韓国また外交でヘマ、イランへ「マスク2,000万枚寄付」で大炎上
(画像=Oleksii/stock.adobe.com)

イランで韓国に対する非難が広がっている。米国による対イラン制裁に同調し、2018年の核合意解除以降イランの資産を国内で凍結している韓国が、コロナ支援としてイランにマスク2,000万枚を提供したのだ。この一貫性のない行動にイランは苛立ちを隠せないが、韓国内外からも「韓国の外交センスのなさ」に驚きの声が上がっている。

韓国、イランの凍結資金70億ドル解除に応じず

事の発端は、2015年にイランと6ヵ国(米・英・仏・独・露・中)間で結ばれた核合意の解除と、それにともなう制裁措置だ。

かつて韓国は、イラン産原油の最大の買い手の1つであり、両国関係に目立った緊張も見当たらなかった。しかし、2018年に当時のドナルド・トランプ大統領がイランとの核合意から撤退し、同国への制裁措置を再開したことに韓国が同調した。米国の制裁と足並みをそろえて、イランから輸入した原油の代金70億ドル(約7,942億 5,809万円)を凍結するという制裁に出た。

イランのメディアによると、韓国政府はバイデン政権発足後に資金の一部(10億ドル/約1,134億7,385万円)を解除する意思を表明したものの、2021年11月28日現在も交渉が進展する気配はない。新型コロナの甚大な打撃が国内に広がり、復興に向けて経済から医療まで広範囲な領域で支援が求められているイランにとって、喉から手が出るほど欲しいのが韓国内の銀行に凍結されている資金だ。

イランの韓国家電輸入禁止でサムスン、LGに打撃

資金凍結から3年、イランはこれまであの手この手で交渉を試みた。

2021年1月、イランは「石油汚染の疑い」という名目で韓国の石油タンカーと船員を拿捕した。4月にはタンカーを解放し、イランを訪問した丁世均首相と直接対談を行った。硬軟おり交ぜて交渉を進展させようという思惑があったようだが、丁首相は「解決に向けてイランを含む関連国と可能な協力を続けていく」と述べただけで、頑として首を縦に振らない。

痺れを切らしたイランは9月、韓国大手電子メーカーであるサムスンとLGの家電製品の輸入禁止という強硬手段に出た。韓国に圧力をかけ資金凍結解除を促すと同時に、対イラン制裁の大元である米国に揺さぶりをかける意図があるものと推測される。

しかし、イランの意図はどうであれ、過去10年以上にわたり中近東の電子機器市場で確固たる地位を確立してきた両電子メーカーにとっては、8,000万人の消費者を有する中東最大の市場から排除されることに外ならない。

今回の完全輸入禁止以前から、その影響はすでに顕著になっていた。どちらのメーカーも、核合意解消前は商品の部品などをイラン国内に持ち込み、現地で組み立て作業を行っていたが、米国がイランに課した輸入、輸出、金融取引の禁止措置により、主要な部品を輸出できなくなった。その結果、サムスンは現地での生産停止に追い込まれた。

さらに、韓国にとって脅威となったのは、ライバルメーカーの台頭である。

韓国メーカーが勢力を制御されたことで、ファーウェイなどの中国企業がここぞとばかりにイラン市場に流入した。その一方で、サムスンと提携していたイランの国内メーカー「SAM」が大部分の部品を中国から調達し、独自の家電製品を販売し始めた。

それに加えて、今回の完全輸入禁止措置だ。韓国政府が慌てるのも無理はない。

火に油のマスク寄付騒動 「韓国には外交的判断力が必要」

なんとかイランの怒りを鎮めたい韓国だが、ここで大きな過ちを犯した。こともあろうか、マスクが不足しているどころか、近隣国に輸出しているイランへ、マスクを2,000枚寄付したのだ。Twitterは「イランに対する侮辱だ」「馬鹿にしている」など、イラン国民の怒りの声で炎上した。

イラン外務省のスポークスマン、Saeed Khatibzadeh氏もTwitter上で「(マスク寄付は)冗談としか思えない」「他国がそれ(資金)を盗むことを容認する国はない」と厳しく批判した。

一方、イランの議会で演説したアリレザ・サリミ国会議員は、「韓国の銀行に保管されている(イランの)資金が生みだす利子だけでも、我が国が大量のマスクやコロナワクチンを購入できるという事実を韓国はしらないのか」「マスクを寄付したぐらいでは、失われた信用を取り戻すことはできない」と述べた。地元メディアは「韓国には外交的判断力が必要だ」と嘲笑した。

国内外から失笑を買う文政権の外交力

韓国にとってはイランのご機嫌とりのつもりで講じた措置が火に油を注ぐ結果となったわけだが、実際のところ、文政権のピントの外れた外交力は国内外でも指摘されている。

9月から国内で深刻化している尿素不足問題をひとつとっても、外交判断力の欠如が際立つ。中国内での石炭不足が直接的な原因ではあるものの、ディーゼル車の排気ガス除去に欠かせない重要な物質である尿素を国内でほとんど生産せず、さらにその97%を中国一国に依存していたという事実は驚きに値する。コロナワクチンの確保も他の主要国より大幅に遅れ、米国に頭を下げて融通してもらった過去がある。

外交の成果が出るには数年の月日を要するものだが、「ここまで失敗ばかりというのも珍しい」と呆れ顔なのは、龍谷大の李相哲教授だ。文政権の関心が南北問題一点に集中していることを挙げ、「その場しのぎの対策ばかりで国家として機能しているとは言い難い。失敗の尻ぬぐいには10年かかるのではないか」とコメントした。

「外交努力」アピール、国民には届かず

世論調査専門機関韓国ギャロップが10月末に実施した調査によると、任期満了を2022年に控えた文在寅首相の支持率は37%へ低下している。「外交/国際関係」を肯定しているのはわずか18%である。文首相の「外交努力」アピールも、どうやら国民には届いていないようだ。

文・アレン琴子(英国在住のフリーライター)

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