって、3~4日もあれば十分でしょう。手続きを行う際には、法人の謄本、従業員の住所・氏名・生年月日・年金番号等が必要です。(提供:ベンチャーサポート行政書士法人)