M&Aにかかる税金・手数料とは?売却益の手取り額を最大化する方法も解説
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M&Aにかかる税金や手数料が気になる経営者は多いだろう。本記事では、M&Aにかかる税金の種類や計算方法、M&Aにかかる手数料の種類や相場を詳しく解説する。また、M&A後に手元に残る手取り額は、税金・手数料によって変わってくる。M&Aを成功させ、手取りを最大化するための考え方も紹介する。

目次

  1. M&Aにかかる費用2つ
    1. M&Aの費用1:税金
    2. M&Aの費用2:手数料
  2. M&Aの株式譲渡でかかる税金と計算方法
    1. 中小企業のM&Aでは株式譲渡が多い
    2. 株式譲渡でかかる所得税・住民税
    3. 株主に法人がある場合にかかる法人税
  3. M&Aの仲介手数料の相場
    1. M&A仲介手数料の相場
    2. M&A仲介手数料は必要経費と割り切る
  4. M&Aで売り手が売却益の手取り額を最大化する方法2つ
    1. 1.売却価格を上げる
    2. 2.退職所得控除を活用する
  5. M&Aの売却益手取り額は交渉と節税で最大化しよう

M&Aにかかる費用2つ

M&Aを行う際に考慮しなければならない費用として、主に税金と手数料がある。それぞれの項目を確認していこう。

M&Aの費用1:税金

M&Aでの取引において、「売り手」にかかる税金は次の通りだ。

「株式譲渡」の場合:所得税、住民税、法人税(一定の場合)
「事業譲渡」の場合:法人税等

M&Aで株式譲渡・事業譲渡をした場合、「買い手」にかかる税金は次の通りだ。

・消費税
・不動産取得税(土地や建物などの不動産を取得した場合)
・登録免許税(登記手続きの際に発生)

M&Aの費用2:手数料

M&Aで売り手に発生する手数料には、次のようなものがある。

・M&A仲介手数料
・弁護士、税理士、社労士など専門家に支払う費用

M&Aで買い手に発生する手数料には、次のようなものがある。

・M&A仲介手数料
・弁護士、税理士、社労士、司法書士など専門家に支払う費用
・デューデリジェンス(買収監査)の費用
・登記費用

M&Aの株式譲渡でかかる税金と計算方法

続いて、M&Aの税金の種類や計算方法を詳しく紹介する。なお、ここからは売り手の税金・手数料を中心に解説していく。

中小企業のM&Aでは株式譲渡が多い

M&Aの手法はたくさんあるが、中小企業のM&Aで圧倒的に多いのは「株式譲渡」だ。株式譲渡とは、株主である売り手が、買い手に株式を売却するM&A手法だ。

株式を譲渡するということは、建物や設備、機械などの資産はもちろん、従業員の雇用なども全て買い手へと引き継がれる。

近年は、後継者不足から親族内や従業員への承継が難しく、第三者承継としてM&Aを選択する売り手が多い。M&Aで株式を譲渡したら、売り手の経営者は悠々自適な勇退生活を送れる。

株式譲渡でかかる所得税・住民税

売り手が株主個人であれば、株式譲渡によって所得税がかかる。所得には事業所得、給与所得などいくつかの種類があるが、株式の売却益は「譲渡所得」に該当する。

事業所得や給与所得の場合、すべての所得を合算し、所得に応じて5%~45%の税率が適用される。なお、2037年12月末までは、これに加えて所得税額の2.1%の復興特別所得税と住民税約10%がかかる。

譲渡所得は、他の所得とは分けて計算する「分離課税」の対象となる。所得税と住民税をあわせた税率は、一律20%(復興特別所得税を含めると20.315%)だ。なお、税金を計算する際には、売却代金から取得費や委託手数料等の必要経費を差し引くことが認められている。

株式譲渡でかかる税金の計算式は次の通りだ。

(売却代金-取得費-委託手数料等)×所得税・住民税・復興特別所得税率20.315%=納税額

取得費とは、株式を取得するために発生した費用のことだ。自らが創業者で会社設立時に出資している場合、出資した金額が取得費となる。なお、相続によって株式を引き継いだ場合、被相続人の取得費をそのまま引き継ぐ。

なお、会社設立時の資料等がなく取得費が不明な場合は、売却価格の5%を取得費として計上できる。しかし、取得費が明確であった方が支払う税金が少なく済むこともあるため、取得費にまつわる資料は探しておくようにしたい。

また、株式譲渡を実行したら、翌年の3月15日までに確定申告を行い、所得税を納税する必要がある。住民税は市町村が計算するため、6月頃に送付された納付書でそのまま納税する。

株主に法人がある場合にかかる法人税

中小企業の場合、経営者が株主を兼ねているのが一般的だ。また、家族が分散して株式を保有していることもある。しかし、中には関連法人を株主としているケースがある。その場合、株式会社の利益が関連法人の利益に上乗せされるため、法人税がかかる。

関連法人の売却益は、特に他の利益と分離して計算する必要はない。通常の決算に沿って、売却益を利益に上乗せして法人税を計算するだけだ。

本記事執筆の2021年9月現在は、法人税率は23.2%だ。なお、資本金1億円以下の法人等で、年800万円以下の部分については、15%もしくは19%の税率が適用される。

M&Aの仲介手数料の相場

続いて、M&Aの仲介手数料の相場や計算方法を紹介する。

M&A仲介手数料の相場

M&Aは手続きが複雑で、デューデリジェンスなどの高度な専門知識が必要とされるため、M&A仲介会社に依頼するのが一般的だ。多くのM&A仲介会社は、「レーマン方式」と呼ばれる計算方法を採用している。

