2022年の東京証券取引所の市場再編!何がどう変わる?
(画像=moonrise/stock.adobe.com)

東証一部と言えば、誰もが知る大企業が名を連ねている市場だ。しかし、2022年の市場再編をきっかけに、東証一部を取り巻く環境は大きく変化すると考えられる。本記事では東証一部上場に関する基礎知識や、市場再編によって変わる主なポイントを解説する。

目次

  1. 東証一部上場とは?
    1. 東証一部上場の企業数
    2. 上場している企業の傾向
  2. 東証一部上場の条件は厳しい?ほかの市場との違い
    1. 東証二部との違い
    2. マザーズとの違い
    3. JASDAQとの違い
    4. 東京証券取引所外の市場との違い
  3. 「東証一部上場」は2022年になくなる?
  4. 東京証券取引所の再編によって変わること
    1. 1.市場区分
    2. 2.上場基準
    3. 3.株主の立場
  5. 上場に関する悩みは専門家への相談を

東証一部上場とは?

東証一部上場とは、東京証券取引所が運営する「東証一部」に株式を上場することである。東京証券取引所内には、ほかにも「東証二部・マザーズ・JASDAQ」の3つの市場があるが、その中でも東証一部は特に厳しい要件が設けられている。

また、国内外問わず多くの投資家から注目されている点も、東証一部の大きな特徴である。そのため、東証一部への上場を果たすと大きな資金調達のほか、知名度アップやブランドの形成にもつながる。

東証一部上場の企業数

2021年10月現在、東証一部には2,184社が上場している。国内の上場企業は約4,000社弱であるため、東証一部だけで上場企業全体の約50%を占めている計算になる。

また、同じ東京証券取引所内の市場と比べても、東証一部の上場企業数は圧倒的に多い。

10分でわかる『東証一部上場』の基礎!2022年の再編によって変わるポイントも解説

東証一部上場企業の数は1990年以降増え続けており、直近10年間(2011~2021年)では500社ほど増加した。

上場している企業の傾向

東証一部は、国内でもトップクラスの企業が上場する市場である。実際にどのような企業が上場しているのか、売上高の上位・下位を5社ずつ紹介しよう(※2021年時点でのデータ)。

10分でわかる『東証一部上場』の基礎!2022年の再編によって変わるポイントも解説

上記を見ると、同じ東証一部でも規模や業績には差があることが分かる。ちなみに、2015年5月時点でのデータを参照すると、東証一部の1社あたりの平均売上高は1,085億円であった。

ただし、売上高下位の企業に関しても、東証一部の新規上場基準もしくは上場廃止基準を上回っているため、各業界のトップクラスの企業であることに違いはない。

東証一部上場の条件は厳しい?ほかの市場との違い

日本国内の市場の中でも、東証一部の上場要件は特に厳しい傾向がある。具体的にどれくらい基準が異なるのか、ここからは東証一部とほかの市場の違いを解説していく。

東証二部との違い

東京証券取引所が運営する東証二部は、東証一部と同じく「本則市場(メインとなる市場)」に含まれる市場である。ただし、上場企業の傾向を見てみると、国内トップクラスではなく中堅レベルの企業を中心に構成されている。

また、東証一部に比べて上場要件がやや緩めに設定されている点も、東証二部の大きな特徴である。

10分でわかる『東証一部上場』の基礎!2022年の再編によって変わるポイントも解説

なお、東証二部は東証一部のステップアップ市場としてよく活用されるが、要件さえ満たせば最初から東証一部に上場することも可能である。

マザーズとの違い

同じく東京証券取引所内にあるマザーズは、東証一部・東証二部上場のステップ市場として機能している市場である。マザーズは主に新興企業・成長企業向けの市場であるため、時価総額や純資産額、利益額などに関する一部の要件が設けられていない。

また、マザーズには「10年ルール」と呼ばれる規則があり、新規上場から10年が経過すると東証二部の上場廃止基準が適用される。

JASDAQとの違い

次に紹介するJASDAQ(ジャスダック)も、マザーズと同じく新興企業・成長企業を対象とした市場だ。JASDAQには以下の2つの市場があり、それぞれが異なる役割を担っている。

・JASDAQ(スタンダード)…一定の実績や事業規模をもつ企業を対象とした市場。
・JASDAQ(グロース)…成長可能性のある企業を対象とした市場。

いずれの市場も東証一部より上場要件が緩く、特にJASDAQ(グロース)に関しては赤字経営でも上場することが認められている。

東京証券取引所外の市場との違い

東証一部をはじめとする東京証券取引所内の市場は、日本全国から企業を受け入れている。一方で、名古屋・札幌・福岡の3つの証券取引所は、以下のように特定のエリアで重要な役割を担っている。

10分でわかる『東証一部上場』の基礎!2022年の再編によって変わるポイントも解説

なお、東証一部と名証一部の要件は全体的に似ているものの、知名度や注目度、株式の流動性などに関しては東証一部のほうが圧倒的に高い。

「東証一部上場」は2022年になくなる?

