韓国“尿素水不足”で公共交通機関ストップ!?中国が輸出規制で大混乱
(画像=annacovic/stock.adobe.com)

資源輸入大国・韓国で、尿素水不足による混乱が起きている。その影響は物流から物価まで広範囲に及び、同国の主要産業の一つである半導体製造への影響も懸念されている。国内の混乱収束に向けて政府は対応に乗り出しているが、2021年11月28日現在、供給不足が完全に解消される兆しは見えない。

尿素不足で国内大混乱

窒素肥料や尿素樹脂などの工業原料として、世界中で大量に消費されている尿素。ディーゼル車の排ガスの浄化にも欠かせない物質である。エコカーへの移行が加速しているとはいえ、韓国ではまだまだディーゼル車の比率が高い。韓国国土交通部2021年9月のデータによると、国内車両2,748万台のうち990万台がディーゼル車だった。

供給不足が続く中、11月現在、10リットル10万ウォン(約9,488円)と以前の10倍の価格に高騰。在庫を切らすガソリンスタンドが続出し、臨時休業の危機に瀕している運送業者からは、悲痛な声が上がっている。

一時的な環境規制緩和などの緊急措置が取られない限り、尿素水がなければ車を運行させることができない。このまま供給不足が解消されない場合、「公共交通機関やゴミ収集車が止まる」「犯罪や火事が起きてもパトカーや消防車を出動できない」といった最悪のシナリオも想定される。

流通の停滞は、物価高騰という形で消費者の生活にも影響を及ぼしている。今やキムチの材料である白菜の価格は2倍、中国製の尿素水はインターネットで10倍に跳ね上がっているという。

半導体産業も例外ではない。半導体の純水製造プロセスにおいても、尿素は重要な役割を果たしている。「11月末には国内の尿素の在庫が空になる」と予想されている今、事態は混迷の様相を呈している。

韓国が尿素不足に陥った理由

今のところ、欧米や日本ではこのような尿素不足パニックは起こっていない。なぜ、韓国だけが混乱に陥っているのか。

直接の原因は、9月に中国が尿素の輸出手続きを厳格化したことだ。尿素を含むいくつかの肥料および関連材料の検査が義務付けられたため、韓国へ輸出される予定だった尿素も税関で差し押さえられた。国内で消費される尿素の100%が輸入で、そのうち97%を中国に依存していた韓国にとっては大打撃である。

中国側が尿素輸出規制に踏み切ったのは、国内における石炭不足が深刻化しているためだ。石炭不足により尿素の主原料であるアンモニアの生産が減少し、尿素の輸出制限を余儀なくされた。さらに石炭価格の高騰が電力不足を引き起こし、広範囲な地域における計画停電などの対応に追われるなど、他国のために尿素を生産している余裕はない現状だ。

しかし、根本的な原因は「韓国の効率性を重視する輸入依存体制」にあるとの見方も強い。輸出国としては小規模な韓国だが、鉱物・金属資源から石油まで輸入にはどっぷりと依存している。

国際統計サイト、グローバルノートのデータによると、2020年の鉄鉱石・銅鉱石を含む資源輸入額は217カ国中3位、石炭の輸入額は190カ国中4位、2006年のアンモニアの生産量は72カ国中58位だった。

また、国際エネルギー機関のよる世界のエネルギー自給率に関する調査では、2019年の国内の自給率は45カ国中41位と驚く程低い現状が明らかになった。自給率が需要に占める割合は17.3%で、首位のノルウェーの約40分の1、12位の中国の約4分の1にも及ばない。

文政権の対応に批判

韓国政府は作業部会を設け、国内における尿素の買い占めを取締るとともに、海外からの尿素確保に奔走している。しかし、11月10日には空軍の輸送機をオーストラリアに緊急派遣したものの、持ち帰ったのはわずかタンクローリー1台分の尿素水。「3000万ウォン(約285万円)相当の尿素水のために、その3倍以上の燃料代を費やした」との批判を浴びた。

同日、韓国外務省は中国からの輸入を予定していた尿素約2万トンの手続きについて、「近日中に進めるとの確認が中国側からとれた」と発表した。しかし、これは結局のところ再び輸入に依存することに外ならず、「根本的な解決策を練る必要がある」との意見もある。

韓国のメディアは「日本はアンモニアの77%を国内で製造して、国内の需要をカバーしている」「効率性を優先して必要以上に輸入に依存してきた体制のツケが回ってきた」と指摘。また、2019年7月に日本が韓国への半導体製造の原材料の輸出規制を強化した際、「サプライチェーンのリスクを体感したにも関わらず、再び危機が発生した」など、政府の対応を批判した。

一部の国民からは「日本と対立していなければ助けてもらえるのに」といった、日韓問題の悪化を悔やむ声も多いという。

韓国の混乱は日本にとっての教訓?

日本が韓国の混乱を教訓とし、今後の供給安定に活かせる点も多数ある。

たとえば、日本のエネルギー自給率は12%(42位)と2010年のほぼ半分に減っており、韓国より低い水準という現状だ。また、電気自動車(EV)に使われているリチウムイオン電池に必要な鉱物資源(リチウム・コバルト・ニッケルなど)は、ほぼ100%海外から確保している。韓国の尿素水不足のように、何らかの事情でこれらの物質の輸入が滞った場合、その影響は産業から経済、消費者の生活まで広範囲に及ぶことが予想される。

資源獲得競争が激化している近年、資源確保の安定化は日本にとっても他人事ではない。

抜本的な産業改革の実現がカギ

韓国、日本に限らず、世界中がコロナ禍のサプライチェーンの寸断が引き起こすパニックを身をもって体験した。半導体など一部の商品に関しては、現在も供給不足が続いている状況だ。これまで輸入に依存してきた国にとって、「国内生産の拡大」あるいは「生産拠点の国内回帰」「サプライチェーンの多元化支援」などへの投資を強化し、抜本的な改革を促すことが、国家戦略の一つとなるだろう。

文・アレン琴子(英国在住のフリーライター)

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