レーマン方式では、売却代金に一定の手数料率を乗じて計算する。つまり、売却代金が高くなるほど、M&A仲介会社に支払う手数料も増える。これは、売却代金が高くなるほど、M&Aの複雑性や専門性が増すことやリスクが大きくなることに起因する。

レーマン方式の売却代金ごとの手数料率は次の通りだ。

M&Aにかかる税金・手数料とは?売却益の手取り額を最大化する方法も解説

M&Aでは、仲介手数料を複数回に分けて支払うのが一般的だ。支払うタイミングは、「着手金+成功報酬」「着手金+中間金+成功報酬」「成功報酬のみ」など、M&A仲介会社によって異なる。

基本的に、着手金はM&A仲介契約を結んだ時点で支払い、成功報酬はM&Aが成功した時点で支払う。相談に関しては、無料で請け負うM&A仲介会社がほとんどだ。

なお、経営者からすると「成功報酬のみ」の方がメリットを感じるかもしれないが、「着手金0円」には意外なデメリットもある。「着手金0円」だと、M&A仲介会社は無報酬で候補先を探さなければならないため、多少強引にでもM&Aを成立させようとすることもある。

仲介手数料だけでなく、M&A仲介会社のスタンスや担当者の人柄も見極め、総合的に判断することが大切だ。

M&A仲介手数料は必要経費と割り切る

M&Aの実施にあたり、M&A仲介会社に手数料を支払うくらいなら、自分で候補先を探してM&Aを進めたいと考える経営者もいる。

しかし、M&Aは専門性の高い分野であり、弁護士や税理士であってもM&Aの実務経験があるとは限らない。M&Aの実務経験が豊富な、財務や法務の専門家を自ら探すのは至難の業だ。

M&A仲介会社なら、実務経験が豊富な専門家と提携しているため、専門家の手配も一任できる。

また、M&Aでは利害関係が発生するため、売り手・買い手だけで交渉を進めていると、トラブルが生じてしまうケースも少なくない。トラブルによってM&Aが中断すれば、また一から候補先探しをしなければならない。

M&A仲介会社に依頼することで、トラブル発生のリスクを回避し、M&Aが成功する確率を上げられるだろう。その意味では、M&A仲介会社に支払う手数料を、M&Aを成功させる必要経費と割り切る視点も大切だ。

M&Aで売り手が売却益の手取り額を最大化する方法2つ

M&Aで株式譲渡を考えているなら、M&A後に手元に残る手取り額を最大化したいと考えるのは自然だ。ここでは、M&Aで売却益の手取り額を最大化させるためのポイントを2つ紹介する。

1.売却価格を上げる

自社を高く売却できれば、自然とM&A後に手元に残るお金も増える。売却価格を決める計算方法はいくつかあるが、結局のところ、売り手と買い手双方が納得する価格が着地点となる。そのため、高く売却するには価格交渉が重要だ。

たとえば、M&Aによって買い手にスケールメリットやシナジー効果が発生し、大きな利益が見込めることをうまくアピールできれば、買い手は多少高くてもM&Aに応じたいと考えるかもしれない。

買い手にアピールできるメリットとしては、以下のようなものがある。

・特定の技術力や特許
・資格を保持する従業員の存在
・顧客リスト
・長年培ってきたノウハウ

ただし、価格交渉で高く売ろうという魂胆が買い手に伝わると、買い手がM&Aに慎重な姿勢を示し始めることもある。価格交渉についても、売り手・買い手のみで進めていくとトラブルが発生しがちだ。そのため、価格交渉においてもM&A仲介会社の存在がカギとなる。

M&A仲介会社は、手続きだけでなく価格交渉でもプロだ。買い手に対して、売り手の事業の売却価格を上げるために適切な形でアピールしてくれるのだ。

2.退職所得控除を活用する

M&Aによる売却益の手取り額を増やす方法として知っておきたい節税スキームに、「退職所得控除の活用」がある。

日本では、1月1日から12月31日までの個人所得を合算して税金を計算する。所得税は累進課税なので、所得が高くなるほど適用される所得税率も5%から45%と高くなる。

しかし、退職金に多額の所得税がかかると、その後の生活に支障をきたしかねない。このような理由で、退職金は税金の負担が軽減される仕組みとなっている。

つまり、退職金が0円ですべてが譲渡所得というケースと、一定の退職金を支払って一部が譲渡所得というケースでは、結果的に後者の税金の方が安くなる。

退職金にかかる税金は、次の計算式で算出する。

(退職金-退職所得控除額)×1/2×所得税率=納税額

退職所得控除額の計算式は次の通りだ。

M&Aにかかる税金・手数料とは?売却益の手取り額を最大化する方法も解説

退職金の受取り額によって税金が変わり、手取り額も変わることになる。しかし、一概に退職金を増やせばいいという話ではない。また、あまりに高額だと、退職金として不当だと判断される危険性もある。そのため、専門家と相談しながら適切な退職金を設定することが大切だ。

M&Aの売却益手取り額は交渉と節税で最大化しよう

M&Aにはさまざまな税金や手数料がかかり、それによって手取り額も変わる。M&Aを進めるにあたり、税金や手数料への理解を深めることは不可欠だ。

また、売り手の工夫次第で売却益の手取り額を増やすことも可能だ。M&A仲介会社も活用しながら、価格交渉や節税によって、適正な手取り額を確保するようにしたい。

文・THE OWNER編集部

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