東京証券取引所は2022年に市場の再編を予定しており、全市場を以下の3つに統合することがすでに決まっている。

10分でわかる『東証一部上場』の基礎!2022年の再編によって変わるポイントも解説

つまり、投資家や経営者にとって馴染み深い「東証一部・東証二部・マザーズ・JASDAQ」などの名称は、2022年4月以降からは使用されなくなる。

東京証券取引所がこのような再編を行う理由は、世界的な存在感や注目度を高めるためだ。日本の証券市場の規模はそれほど小さくないが、アメリカや中国、香港などの市場と比べると、直近10年の取引量が伸び悩んでいる。

そこで、東京証券取引所は海外の投資家を呼び込むために、大規模な市場の再編に踏み切った。上記の「プライム市場」のコンセプトを見ると、海外の投資家や投資資金を強く意識していることが分かる。

東京証券取引所の再編によって変わること

2022年の市場再編が実施されると、実は各市場の名称以外にもさまざまな点が変更される。そこで以下では、経営者が特に押さえておきたい変更点を解説していく。

1.市場区分

2021年現在、東京証券取引所内には5つの上場市場があるが、市場再編が実施されると次のように区分が変更される。

10分でわかる『東証一部上場』の基礎!2022年の再編によって変わるポイントも解説

つまり、トップクラスの企業はプライム市場、中堅企業はスタンダード市場、新興企業・成長企業はグロース市場がそれぞれ受け入れることになる。

ちなみに上記の区分はあくまで目安であり、現在の東証一部上場企業が引き続きプライム市場に上場できるとは限らない。企業の業績や経営環境によっては、東証一部からスタンダード市場への変更を余儀なくされる可能性もある。

2.上場基準

市場再編に伴って上場基準が変更される点も、経営者が押さえておきたいポイントだ。例えば、現行の東証一部と新設されるプライム市場を比較すると、形式要件には次のような違いが見られる。

10分でわかる『東証一部上場』の基礎!2022年の再編によって変わるポイントも解説

内容が変わらなかったり緩和されたりする要件も一部あるが、形式要件全体としてはプライム市場のほうが厳しい。また、コーポレートガバナンスや内部管理体制などの実質要件に関しても、プライム市場のほうが厳しくなると予想されている。

3.株主の立場

東証一部をはじめとした現行の市場と比べると、プライム市場は「流通株式比率」が重視される傾向にある。そのため、市場再編の実施後には安定株主の割合が下がり、いわゆる「物言わぬ株主」の数も減少する可能性が高い。

物言わぬ株主の数が減ると、その一方で積極的に意見をする株主が増えることになる。つまり、より多くの株主の意見をとり入れる必要があるので、再編後の上場企業には「投資家との緊密なコミュニケーション」が求められるだろう。

特に近年はSDGsやESG投資の影響で、一般投資家の考え方や方針が変わりつつある。この変化にうまく対応しないと、今後は高い評価を受けることが難しくなるので、上場を目指す企業は株主・投資家との関わり方を見直しておきたい。

上場に関する悩みは専門家への相談を

2022年の再編をきっかけに、東京証券取引所の市場は大きく変化すると考えられる。特にプライム市場(現行:東証一部)への上場を検討している場合は、既存株主との関わり方まで見直しておくことが必要だ。

企業の力だけでこのような変化に対応することは難しいので、上場にあたって少しでも悩みや不安を感じたら、すぐさま専門家への相談を検討しよう。

著:片山 雄平
1988年生まれのフリーライター兼編集者。2012年からフリーライターとして活動し、2015年には編集者として株式会社YOSCAに参画。金融やビジネス、資産運用系のジャンルを中心に、5,000本以上の執筆・編集経験を持つ。他にも中小企業への取材や他ライターのディレクション等、様々な形でコンテンツ制作に携わっている。
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