トヨタの「脱炭素」自動車メーカー内で最低評価 過去最高益も世界での評価は低い?
(画像=TobiasArhelger/stock.adobe.com)

コロナ禍であっても、トヨタは中間決算で過去最高益を出した。改めて「世界のトヨタ」の強さが鮮明になった。一方、このほど「脱炭素」に関する評価において主要自動車メーカーの中で最低評価を受けた。最高益を出しながらも、トヨタには事業の方向転換が求められるのか。

環境保護団体グリーンピースによるランキングを紹介

脱炭素の取り組みに対する評価を行ったのは、環境保護団体グリーンピースだ。この評価の結果は、イギリスで開催されたCOP26(第26回気候変動枠組条約締約国会議)に合わせて発表された。まずランキングの結果を紹介しよう。

ランキングでは「化石燃料車の廃止」「サプライチェーンの脱炭素化」「資源の持続的な利用」という3軸で評価を行った上で、気候対策を妨げるロビー活動の実施や二酸化炭素(CO2)排出規制の違反などを加味し、主要な自動車メーカーの総合スコアを算出している。

ランキング自体は「気候対策ランキング」という名称だが、3つの評価軸などから考えると、脱炭素の取り組みに関する評価だと捉えていいだろう。

トヨタの「脱炭素」自動車メーカー内で最低評価 過去最高益も世界での評価は低い?

このランキングにおいて、トヨタは「F−−」(Fマイナスマイナス)という最低評価を受けている。

なぜトヨタに低評価がくだったのか

なぜトヨタの評価が低いのか、少し深掘りしよう。

まずトヨタは、「化石燃料車の廃止」の評価軸で1.88という低い評価を受けている。グリーンピースによれば、内燃機関の廃止時期が未定であり、2022年の世界販売における「ゼロエミッション車」の比率が0.12%にとどまったことが理由だという。

「サプライチェーンの脱炭素化」に関しては、「2050年までにカーボンニュートラル宣言したものの、道筋は不透明」と指摘している。カーボンニュートラルとは、温暖化ガスの排出量を実質ゼロにすることを指す。

「資源の持続的な利用」における評価はバツだ。トヨタはビジネス規模が大きいが、その規模に見合った十分な対策を行っていないという。このほか、欧州や米国で排ガス規制やEV(電気自動車)義務化に反対するロビー活動を行った、と指摘されている。

トヨタ側が掲げている環境対策の内容

グリーンピースの評価を書くだけでは、見方が一方的になる。トヨタは環境対策や脱炭素についてどのように考えているのだろうか。トヨタの豊田章男社長は、カーボンニュートラルについて「選択肢を1つに絞ることではなく、選択肢を広げておくこと」が重要だと述べている。

トヨタは実際に車両の電動化だけではなく、水素をエネルギーとする燃料電池車の開発にも取り組んでおり、さまざまな切り口で環境対策を進めようとしている。

トヨタが2020年4月に発表した「第7次トヨタ環境取組プラン」にも注目したい。この中でトヨタは2025年に向けた目標や取り組みについて、「CO2ゼロチャレンジ」という言葉を使い、以下のように記載している。一例を紹介しよう。

<新車CO2ゼロチャレンジ>
・グローバル新車平均CO2排出量を、2010年比30%以上削減
・全車種を電動専用もしくは電動グレード設定とする

<工場CO2ゼロチャレンジ>
・グローバル工場からのCO2排出量2013年比30%削減
・再生可能エネルギー電力導入率25%

<ライフサイクルCO2ゼロチャレンジ>
・〈日本〉輸送効率の改善によりCO2排出量2018年比7%削減
・〈海外〉外航船でCO2削減に取り組む

難しい舵取りを迫られるトヨタ自動車

環境への取り組みを強化することは、現在ではESG(環境・社会・企業統治)投資の観点からも非常に重要であり、トヨタも環境に対する取り組みを決して軽視しているわけではない。しかし今回のように、環境団体からは低い評価を受ける結果となっている。

また、自動車メーカーには、そう簡単には内燃機関の廃止に踏み切れない背景もある。このような事業転換は、さまざまな取引先や下請会社に大きな影響を与えるからだ。トヨタにもこのような背景はもちろんあてはまる。

トヨタは下請企業との共存共栄を掲げていることもあり、環境対策の舵取りはなかなか難しい。今後、トヨタが環境対策や脱炭素に向け、目標通りのスピード感で進めるのか、引き続き注目したい。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)

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